(6)ネットライバーとリスナー 義理の父娘(おやこ)の純愛物語
ネットライバーとリスナー 義理の父娘の純愛物語
ネットライバーの賢治と視聴専門リスナーの美咲が、義理の父娘として交流する三年弱の純愛物語である。
早くに父親を亡くし強度のフアザーコンプレックスの美咲が、義父の賢治に対する愛の葛藤を乗り越えて、賢治の協力を得て結婚相手と結ばれるまでの物語である。
○重い吐露合戦はやめて軽い話をすることにした。
「美鈴。夜だし、お酒も少し飲んだので、重い話はしんどいから、吐露合戦はまたにしよう。もう少し軽い話をしようか」
「お父さん。そうしましょう(笑)」
「軽い話は何があるかな?」
「お父さんの子供の頃や若い頃の話を聞かせてよ」
「そうしようか?その後は美鈴だよ。ただ、嫌な話しはしなくても良いからね」
「は~い」
○私の生まれ育ちと親の話をした。
「私は、生まれも育ちも大阪市内なんだ。五人兄弟の四番目なんだよ。下に、十一歳離れた妹が居てるの」
「十一歳も離れてるのね」
「そうなんだ。私が小学校六年の時に生まれたの。それまでは男四人兄弟の末っ子で甘えてたのにね(笑)今は妹が私の日本での引受人だけどね」
「そうなんですね」
「今はネットショッピングの受け取りや、韓国への発送もしてもらってるんだよ」
「良いですね。協力して貰ってるんですね」
「実家は大阪市内の中心部で古い大きな日本家屋なんだ。今は長男家族が住んでるね。父親は早くに七十三歳で亡くなったんだが、母親は十年程前に百二歳で亡くなったんだよ」
「長生きだったんですね」
「そうだね。亡くなる二か月前まで、自分の事は自分でしていたそうだ。私は、亡くなる二週間前から五日間、病院に妹と見舞いに通ったが、反応は余りなかったね。私がソウルに戻って一週間後に亡くなったんだ。葬儀は家内と娘に行ってもらった。私は一週間前にお別れをしたからね。八月上旬の猛暑の日だったね」
「お父さんも長生きするよね」
「それは分からんね。父親は七十三歳で亡くなってるからね。私は今それに近い歳だからね(笑)美鈴。二十一時を過ぎたから、今日のライブはこれ位にして、化粧品や着替えを取りに家に行かなけりゃならないんじゃないのかな?最寄りの駅まで一緒に行くよ」
「残念でした!全部、この小さいバッグに準備してあります(笑)」
「悪い娘だな~。初めから企んでたんだね(笑)」
「ダメだと言われたらどうしようか?と、ドキドキだったのよ(笑)」
「だったら、もう少し話をして、二十二時頃に終わろうか。今日は緊張もあり疲れているだろうからね(笑)」
「は~い」
○話を美鈴に振った。
「美鈴は人付き合いがあまり得意で無いようだが、ライブのリスナーの美咲さんはネットでの文字メッセージの交換だから話し易いのかな?」
「それはあるよね。対面では話しにくいことも、ネットのメッセージだと話し易いかな。(笑)」
「しかし、美鈴は、今はお父さんに言いたいこと言ってるんだけどね!(笑)」
「そうね。お父さんとは気楽に話せるんだよね。何でかな~(笑) 」
「しかし、前にも言ったが、ライブは錯覚の世界でもあるので、人間関係には注意が必要だよね。美咲さんはライブのリスナーが長いから、十分知ってるよね。色々トラブルも聞くし、私も巻き込まれたこともあるよね」
「うん。注意をしないと、詐欺に引っ掛かることもあるよね」
「ごめん。美咲さんの、詐欺の嫌なことを思い出させてしまったね」
「お父さん。良いのよ。嫌なことを乗り越えないとね(笑)」
「美鈴が強くなったね(笑)」
「お父さんと会って、色々話しをしたら。考えが変わって来たのよ(笑)」
「そうか。最後は自分で乗り越えないとね」
「はい。そう思うよ(笑)」
○美鈴が私の滞在予定を聞いてきた。
「そろそろ、二十二時だから今日はこれくらいで休もうか?」
「うん。そうだね。お父さん。一つだけ聞きたたいの。大阪はいつまで居てるの?」
「実は、水曜日に家族と姪が来るの。その後、四日間付き合い、土曜日に一緒に帰るの。だから、火曜日までは私一人で行動するんだよ。どうしたの?」
「そうなんだ。だとすると私は平日は会社に行くので、火曜日まで、夜に会えないかな?」
