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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

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3.息抜きざかり【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「最近初心者という名のカモが少ないですねぇ」

「鍋で煮込んでるのアンタらじゃん。そのせいじゃん」


 沙多の所属する時計台(ギルド)へ戻れば、そこに居るのは新堂(ギルドマスター)

 黒インナーに白衣を纏った胡散臭げな男だ。

 しかし何やら、意味不明な事を言っている。


「初心者の減少は、界隈の衰退を意味します。沙多さんも他人事ではありませんよぉ?」

「アンタがいっちゃん他人事だけどね」


 この拠点は初ログイン時に降り立つスタート地点、その近くに構える初心者(ビギナー)の為の窓口。来る者拒まずのスタンス。

 だが彼は利益を最重視して動くプレイヤー。儲かるならば初心者だろうと騙し、狩る。


「人聞きの悪いこと言わないでください。どうせ長続きもせず、引退するであろう人を前もって摘んでいるだけです」 

「この部屋って鏡無いの?」


 皮肉すらも飄々と受け流すこと数分。

 カチャカチャと何かを調合し終えた彼は、ソファに腰掛ける。


「しかし沙多さん、連絡もなしにどこ行ってたんですかぁ?心配したんですよぉ?」

「アンタはアタシの親かよ」


 薄っぺらい言葉に感じるが、メッセージには彼からの着信が多く残されている。

 事実、肉親よりも高い関心。沙多は自分の言葉で辟易した。


「で、何の用?」

「"裏ギルド"との交渉を頼もうと思ってたんですよぉ」

「はぁ!?またぁッ!?」


 とはいえメッセージの内容は任務の話。

 心配しているんだか、便利にコキ使いたいだけなのか良く分からない。

 表情は哀から怒へ。対面のソファでくつろぐ沙多は飛び起きる。

 

「別に戦えとは言ってません」


 その剣幕に、緑の天然パーマが揺れる彼。

 だが終始落ち着いていた。


「裏ギルドもあくまでギルド、人の集合ですからねぇ」


 そもそもギルドとは情報交換の場。


 戦闘を目的とする"バトル"系譜。

 利益を追求する"マイン"系譜。

 天恵や探索が第一の"エース"系譜。


 集まる傾向は大まかに決まっている。

 それはPK(プレイヤーキル)を犯した(カルマ)値の低いプレイヤーでも変わらない。


「当然、()の"マイン"や"エース"のギルドだって存在する。違いは『たまたま人を殺しちゃっただけ』、話の通じる相手です」


 むしろ前回が特殊だったと、新堂は書類をまとめながら言う。

 そこには、これから向かうであろう裏ギルドの情報が記されているのだろう。


「じゃあアタシ行かなくていいじゃん。話すだけなら」

「女子であれば警戒されにくい。第一印象という点では適しているんです」

「…ホントにそれだけ?」

 

 確かにこのギルド、女性プレイヤーは沙多のみの紅一点。

 だが含みを感じた。

 他に理由があるような気がしてジト目を繰り出す。


「後は万が一、戦闘になった場合に備えてですね」

「やっぱ戦うじゃん!!」


 嫌な予感的中。

 緑の天パをもみくちゃにする。


「痛いイタイイタイ…良いじゃないですか、【占星術師】って不意打ち向いてるんですよ」

「なら【暗殺者】でいいでしょ!!」

「いやぁ~あの(ジョブ)、人気が無くて人手が…」

占星術師(アタシ)のが無いわ!!」


 沙多はウガーッと怒りの沸点に達した。


「――キミは対人向きなんですよ」


 しかし、やけに真面目な声音が返ってきた。

 思わずワサワサする手が止まる。


「このゲームは【格闘家(ファイター)】や【魔導士(ウィザード)】、そして僕の【錬金術師(アルケミスト)】といった(ジョブ)が好まれます。何故か分かりますか?」

「強いとか、便利だからじゃないの?」

 

 人気ランキングを作れば、上位に来るだろう職種。

 理由は沙多が言うように明白。

 火力が高かったり、継戦に秀でているためだ。


「――補足するなら『エネミーに対して強い』。結局はこのゲーム、エネミーとの戦いです」 


 エネミーの討伐報酬には実利が、目玉のレアエネミーには天恵がある。

 「殺人(PK)よりも遥かにメリットがありますねぇ」と彼は肩を竦めた。


「なので(ジョブ)の強さとは、エネミーを物差しに語られる。ここまではよろしいですか?」

「だから【暗殺者】も人気無いって言うんでしょ?」

「その通り。対人向けの職種は、エネミー相手にやや力不足ですので」


――ここで新堂、パンッと両手を合わせ問いかける。

 

