表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/107

4.目立つ頃合い【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


75.gok大宜都市-阿波井区>

【ほんとゴミ。ありえない、今思い返しても腹立つ】


101.ase豊受市-須倍区>

【↑こいつ頭イカレすぎ。前騒いでたのと同じ奴だろ、何時まで引っ張ってんだ】


107.gok大宜都市-阿波井区>

【↑は?殺す。あのガセでうちらがどんだけ損したと思ってんの】


129.ase豊受市-須倍区>

【↑やってみろや、どうせ掲示板だけの威勢だろ雑魚が】


 手帳からアクセスする掲示板。そこは口論の嵐だった。

 菅原の言う通り、情報を吟味するプレイヤーがヒートアップ。


160.yjb瀬織津市-高角区>

 【←129:止めとけ、そいつガチだぞ。もし前騒いでたのと同じなら"パラダイム"だ】


184.ase豊受市-須倍区>

 【すいませんした。許してください】


190.gok大宜都市-阿波井区>

 【↑許さない殺す】


 だが流れが変わる。仲裁者が言うには、『ルシフェル・オンライン』の上位勢力。

 そんなギルドのトップランカーだという。


228.orz稲荷市-穴守区>

 【草、こいつ終わったな】


231.gok大宜都市-阿波井区>

 【↑お前もウザイ殺す】


256.orz稲荷市-穴守区>

 【えぇ…】


304.dsg鈿女市-荒立区>

 【いうてPK(プレイヤーキル)(カルマ)値上げると、裏ギルド行きだし心配しなくていいだろ】


333.ota-荒立区>

 【そもそも例の『賞金狩り』も来るかもだしな。今はPK(プレイヤーキル)のリスクがデカいわ】


337.gok大宜都市-阿波井区>

 【うるさい、殺さなくても全員半殺しにする】


361.orz稲荷市-穴守区>

 【流石に『賞金狩り』は無理だろ。チートみたいな強さでまともに戦えた奴見たことねえぞ】


378.yjb瀬織津市-高角区>

 【↑しかもそいつ、ギルドに入ってるくさい。ならまだ他にも戦力いるって事だろ?】


392.hbu多福市-大谷区>

 【前に見たとき、大会中なのにそいつらベンチに座ってたぞ。しかも余裕の優勝】


399.sgn鹿屋野市-中央区>

 【やべえダークホースじゃん。最近"タマモ"も潰れたし、もうトップ帯じゃね?そのギルド】


404.gok大宜都市-阿波井区>

 【あのぽっと出のギルドも、いつか()る予定だから】


***


――最近、忙しいなぁ。


 それがベルタの感想だった。

 要因は紛れもなく、悪魔ことベアル・ゼブルの存在。


 何も、この慌ただしさが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。

 彼女はゲームの中だけの存在。日夜をここで過ごし、菅原らギルドメンバーがログインしない合間も、一人ギルドでポツンと待つ。


「…あっお帰りっ」

「クラゲ娘のみか。ウヌの番いは居らぬのか?」


 しかし悪魔に活動の制限は無い。

 食事も睡眠も必要とせず『ルシフェル・オンライン』内を徘徊し、時折ベルタの住処へ顔を出す。 


 それは単なる状況報告。

 人間社会やゲームマナーに疎い悪魔が、"やらかさない"為の行動。

 彼を預かる上での契約に過ぎない。


「番い…!?え~へへっ、やっぱそう見えちゃう?」


 ただ、それでも寂しさが紛れ、素直に嬉しかった。

 少女はクネクネと身を揺らし、水色の髪もそれに呼応する。


「純貴はまだログインしてないよっ、まだ来ないんじゃないかなぁ?」 

「フム…アヤツが同伴せねば、競技には臨めぬな」

「あ~大会出たいんだっ?」

 

 ベアルは人ならざる人外。

 故にゲームに疎い。というか、ほぼ理解していない。

 『大会』というシステムも、手帳(オプション)から受付や登録などを済ませる必要がある。


 無論、彼がそれらの操作を円滑に出来るわけもない。


「確かにウチらだけじゃ出られないもんね大会」


 加えて、少女も"インベントリ"や"スキル"と言った、プレイヤーの権限が無い。

 同じく手帳(オプション)の機能も持ち得なく、誰かを頼らねばならなかった。


「ウヌのそれは『おぷしょん』とやらではないのか?」

「これはただの日記。ウチの秘密の日課です!あ、純貴たちにも言わないでね?」 


 一方で彼女の手元には別の手記。

 日々の思い出や、このゲームの知識。あとは()()を兼ね、欠かさず書き込んでいる。


 今もまさにその途中。

 ベアルが帰還するまで日記をつけ、時間を潰していた。


――だがそのペンを握る手は止まり、机に置く。


「…あれ、またお客さんかな?」


 ピコンッと響いた通知。

 来客を伝える呼び鈴が、ギルド内に走る。

 