「月火も夜に会おうと言う事だね。関係者との約束は昼間だから、時間はあるけど、私たちは、ネット世界での交流が原則だよね。今回は特別にネットの世界から、現実のリアルの世界に来てるんだが、現実の世界でのリアルの交流が長くなると、リアルで無いネットの世界に気持ちが戻れなくなるんじゃないのか?と、心配しているのよ。今まで、私は経験したことが無いので怖いんだよ。意味が分かるかな?」
「分かるよ!十分、分かるよ!そんなこと言ってる人が多いよね。しかし、私はネットの世界に戻れなくても、お父さんとリアルに長く一緒に居たいのよ!」
「私はライバーだから、戻らないと!リスナーが待ってるからね。戻れるかな?美咲さんと長く会ってると、心の壁を乗り越えられるかな?心の問題だから心配一杯だね。お父さんは美鈴に対しては、心はそんなに強く無いんだよ!いつも、偉そうなことを言ってるけどね(笑)」
「お父さんのその笑顔が好きだよ!」
「虐めるな!(笑)話は分かったから、今日は休もう。明日に話をしよう」
「嫌よ!今、返事を貰わないとこの部屋から出て行かない!」
「脅迫するな!(笑)」
「ねぇ~お父さん良いでしょう~。次回は無理を言わないから。良いでしょ~お父さん!」
「分かったよ。そうしよう。明日も次の日もホテルじゃなく、家に帰るんだよ。遅くなれば送って行くからね。しかし、ネットの世界に戻れなくても知らないぞ!」
「やった~お父さんの心が変わらない内に部屋に戻るよ」
「困った我儘娘だ!」
「は~い。部屋に戻ります。明日は何時に朝食にしますか?」
「七時で良いかな?この部屋に来てよ。一緒にレストランに行こう」
「は~い。では、では、では、お休みなさい。気が変わったら絶交だからね!(笑)」
「脅迫娘!お休みね。ドアーチェーンをしろよ。また、明日ね(笑)」
「は~い」
○大阪滞在二日目の日曜日の朝になった。
「お父さんおはよう」
「美鈴。おはよう。良く寝られたの?」
「興奮して、暫くねられなかったよ(笑)その後は、お父さんと長く話したので気分が良くてぐっすり寝てしまったよ」
「一緒だね(笑)美鈴と長く話をしたので興奮したようで、精神安定剤を飲んで良く寝たよ。いつもライブ前に飲む、医者が処方した緩い安定剤だけどね」
「そうなんだ。ライブ前にも飲んでるのね」
「やはりライブは緊張して神経が昂っているので、落ち着くためと、配信後の興奮も治まるようにね。朝食はフロント横のレストランに行こうか?」
「は~い」
「朝食はバイキング形式のようだね」
「お父さん。和洋中があって良いよね」
「時間があるから、ゆっくり食べよう(笑)」
「は~い。新婚旅行の朝みたいね(笑)」
「親子旅行の朝ね(笑)」
「また雰囲気を壊す!お父さん!」
「朝から怒らないの(笑)」
「分かりましたよ!お父さんはムードが無いんだから!(笑)」
「ムードを作るとヤバイからね(笑)」
「何んでヤバイんですか!」
「何んでかな~(笑) 今日はどこに行きたいの。どこでも美鈴の行きたいところでデートするよ」
「やっと、デートだと言ってくれたね(笑)久し振りに大阪城に行きたいな」
「私も久し振りだから行きたいね。実家は天守閣から見えるんだよ」
「そうなんだ。近くなんだね」
「それじゃ。九時頃に出かけようか」
「は~い」
「その時にチェックアウトだが、その前にバッグをお父さんの部屋に置いておこうか」
「は~い」
○久しぶりに大阪城に来た。
「天守閣に登るのは久し振りだな~」
「お父さん。市内がよく見えるよね」
「美鈴の会社の大きな建物も見えるよね。美鈴。こっちを見てごらん。向こうの線路と川の所に橋があるがその少し向こうに、少し大きな瓦屋根が見えるだろう、そこが実家なんだよ」
「大きな家だし、駅から近いんだ」
「さあ、ぶらぶら歩いて駅まで戻ろうか?」
「お父さん。大きな石垣だね」
「大きなのは、瀬戸内海の島から切り出して来たんだよ」
「昔だし、大変な仕事だよね」
「美鈴は、昼は何を食べたいのかな?」
「軽く、お寿司が良いな」
「それじゃ、大阪に来たら一度は寄る新世界の寿司屋に行こう。小さい店だが雰囲気があるんだ」
「は~い」
「以前に、新世界は嫌いだと言ってたかな?しかし、最近は街が奇麗になってるから大丈夫だと思うよ」
「お父さんと一緒だから構わないよ(笑)」
○新世界の寿司屋に来た。
「古い小さい店だが、雰囲気があるだろう(笑)いつも、友達と来るんだ。大阪らしい庶民的な雰囲気と主人が気さくで気に入ってるんだよ」
「大阪らしい庶民的な雰囲気が良いよね(笑) 」
「メニューを見て何でも食べなよ」
