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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

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7.騒めくはしり【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。

 

「――はぁい、一ついいですかぁ?大会の優勝賞品。それだけ先に聞かせてください」


 ヒートアップする中で、やんわりと手を挙げる新堂。その空虚(ニヒル)な眼には、品評の意が映っていた。

 問うは当然、金銭的価値。

 "パラダイム"に関わるメリットがあるか否かの見定めだ。


 ちなみに例に漏れず、声を張り上げている。


「良くぞ聞いてくれた新堂っ、それでこそ本題に戻れるッ」 

「ボスの手綱は離しちゃ駄目ですよぉ、瞳くん」


 起因や動機はどうでもいい、儲け話しかしたくない主義。

 そんな新堂によって場は一旦冷静になる。


「仕切り直してッ、大会とは景品が豪華にあってしかるべし!その景品とは――天恵!!」


 レアエネミーを獲物とするなら当然と、瞳ちゃんは胸と腹を張る。


「ほなオレからも質問ええか」

「無論だダークホースよ」

「さっきお宅んリーダーが『殺し合い』言いはったけど、競技は獲物狩り(ハンティング)なんやろ?」


 次に挙手したのは菅原。

 膝にベルタを抱えたまま、大会の定義を探る。


……

 もし『決闘』や『バトルロイヤル』という競技なら、口は挟まない。殺し合うのが基本だからだ。


――だが『ルシフェル・オンライン』における獲物狩り(ハンティング)

 これは、プレイヤー間での戦闘を禁止とする暗黙の了解がある。 


 なにせ痛みが介在するゲーム。"妨害"が妨害で済むわけなどない。


 邪魔が入れば、血みどろの争いは必然。泥仕合が生まれてしまう。

 そうなれば獲物狩り(ハンティング)という趣旨から逸れ、成り立たない。

……


対人戦(PvP)なんかエネミー戦(PvE)なんか、やる事はハッキリしてもらわなアカン」

「結果から言えば()()()()!!言わば、"妨害ありのレイドバトル"となろうッ」


 だが告げられたのは統合。

 何でもありの手段で、邪魔や殺人を合法とし、一体の強敵を討ったプレイヤーが勝利と言う。


(…ほんなら()()か)


 故に菅原は不参加の意思を決めた。

 対人は得意で無いという側面もある、しかし何よりベルタの身を案じての決定。


 もとより、話を聞くだけのつもりで招かれた。

 その理由は、普段関わらない最上位層(トップティア)の空気に触れたいが為。


 ……沙多と同じく、想像した雰囲気とは違っただろうが。


「妨害ありだぁ?」

「殺し合ってちゃ獲物狩り(ハンティング)にならねえだろ」

「しかもレアエネミーなんだろ?余計ジリ貧で倒せねえよ」


 一方、他のプレイヤー達も意図を掴みかねていた。

 愚策を敢えて取り入れる"パラダイム"へ、至極当然な意見を口々に投じる。  


「――殺し合った方が面白いじゃん」

 

 だがポツリと、全てをねじ伏せる一言。

 それは沙多の右隣――紅白髪の女性プレイヤーからだった。


「そう!この提案はウチの有栖(アリス)さんによるものだぜ!?」

「普通にエネミー殺すのも、うち飽きた」


 髪で結んだ二つのリングを揺らしながら、億劫そうにテーブルへ体重を預ける彼女。


「お待ちを、進行はこの私が。……ごほん、レアエネミーが相手とて、すぐ死なれては興醒め!故に競合のラインを引き上げ…」

「せっかくのレアエネミーだ!長く遊ぼうぜ!!」

「右頂、進行はこの私がっ!」


 本来は決死の覚悟で挑むべき敵を、肴とする。

 彼らとってレアエネミーの撃破はもはや"前提"なのだ。


「――それにレアエネミーなんだから、みんな天恵欲しくて必死になるでしょ?邪魔な奴は殺しちゃうくらい」


 有栖(アリス)と呼ばれた紅白髪の彼女は、不穏な笑みを浮かべる。 

 その目はグルグルと渦巻いて、深淵に塗りつぶされていた。


「……やっぱパラダイム…どいつもこいつもイカレてんな」


 それが、この場に居る者の総意。

 さらっとレアエネミーを発見する素の力量。それを惜しみもせず、娯楽としてしまう余裕。


 その全ては、ただ楽しむため。

 まともな感性ではない。固唾を飲む音が静かに響く。


「――けど優勝の商品として成り立たんくない?」


 ただ、例外である能天気な沙多の声が響く。

 

「皆でレアエネミーつついたら、皆に天恵行っちゃうじゃん。優勝した人だけじゃなくて」


 天恵という報酬の分配は、戦闘に関わった人全て。

 貢献度による良し悪しはあるが――極論トドメを決めずとも一度小突けば、参加賞で天恵を貰えてしまう。


「何でだ?みんなが優勝者の願いと同じ事言えばいいじゃんか」


 一方で、首を捻る右頂。

 1+1を答えるように、さも簡単という表情。

 

