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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

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6.動く切っ掛け【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「え、スガも来たの!?」

「沙多もかいな」

「アタシは新堂(こいつ)に連れてこられた」


 後日、招待された場へ向かった沙多と、指を差された新堂。

 そこには意外、菅原も同じく赴いていた。

 

「おや、君は噂の…」


 流石に掲示板の騒動は掴んでいるようで、渦中のダークホースと興味深く交流を始めた新堂。


(にしても、こんなとこあったんだ…)


 その間に沙多は、周囲をサラッと見て回る。

 まるで遺跡のように連なる柱やレンガ。広々とした吹き抜けの玄関が一同を誘う。


――ただし全てがネオン色。

 サイバーチックに光っていた。

 古風な歴史を感じさせるのに、近代的な技術を感じて仕方がない。


「結構人居るなぁ…」


 この場は、初ログイン時に降り立つ最初の街――いわゆる"初期地点"から見て、南西に位置する。

 付け加えるなら『ルシフェル・オンライン』の最果て。ゲームマップの限界地点だ。


 移動は長距離、エネミーとも会敵する険しい道中の旅。

 テレポート機能はある、が有料。一度の使用で十万円以上が優に消えてしまう。


 そんな場を指定されたのだ、本来なら誰も来ようとも思わない。

――しかし見渡せばプレイヤーの数は五十を超えていた。

 それだけ"パラダイム"という名に影響力があるのだろう。


「あっサっちゃん~!」

「ルタっちじゃんっ」


 当然、菅原がいるところにはベルタあり。


 同じく周囲を散策していたのか、遺跡の裏手で再会。

 拾った木の実をモグモグと食べていた。   


「てっきり二人とも来ないんかと思った」

「ウチらはあんちゃんのワープ魔法で来たよ」

「あっなんかズルっ!?」

 

 しれっとベアルを頼った旅費ゼロ円。

 嫉妬と同時に、金に飢えた菅原たちが参上出来た理由を悟る。


 ちなみに悪魔も今は別行動。辺りを徘徊しているらしい。


「ここ凄いよねっ!ウチも流石にここまで来たことないから、ワクワクしちゃった!」

「それな、建物もエグくない?圧が」


 閑話休題。

 見上げる遺跡は、言ってしまえば"ゲーミングピラミッド"だ。

――ただし反対向きの。


 四角錐の頂点が地に刺さった逆さま状態。

 倒れないのが不思議と、感想が一致する。


――なんかこれ、見たことあるよな…? 

――東京にこんなの無かったか…?

――ビッ〇サイトだ…


 他のプレイヤーも同じ意見なのか、チラホラと声が流れていた。


――――――

――――

――


「ようこそ諸君!」


 時間となり、開かれた遺跡の門。

 一同が奥に通されれば黒髪黒目――例の肥えた男が待っていた。


 案内された中は悪の組織さながら、灰色で統一された研究室(ラボ)らしき内装。ケーブルが粒子を運ぶように時折光る。


 そんな空間には置かれた巨大な円卓テーブル。

 囲う椅子は数十個。ここが会合の場らしい。

 

「…いやこれさ」

「沙多さん、その感想は後でいいですよぉ」


 何か思うところがあった彼女、だが新堂が釘を刺しながら着席。

 これを皮切りに各々が椅子に腰を降ろし始めた。

 ドサリと豪快に座る者、足を組んで崩す者、丁寧に座る者。プレイヤーは十人十色だ。


「おい、お前は自分の椅子座らんかい」

「いいじゃんここでっ」


 奥に見える菅原は、膝にベルタを抱えながら着席。

 そんな個性あふれる銘々を観察しながら、沙多も座るべく椅子に手をかける。


「――ここ、うちが先客」


 だがそこには既にプレイヤーが居た。

 薄暗くて分りにくいが、沙多と同年代かやや上の少女。

 

 ワイン色をベースに、白を差し色とした紅白。

 髪で編んだリングをデカデカと二つぶら下げ、ゴスロリ風の衣装を纏う。


「さて!では本題へ移させて頂く!!」


 やがて空気を換える一声が響いた。

 高らかと宣言すれば、力士よろしくチョンマゲな肥満の彼も同じく着席。

 先客の女性プレイヤーの右の右、二つ離れた席を選ぶ。 


 ではその中間、二人の真ん中に座るプレイヤーは――


「――よく来てくれた!!おれのギルドへッ!!!」


 円卓のテーブルに乗り上げ、耳を劈く声量で叫んだ。


 余談だが、沙多が最終的に選んだ椅子は、紅白髪プレイヤーの左隣。

 至近距離で大声を聞き、思わず両耳を塞いだ。


「まずはギルド(こいつ)を見てくれ、どう思う?素晴らしいだろう!?」


 自慢するように両手を広げ、一人一人に賛同を求める男。

 パーマがかったセンター分け。チョコレートの如き髪色を揺らし、はしゃぐ子供さながら問いかける。


「特にこの広間はロマンを詰め込んだ――」

右頂(うちょう)、話が脱線気味ですぞ」


 だが肥満の男に釘を刺され本題へ。

 話の手綱を握るのは、意外にも彼らしい。


***


「まず自己紹介だっ。おれこそがギルド"パラダイム"の団長(マスター)右頂 天真(うちょう てんま)!」

「知ってるよ」

「自己主張激しいわ」


 仕切り直しに名乗ったのはチョコ色センターパートこと、刺々しい奇抜なゴーグルを額に付けた男。

 この集会(イベント)の種を蒔いたのは、彼だという。


 だが腐っても最上位勢(トップランカー)