「は~い。マグロと鰻が食べたいな」
「大将!マグロと鰻を二皿ずつと、たこ一皿、握ってくれる」
「はいよ!娘さんかい?美人だね」
「そうだよ。娘だよ!」
「お父さん。娘さんかい?美人だね!だって!(笑)」
「美人の娘だろう!(笑)何か飲む?昼だからノンアルビールを飲もうか?」
「それが良いね~」
「美鈴。ノンアルビールで乾杯」
「賢吾さん。乾杯~(笑) 」
「本名の賢吾ときたね!」
「そうよ!その方がデートの雰囲気になるもん(笑) 」
「そうだね。お父さん!ではデートの雰囲気にならないよね(笑) 賢吾で良いよ!」
「賢吾さん宜しくね(笑) 」
「美鈴さん。宜しくね(笑) 」
「寿司を少し追加して食べて、あとはスイーツに行くか?美鈴の知ってる店があれば、そこに行くよ」
「そうしましょう。ナンバに行きたい店があるのよ」
「それじゃ、そこに行こう」
○スイーツの店に来た。
「美鈴。このスイーツの店は雰囲気が良いね」
「雰囲気が良いでしょ~。賢吾さん何食べる?」
「私が選ぶと昔のものになるから、美鈴が最近のスイーツを選んでくれるかな?」
「OK私が選ぶよ~」
「任せるよ」
「賢吾さん。この苺とマンゴのスイーツが流行りなの。美味しいんだよ」
「それで良いよ。このカードで払ってくれる?」
「は~い」
「賢吾さん。大きいから二人で食べるのよ」
「ほんとに大きいね。そんなに甘さが強く無くて、美味しいね」
「美味しいでしょ~」
「二人で大きなスイーツを食べ合うと、何か恋愛中みたいだね」
「今日は恋愛中ですよ(笑)」
「ヤバイ、ヤバイ!」
「また始まった!何がヤバイのよ~(笑)」
「はいはい。美鈴さん。恋愛中です(笑) 」
「はい。賢吾さん、恋愛中ですよ~(笑)」
○私が美咲の男友達の話とライブのハマり過ぎを卒業する話しをした。
「この店は会社から遠くないから時々来るの?」
「友達と時々来るよ!女友達とね!(笑)」
「男友達とは来ないの?」
「また言いたいのね。賢吾さんからお父さんに戻ったようね!」
「感が良いね(笑)この店はデートに良い雰囲気だよね。来たことある?」
「無いよ!恋愛してないんだから!」
「怒りましたね!(笑)怒られついでに話しちゃおう」
「言いたいことは分かってるよ!(笑)」
「それは手っ取り早くて良いね(笑)。二十八歳だろう?彼氏が居ないことを自慢しますか?(笑)美人で可愛いのに、何で居ないんだろうね? 四年以上、ライブで気に入った推しさんを、大きなお金を使って追いかけているからなんじゃないの?
ライブの推しはあくまでタレントだよ!ライブは錯覚と架空の世界だよ!外見の格好良さや、表面的な話だけを聞いて、錯覚で良いイメージを膨らましているんじゃないのかな? 私もライバーだからタレントの端くれだけどね。ちょっと人気が違うか?(笑) 今回はここまでにしようか?直ぐには方向転換が出来ないと思うから、ゆっくり話を続けようか?急いで無理に押すと、二人の関係に歪が出るからね(笑)」
「お父さん。ありがとう。ライブにハマりすぎる事を卒業しなければいけないことは分かってるのよ。だけど、直ぐには思いきれないの。お父さん。相談相手になってくれる?」
「勿論だろう!ゆっくりカウンセリングをしよう。ライブを卒業して現実の世界の、普通の生活の中で良い男性が見つかれば良いね。ライバーの私が言うとおかしいね。違反だね(笑)」
「見つかりますかね?」
「普通の世界に戻れば、必ず見つかるさ。ライブの卒業前から焦らないでゆっくり始めてみようか?」
「はい」
「良い人が見つかり夜にデートになれば、お父さんのライブ配信は夜だから、時間が被りそうだね」
「お父さん。それは嫌だよ!」
「美鈴のこれからの長い人生を考えれば、美咲とライブでのお父さんとの交流は架空の世界だし一瞬の事なんだよ。ライブ卒業後の人生が大切なのよ。しかし、ライブで無くても二人はDMの交換が出来るじゃないか!時々顔が見たければビデオ通話にすれば良いんだからね。 また、ライブ視聴をやめたり縮小しても、直ぐに彼氏が見つかる訳じゃ無いから。まだ少し時間があるよね。明日、明後日じゃないよね。その時に考えよう(笑) 」
「そうだよね。時間があるんだ!(笑)」
「ゴメン!難しい話になっちゃったね。気分を変えて楽しくデートをしよう!賢吾に戻るよ!」
「賢吾さん。ありがとう!」
「美鈴。次はどこに行こうかな~(笑)」