 これが最近の忙しさに拍車をかけていた。

 良くも悪くも悪魔の存在感は、一部から熱を集めるほど。


「はいは~いっ」


 席を立ち、トテトテと玄関へ。そして扉を開けると数名のプレイヤー。

 誰も見知らぬ者だった。


「…ここは”賞金狩り”のギルドか?」


 不躾な問いに、コクンと頷くベルタ。

 それは悪魔の事だ。

 掲示板を騒がす常勝無敗。彼の注目度を表す二つ名。 


 「やっぱりあんちゃん目当ての人だ」と振り返り、ロビー奥に佇む彼を呼ぼうとすれば――


「――【アイアンメイデン】」


 刹那、鉄の茨が召喚。

 無数の棘を持つ造花と共に、ベルタに襲い掛かる。

 

(あ、悪者(そっち)だったかぁっ)


 完全に不意を突かれた。

 尻目で確認できた殺意、少女の中でやけに冷静な走馬灯が流れ――


「――ウヌは『ぴぃけぇ』とやらであるなッ?」


 刹那、悪魔が鉄の茨を引き千切る。

 棘すら無視して、それどころか素手でへし折って鉄屑(スクラップ)へと変えた。


「チッ、出たな"賞金狩り"!!」

「この前のお礼だッ!」


 ベアルが彼らに何をしたのかは分からない。

 ただ、相当な恨みを買っていた。

 

 悪魔も悪魔で、売られた喧嘩は全て買うスタイル。闘争の気配を前に肩を回し、笑みを浮かべる。

 そうしてシームレスに戦闘が始まった。

 

「――ウチの愛の巣がぁぁ…!」


 しかし戦場はギルドの真ん前。

 戦火が建物に飛ばないわけが無かった。


 借金がこれ以上増える予感を確信にしながら、ベルタは涙を浮かべ叫んだ。


――――――

――――

――


「守ってくれてありがとう」

「構わぬ、これも契約の一つだ」


 無事、何てことなく撃退を終えた悪魔。

 殺人者(PK)から守ってもらった礼を告げる。九死に一生だ。

 だがしかし、被害はあった。

 

 ギルドの前には瓦礫や岩石が散らばり、灰色の外壁には傷や凹みが生じた。

 玄関の窓ガラスも全滅だ。

 おまけに、ベルタの珍しい石コレクションもお亡くなりになった。


「でも今のは本気で危なかったなぁ……ほんとに死んじゃってたかも…」


……

 『ルシフェル・オンライン』には、死の代償(デスペナルティ)が発生する。


 普通ならばその対価は、半日程度のログイン不可となるクールタイムと――金銭。

 特に後者は重要。この世界のゲームマネーは、現金そのもの。

 現実とリンクしたゲーム用口座に、少なくない痛手だ。

 

 ただベルタは『ルシフェル・オンライン』のみの存在。

 現実には存在しない。


 代わりに彼女が失うのは――記憶の一部。


 一度は天恵により、記憶を取り戻した。

 だが、死の代償(デスペナルティ)という世界の(システム)からは、未だに解き放たれていない。 

……


(やっぱり日記はまだ続けないとマズイよね)


 もし死んでいたら、自分でも分からない何が欠落した。

 故に日記を付け、全ての知識を、思い出を、振り返られるようにしておかなければならない。


 胸に手を当てる少女。未だ心臓はドクドク鳴っている。

 積み重ねてきた記憶の消失は、何としても避けるべきだ。


――とはいえ近況がそれを許さない。


「『ぴぃけぇ』とやらに介する頻度も増しておるな」

「あんちゃんが目立っちゃってるからねぇ」


 火山の辺境(ここ)での来客は増す一方。

 殺人者(PK)との接敵も、初めてではない。…とはいえ玄関前でのドンパチは今回が初だったが。


 閑話休題。

 このままでは、支障をきたすことは明白。ベルタの死亡も時間の問題だ。

 ついでにギルドの修理費も問題である。


「う~ん……」

 

 エントランスの椅子に腰かけるベルタ。

 さてどうするかと、日記を眼下に頭を悩ませる。


「――あっ、じゃあさ!ウチらで『賞金首(PK)狩り』をしちゃうっ?」


 やがて辿り着くのは、先んじて芽を摘んでいくという目論見。


 中途半端な知名度ではなく、いっそより強者として。

 安易に手出しできない勢力として名を広める算段だ。


「フム?」

「前にやったでしょ?『賞金首(PK)狩り』ならウチらだけで出来ちゃうし」


 おまけに菅原などの、ゲームを熟知したプレイヤーが不在でも可能。

 なにせ悪人を倒しまくる。ただそれだけだ。


「――それに悪い人ほど、倒したら沢山お金が貰えるはずだよ?」


 それが引き金だった。


 元よりこの騒動の元凶はベアル。

 菅原達のギルドに身を置いているのは、彼が金を欲しているため。

 全ての需要が一致する。


「クハハハハッ面白いッ!ならばそれに興じようぞッ」 


 何より、ただエネミーを狩るだけでは退屈。

 そんな悪魔の琴線に触れた。


「では往くぞッ!クラゲ娘よ!」

「えっウチも一緒!?…ちゃんと守ってくれるよね!?」


 そうして悪魔はベルタを小脇に抱え出発。

 菅原という保護者がいない中、二人は飛び立った。


――言うまでもなく後日、さらに悪評は広まった。


ベルタは危機管理能力がまだまだ甘い。生後一年ほどなので

ちなみに石コレクションの中でのお気に入りが、とぐろを巻いた石。うんこじゃねえか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