 招待された大多数(プレイヤー)は存在を把握済み。今更だとヤジを飛ばす。


「今回集まってもらったのは他でもないッ!――()()()()しようぜ!!」 


 次には単刀直入に目的を打ち明けた。

 もはや音波を感じるほどの声。その圧から放たれた内容に一転、周囲はシンと静まり返る。


「右頂、それでは起承転が不在。もはや結だけですぞ、ケツ」

「何っ、ケツだけは駄目だ!説明してくれ()()()()!」

「合点承知!」 


 沙多は終始、目を丸くしていた。

 集まって数分。既に体力の消耗が激しく、言葉を挟む余裕もない。


――事前情報は『"パラダイム"という最強クラスのギルドによる会合』。

 そこでは重く、荘厳な一言一句が飛び交うものと覚悟した。


 だが待ち構えていたのは、乖離した雰囲気。

 目線で新堂に問いかける。

 すると遠く離れた席で、彼は肩を竦めた。どうやらこれが現実らしい。

  

「では進行は、この竹内 瞳(たけうち ひとみ)が務めさせていただくッ」


 肥満男こと"瞳ちゃん"が、ファサッと艶やかな黒髪をかき上げる。ついでに腹の肉も揺れた。


「この"パラダイム"主催の元、一つの競技大会を開きたく、諸君らを参加者として募った!」

「…競技?なんのだ?」

「パラダイムらしくねえな」


 この発言に訝しむ面々。


「……んん?」


 一方、片隅で聞く菅原は微かに反応。

 ベルタの頭を撫でさせられる手が一瞬、ピタリと止まる。

 

「どうしたの純貴?もっとやってよ」

「いやな、ちょいとオレらがお呼ばれなった原因に心当たりが…」


 競技という存在は知っている。

 むしろ彼らは最近まで参加していた側だ。

 格闘トーナメントから獲物狩り(ハンティング)、踏破レースまで様々。


「系統を分けるならば、ずばり『獲物狩り(ハンティング)』!一つの獲物(エネミー)を狙った、早い者勝ちの競争!」

「そうだ!この前、面白い()()()()()()見つけたんだ。そいつが目標(ターゲット)な!」


 瞬間、一同は騒然とした。


 大会における獲物狩り(ハンティング)とは本来、一般的なエネミーを目標(ターゲット)に競う。

――何故なら首級とは、"ほどよい強さ"でなくてはならない。


「正気か?こいつら…」

「普通のエネミーじゃない……」

「それクソゲーにならねえか…?」 


 弱すぎればすぐに終わり、強すぎればそもそも競技にならない。


 だがレアエネミーを据えるという何気ない発言。

 釣りでクジラを吊り上げるが如く、猟銃で龍を仕留めるが如くの無謀さだ。 


「おい、どうしてレアエネミーで大会を開こうと思った。狙いは何だ?」


 やがて内一人のプレイヤーが動揺を掻き分け、右頂(ギルドマスター)へ問いを投げる。


 それは冷静な、腰を降ろしたままでの発言。

 相手にペースを握らせまいという主導権を巡る一手でもあった。


「ん?なんだ?もっと大きな声で言ってくれッ!」

「…レアエネミーで大会を開く狙いは何だッ」

「いやゴメン、聞き取れねえわ。声小さい」

「だからッ!!動機を聞かせろォ!!!」


 だがマイペースな団長に出鼻を挫かれる。

 青筋を浮かべながら、ガタンと席を揺らして立つ質問者(プレイヤー)


「そもそも何だこの円卓(テーブル)!無駄にデカいぞ!!」

「確かに」

「それな」

「――だって大人数で話そうと思ったら、このサイズになるだろッ?」

 

 真剣に、だが滑稽に見えた右頂の返答。

 パーマがかったチョコ色の髪が、彼らの神経を逆撫でするように揺れる。


「無駄に雰囲気だけ作りやがって!なんで会議室が体育館並みにデカいんだよっ!」


 これを皮切りに、空間のボルテージは上がった。

 各々が堪えていた鬱憤を、唾と共に吐き出していく。


「…確かに、数十人でわらわら囲むもんじゃないだろ、円卓って」

「同じテーブル囲ってんのにこんな距離あるの初めてだわ」

「おいこれマジで真正面のやつの声聞こえねえぞ」


 それは最初に沙多が抱いた、しかし新堂に抑えろと言われた感想そのもの。

 

(やっぱ皆同じこと思ってたんだ)


 胸中まんまの代弁に、自分が異端でないことに胸を撫で下ろす。

 そして無遠慮に「馬鹿なのかな?アタシと同じくらい」と"パラダイム"の印象を更新した。

 

キャラの消費カロリー高くて心配。胃もたれしそう

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