「言うわけないだろ、人間の醜さ舐めんなよ」

「絶対持ち逃げする奴出てくんだろ」

「やっぱ馬鹿だろ」


 皆が一人の為に、願いを捧ぐ。それは人の善性に頼る前提だ。


「――じゃあいいよ、そいつ殺しに行くから」


 そこで淡々と宣言するのは紅白髪の有栖(アリス)

 最強ギルドによる予告。それだけで場の空気は引き締まった。


 余談だが、新堂はピクリと肩を揺らした。持ち逃げを考えていたらしい。


「"パラダイム"が言うとシャレになんねえ……」

「というか有栖(アイツ)が一番ヤベエだろ。聞いたか?あの噂」

「掲示板で喧嘩打ったギルドに単騎で突撃して、壊滅させたってやつか?」


 バトル系譜のギルドを謳うだけあって、どのメンバーも戦闘狂。

 この場にいる三人(パラダイム)の内、彼女が一番の狂人。


「マジもんの地雷じゃねえか」

「地雷なのは見た目だけにして欲しいよな」


 消費カロリーが最も低そうな性格(キャラクター)に反していると、各所でヒソヒソと起こる戦慄。


「はッ?死ね殺すっ」

 

 だがそれが有栖(アリス)の逆鱗に触れた。

 インベントリより杖を召喚。指揮棒(タクト)のような短い片手杖。


「――【氷元素(アイス)】!」


 それを振るえば、巨大な氷塊が出現。

 【属性術師(エレメンタラー)】の(ジョブ)によるスキルだった。

 氷属性を思うままに繰り出し、念力のように投擲していく。


「やッばいやばいッ」


 まず隣に座る沙多が避難。

 円卓テーブルの下に素早く身を隠す。

 次にはあちこちで悲鳴が上がった。


有栖(アリス)(カルマ)値は下げないようにするのですぞっ?」

「そうだぞッ!マジで殺したら裏ギルド行きだぞ!」


 ついでに巻き添えになる右頂と瞳ちゃん(ギルドメンバー)

 だが当然のようにヒラリと躱し、ゲームシステムについて言及する余裕を見せる。


「大丈夫、半殺しにするだけッ!!」

「なら良しっ」

「良しちゃうわッ!」 

 

 ガシャンと連鎖する粉砕音。パラパラと降り注ぐ冷たい欠片。

 瞳ちゃんに太鼓判を押され、暴走はさらに勢い付く。

 これに菅原がツッコみながら【アイアス(スキル)】を展開。多重の障壁にてベルタを死守。


 無論、言葉通りに殺意は薄っぺらい。

 とはいえ当たり所によって致命傷たり得る。

 各々がスキルやアイテムを駆使し、防御ないし回避の手段を迫られた。

 

「ガチで収拾つかないんだけど!?」


 頭上で響く、一際大きい有栖(アリス)の金切声。

 そのキンキンとした荒れ模様。場が騒がしくとも明確に聞こえた。

 悲鳴を上げる沙多は、同じく円卓の下に隠れる二人に問いかける。


「ねえちょっと!どうすんの!?」

「しばらく有栖(アリス)の思うままにやらせるのが吉ですなッ」

「だな!しばらくすれば落ち着くだろ有栖(アリス)さんも!」

「今なんとかしろ!!」


 そして返答に頭を抱えた。

 同時に――ああ、このギルド、全員声でかいんだ。という感想が渦巻く。


 対面に声が届かないほど巨大な円卓。

 これに不便という意見が挙げられず、改装されていない理由に漠然と納得した。


「ふざけんなテメェ!」

「情緒どうなってやがるッ」


 だが方々で慟哭は止まらない。

 今もなお被害は拡大中だ。


 とはいえ、その対策は完全燃焼を待つのみとされる。

 鎮める方法は無いと断言し――


「――フム、ここが召集の場であるか」


 ベアルが入室した。 


 同じく招かれていたはずの、だが確かに姿が無かった悪魔。

 しかしタイミングが最悪。

 今ズカズカと立ち入ったそこは、まさに災害と化した現場。

 暴れる氷塊はベアルに向かい――


「ムゥ?」


 当然のように生身で打ち砕いた。

 構えたわけでもない、ただの"棒立ち"。

 しかし薄氷のように【属性術師(エレメンタラー)】の攻撃を無力化。


 これにピタっと魔力の流れを止める有栖(アリス)

 ヒンヤリとした空間に、静寂が訪れた。

  

「来たかっ…――大目玉!!」


 そしてテーブル下からひょっこりと顔を出す右頂。

 バチンとゴーグルを降ろし、目に装着した。


この会議室は体育館くらいの大きさです。


*↓ガチ謝罪

活動報告で触れた一章リメイクの話ですが、間に合いませんでした。

来週の月曜までには絶対やります。まだ自分いけます、信じてください



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