姉への供物
「あは、それ、ちょー苦しそう。抜いてあげよっか?」
そう言って、僕の姉はマンドラゴラを抜いて死んだ。
畑の荒い土の上に、白いワンピースの姉と、その手に握られたマンドラゴラが落ちていた。
近寄って確認してみるも、姉は既に事切れている。
一方で、彼女の指に抱かれたマンドラゴラは、口の端から涎を垂らし、下品で蕩けきった表情を浮かべていた。
静まり返った畑の上で、びちびちっ、びちびちっ、と、木の根の手足が痙攣する音が響く。
やがて警察がやってきた。
刑事が、衝動的な自殺だろう、とひそひそ声を交わすのを聞いた。
この街には、抜いた者を殺す植物として知られる、マンドラゴラの畑が点在している。
そのため、精神を病んだ住民や、自殺願望のある男女が、日ごと畑にやってきては、勝手にマンドラゴラを抜いて死んでいくのだ。
でも、姉はそういった連中とは違う。
彼女は、自らの終わりについてなど微塵も考えたことのない、頭が空っぽの売女で、いつも男の股間を握ることばかり考えていた。
握る、抜く、握る、抜く。
自殺願望なんて関係ない。
彼女はただ、マンドラゴラを抜きたかっただけなのだ。
そうして、自分の欲望に忠実に従った結果、脳味噌をめちゃめちゃにシェイクされて死んだ。
しかし、この世でたった一人、彼女だけが、マンドラゴラの喘ぎ声を耳にして死んだのだ。
俺は、警官の間をすり抜けて遺体に近づくと、ポケットからスマホを取り出し、カメラをその右手の中に向けた。
姉に抜かれたマンドラゴラは、まだ解放の余韻に浸っているようだった。
木の根の分岐地点には、不気味な白い汁が滲んでいて、歪んだ口元はひくひくと笑っている。
動画の秒数が、十秒、二十秒と伸びていく。
四十九日が過ぎたら、この動画を姉の墓前に捧げようと思った。
それが最高の弔いになる。




