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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

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7.騒めくはしり【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「――これは結界とやらであるか」


 菅原らに同行するも、別行動をしていたベアル。

 そんな彼は拠点(パラダイム)の門が開かれるまで暇と、周囲のエネミーを狩りつくしていた。


 やがて辿り着いたのは、マップの限界地点に発生する、不可侵のバリア。

 首を傾げるそれは無論、妨害などでは無く世界(ゲーム)のシステム。


 その先にも景色自体は広がっている。

 しかし、まだ開発がされていないのか、進もうとすれば阻まれてしまう。 


「…フム、刻限か」 


 とはいえさほど興味は無いらしい。

 蹂躙したサソリ型エネミーをバリアに叩き付け、圧殺された光景を見届けて踵を返す。


――――――

――――

――


 かくして、遅刻して招待となったベアル。

 座して待つのは、狼狽の目だった。


「ノーダメかよ……」

「おい…あいつ…」


 だが有象無象には囚われない。

 周囲を観察し沙多の存在、そしてベルタと菅原の二人も確認。


「アンタが来たなら絶対楽しくなるぜ!」


 そして右頂の言葉に視線を戻される。


 もちろん何を始めるかの説明を聞いていない。しかし促されるままに着席。

 菅原の膝にベルタが座ることで空いた、二人の隣席に腰を下ろした。


(簡単に言うと、レアエネミーで獲物狩り(ハンティング)やろうって話になってん)

(でも優勝した人じゃなくて、みんなに天恵が配られちゃうから、どうしようって所だよ!)

 

 小声にてかみ砕いた説明を二人から受ける悪魔。


 案として()()が挙げられたが、それは事後の対策。未然には防げない。

 加えて遵守たり得る強制力は無く、まだ他に具体的な提案も無い。


 さてどうするか?という議題であったが――


「――問題などあるまい」


 だがベアルは決まりきった答えだった。淡々と、対策など不要と一蹴する。


「吾が全てを統べるのみであろう?」

 

 他の追随を許さず競技を独走する。

 そんな言葉が、全員の脳へ、金槌で打ち付けるように響いた。


 悪魔の宣言を皮切りに、喧噪の場はシンと静まり返る。


――――――

――――

――


 三十分と進んだ時計の針。

 ベアルが出現して以降、驚くほど会議はスムーズに進んだ。


「――ではここで一度、参加希望者を募りましょうぞッ」


 あらかた説明を完了すれば終盤の兆しを見せる集会。

 瞳ちゃんは手帳を開き、事前受付と面々を見渡す。


「アンタのギルドは参加でいいよな!?もう書いとくぜッ」

「構わぬ」


 先に続き、圧倒的な存在感を残し続けた悪魔。

 失礼、無礼な発言も込々で、既にベアルは注目の的らしい。この場の全員の意識を掻っ攫っていた。


「いやオレらのギルドちゃうし、そもそも…」


 加えて菅原の一味と誤解されている。

 ただし菅原(ギルドマスター)は参加に否定的。


「ギルドの名前なんて言うんだ!?登録しとくぜ!」

「聞く耳持たへんな」

「ウチなら大丈夫だよ、純貴」


 されど意見は聞いてもらえない。

 遂には膝下のベルタがアイコンタクト。了承を取れれば、溜息を吐きながら参加の意を示した。


「他にはッ?この祭りを楽しむ奴はあと何人いるんだ!?」


 扇動する右頂。パチンとゴーグルを上げて目配せ。

 先ほど何のためにゴーグルを装着したのか分からない。


「……やるぞ」

「俺んとこもだ」

「あんだけ言われて引き下がれっかよ」


 やがて大半が手を挙げた。

 本来ならば、菅原のように見送るつもりの者は多かった。しかし――


――"吾が全てを統べるのみであろう?"


 ベアルの無自覚な挑発に、火が付いた。


 利益ではなく、プレイヤーとしての矜持。

 それを賭けた視線が、悪魔へと注がれる。

 

「まーじかっ!最高じゃねえか!!」

「右頂、書くの手伝ってくだされ」


 希望者を手帳に書き込んで(メモって)いく様を尻目に、子供のようにはしゃぐ主催。

 

「…うちもやる気出てきた」

有栖(アリス)も手伝ってくだされ、ほんと辛い」


 なお書記役の瞳ちゃんからは悲鳴が上がった。


***


「――右頂くん、そもそもレアエネミーじゃなかった場合はどうするんですかぁ?」


 全てが終わり解散を宣言された後。

 一同が"ゲーミング遺跡"の出口を目指す中、新堂は個別で接触する。


 問うのは、標的がただのエネミーだった場合。

 景品として天恵を用意できなかった際の補填だ。

 

