未確認
草薮の中で、見知らぬ生き物を見かけた。
それは火山のような形をしていて、蛞蝓みたいにぬめぬめしており、全身に粘液を帯びていた。
火山でいう噴出口からは、薄黄色のホースのような、触手みたいなものが二本突き出ていて、空中でうねうねと揺れている。
これはいわゆる、「未確認生物」というやつだろうか。
私は思わずスマホを取り出すと、レンズをその生き物の方へ向け、パシャリ、とシャッターを切った。
その瞬間、その生物はがっくりとうなだれたかと思うと、わーん、わーん、と、人間とほとんど変わらない泣き声を上げ始めた。
「『確認』されちゃったよー、えーん、えーん」
蛞蝓のような火山のような生き物は、そう言って触手をぶらんぶらんと揺らすと、駄々っ子のような調子でまた叫んだ。
「ずっと『未確認』のまま生きてきたのに、お前に『確認』されたっ。お前のせいだぞ!」
目も鼻も口もない生き物にそう詰られて、私は思わず手元のカメラロールに視線を移した。
そこには、竹藪の中を這い回る蛞蝓火山の姿が、はっきりと収められている。
「でも、ほら、すごい映り良いよ。盛れてるというか」
「そういう問題じゃないんだよ!」
そう言って、確認済み生物があまりに泣くので、しょうがなく私は、スマホから写真を削除してやった。
蛞蝓火山の噴火口から、ふんっ、と鼻息のようなものが吹き出る。
「それでいいんだよ。また『確認』したら許さないからな!」
そう言うと蛞蝓火山は、重そうな身体をのろのろと引きずりながら、再び竹藪の中へ消えていった。
私は、彼の残した粘液の跡に、足で土を被せた。
そしてそのまま帰路に着いた。