「さて、では昨今の初心者ですが、対人向けの(ジョブ)を選択したプレイヤーは何人でしょうか?」

「…まさかゼロなわけ?」


 すかさずパチパチと、正解の拍手が鳴り響く。


「つまり我がギルド、【暗殺者】すら不在です。対人ならばキミが最も秀でています」

「うっわ嫌なこと聞いた」

「環境が煮詰まってきましたねぇ、もう昔のような混沌とした最強ランキングは拝めません」


 ゲームリリース直後の黎明期にとあるキャラや装備が持て囃される。

 だが時間が立てば「そうでも無かった」と評価が右肩下がり。良くある話だ。

 

「昨今の若者は合理的だ。"とりあえずゲームを起動する"よりも先に、強い武器や行動をネットで調べる傾向がある」

「そりゃスマホ使えばすぐ出てくんだから……じゃなくて、とにかくアタシはヤだからね?」


 かくして話を戻し、抗議する沙多。

 裏ギルド絡みの面倒事はゴメンと、席から離脱した。


「えぇー?僕のギルドの為に一肌脱いでくださいよぉ」


 しかしインベントリから金貨をチャリンと投げ渡す新堂。

 額にして十万円相当。

 沙多はスチャっと着席した。


「…で、いつ行くんよ。団長(マスター)も一緒なんでしょ?」

「キミのそういう所、僕は好きですよ」


 ついでに、都合よくマスター呼びだった。


***


「妹君よ、『げぇむまねぇ』とは如何にして得るのだ?」

「えっ?」

 

 久しぶりにベアルと合流しプレイするゲーム。

 しかし、いざ始めれば、そんな問いが投げられた。


「ベルってお金とか気にするんだ…」


 まるでツチノコを発見したような緊張。

 失礼な感想だが、彼が無関心だったのも事実だ。

 ゲームマネー=現金なこの世界。

 この人外の悪魔が、何をどこまで理解をしているかは、沙多とて把握できていない。


「なしてお金欲しいん?」

「この『ぶいあぁる』には必要なのだろう?」


 漠然と理解した。

 前日に家電量販店で再購入したVR機器。

 その内の一つ、消費電力が少ないタイプを欲しているのだと。


「やっぱ安定なのはエネミーを倒すことかな。倒せば倒すだけ儲かるし」


 ベアルにとって電気代は自身の魔力。人外にとって魔力は自身の根源。

 決してぞんざいに扱っていい問題ではないのだろう。

 沙多も真摯に知恵を絞る。


「みんな効率の良い『狩場』とか探してるよ?…っても、色んなギルドで取り合ってるけど」


 ギルドに入るメリットの一つが、金策の効率化だ。

 情報や場所を共有し、収益を得るプレイヤーは多い。


「既に『えねみぃ』とやらは全て屠っているぞ?」

「また掲示板が荒れてんのってベルのせい………あ、報酬品(ドロップアイテム)も拾って」


 休息の必要がないプレイ時間と、一撃での粉砕による圧倒的な効率。

 今もなお荒野を歩き、この話題を広げる間にも、出会った敵をワンパンして回るベアル。

 余談だが、インベントリ操作の練習も兼ねている。

 

「――後は大会とかに出るとか?プレイヤーが集まって、色んな勝負したりするんよ」

「フム、闘技の場か」

「ちなみにそういうの開催してんのが"バトル"系譜のギルドね。ほんと戦闘狂ばっか」


 数十体の鹿らしきエネミーを泡沫にする中で、次に上げる候補は賞金狙い。

 物好きは意外と多いようで、参加する人も、出資する人も一定数いると言う。

 

――――――

――――

――


「じゃあ後はよろ」


 やんわりと手を振る沙多。

 その先には群青の髪にツーブロックを持つ青年。

 職種は【聖騎士】だ。


「なんでや」


 大盾を装備した彼こと菅原 純貴(すがわら じゅんき)は、言葉訛りのまま問い返す。

 その顔は無感情。事態を咀嚼できていない。

 条件反射で、言葉だけは出た様子だ。

 

「別にいいじゃん。迷惑かけないって」

「そういう話ちゃうて、一体どういう風の吹き回しで――」


 菅原からすればあまりに説明不足。

 DMが届いたと思えばフラッと現れ、開始数秒でこのやり取りだった。


「――(あん)ちゃんを預かる事になんねや」


少しだけ一、二話完結の短い話が続きます。

日常回の練習したがってるぞコイツ

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