「ありえないと思うけど、代わりの物なんでもあげるぜ?お金とか装備とか」

「なら僕のギルドも参加で、登録をお願いします。こちらの沙多さんが出場するので」

「エっ!?」

 

 先の募集時では、挙手しなかった新堂。

 これに密かに、二つの意味で胸を撫でおろしていた沙多。


 一つは"同行する"という依頼が無事終わった事。

 一つは妙な大会に不参加で済むという事。


 だが保証を約束されれば、あっさりと意思を表明。彼女は素っ頓狂な動揺を示す。


「何で!?アタシ付いてくるだけのボディーガードでしょ!?何で大会もやらされるん!?」

「どうせこんなオチだろうと思ってたので」

「こうなるの分かっててアタシ呼んだん!?」

「だってバトルギルドですよぉ?お頭がイカレてしまった集団です」


 ドシッと、小生意気な白衣に蹴りを一発。だが新堂は飄々とした態度を崩さない。 


「では後はよろしくお願いします」

「アンタが参加しろ」

「嫌ですよぉ、僕は戦闘向きじゃないので」


 スキルを打ち込んでやろうかと震える沙多。

 遂に殺人(PK)への第一歩、それを踏み出す殺意が湧いたとき――


「――狙うならば優勝でなければいけません」


 そんな言葉に体の力が抜ける。


「…ガチで狙ってんの?優勝」

「勿論ですよぉ、利益は獲る。その上で楽しめるなら、楽しむに越したことはないでしょう」


 彼もまた、『ルシフェル・オンライン』を謳歌する側。

 真摯に儲け、真剣に楽しんでいる。


 ただ自分では力不足。沙多であれば託せると、言外に告げる。

 新堂の目は、軽々しくも真っ直ぐだった。


「――けどダメ、アンタも道連れじゃなきゃアタシも出ない」

「強情ですねぇ」

 

 そして沙多の目は、私怨で濁っていた。

 

「……ならベアル君を弱体化させて欲しいですねぇ」

「…ガチで言ってる?」

「彼はまさしく一騎当千。本気で策を用意しなければ、あの言葉通り、全てを持って行かれます」


 やがて折れた新堂。了承の変わりに要求したのは、優勝の為の構図だ。


「毒とかを盛れるなら良いんですけどねぇ…」

「無理だしやらせんし、そもそも効くのかすら怪しい説ある」


 それは冗談でもなく、真面目。

 口調は優しいが、表情は柔らかくない。 


「そうでもしなければ、出場しても勝ちに行けません」

「…あっ」


――だが一つ、沙多には当てがあった。


 無論、毒を盛るでもない手段。

 弱体化に繋がる行為でありつつも、裏切りでない、好意の証が。


「…あんま期待せんでね?」


 これに歯切れ悪く機嫌を伺いながら、新堂を見上げた。


***


「ほな、オレらもそろそろ帰んで」

「え~、もうちょっとここの草食べたい」

「昆虫か」


 ギルドの外に出れば、道端で植物を採取するベルタ。

 それを呆然と佇んで見守る菅原。


「他にまともな飯用意すっから…」

「ねースガ~!!」


 やがて沙多の声に、哀愁漂うその背中は振り返る。


「ベル知らん?一緒に来てたっしょ?」

「ベアルの(あん)ちゃんなら、そっちおるで」

「――ム、妹君か」


 言うや否や、茂みの奥から姿を現す悪魔。

 現実と同じ、使い古されたボロボロの靴にて植物を踏み潰す。


「あっウチの草…」


 補足するなら、ベルタが吟味していた野草だった。


「あのさベル、前に魔力とか足んなくて困ってるって言ってたじゃん?」

「以前の『ろぐあうと』なる現象であるか?」

 

 ベアルの住処は電気が通っていない。

 故に『ルシフェル・オンライン』をプレイする為、己の魔力をそのまま電力として変換している。

 だがそれは相当効率が悪く、ゲームでの活動を中断されることもしばしば。


「――だからさ、()()使ってみない?」


設定的にベアルは現時点でもクソほど弱体化してる。

なのにこれ以上弱くしたい?正気か新堂


*一章のリメイク完了しました。

番外編も新たに追加しているのでよろしければ見てやってください。


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