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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
五章.遊戯のまにまに編

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2.重なる奇々に【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「うん、これでおっけー!」

 

 沙多は再セットしたVR機器を見下ろす。

 ベアルの居住へと転移し、寂れたボロ屋には不釣り合いな最新ゲーム機があった。


「感謝するぞ、妹君よ」

「同じやつ買ったから楽だったけどね」


 結局、購入したのは所有していたのと全く同じ型番。

 これならば、操作の負担は増えないだろうという考えもあった。


「まあ、魔力の問題は変わってないけどね」


 逆に言えば、仕様も変わらない。

 魔力を変換し、直接電力を賄うという問題は据え置き。

 コンセントにも繋がっていないVRを俯瞰する沙多。 


「それについては見当がある。して、ウヌには再びこれを預けよう」

「あっ、そういえば前もらったやつ壊しちゃったの。ガチでごめん!」

「構わぬ。故に預けるのだ」

 

 渡されたのは、悪魔の髪飾りとして使われる水晶。

 山吹色から毛先が深緑へグラデーションする髪を七つに分け、束ねる内の一つ。


 魔力こそが人外の根源。

 つまり、命の一部を託したと言っても過言ではない。

 それを悪魔は何の躊躇いもなく渡した。


「これには魔力を強く注いだ。ウヌの所在も、世界を変えたとて知覚可能であろう」 

「もはやGPS…束縛エグめの彼氏みたくなってる…」

「じーぴーえす?」


 思うところもあるが、また異世界を彷徨うよりはマシかと受け取る沙多。


「とりま、しばらくアタシはゲーム無理かな。休んだ埋め合わせとかあるし」

「フム、ならば吾一人で『ろぐいん』しよう」

「…ガチでしんっちょ~に使ってよ?地味に高いんだからソレ」


 しばらくは、無作為にレアエネミー探しを始めるのだろう。

 また砂漠でコンタクトを拾うような、効率も当てもない探索が待っている。

 

「ねえ、ル・シファルを探す手がかりとか、ベルは持ってないの?」

「指標は持ち得ぬ」


 故に近道を尋ねるも、ベアルとて心当たりは無い。

 他に何か有用な情報を持っていそうなのは、直に異世界に触れた陽太郎。

 だが彼はもういない。故人ではないが。


 やはり地道に可能性を辿るしかないらしい。


「ル・シファル様は前触れもなく、吾を置いて消えた故にな」 


 ヘッドギアをカポっと被る悪魔。

 それを口にした表情は、沙多には見えなかった。

 しかしゲームを起動する直前、彼はふと言葉を思い出す。


「直前にル・シファル様は、自らを"憎い"と口にしていたな」


 次には完全にログイン。意識を電子世界の向こうへ飛ばす。

 プレイ時に着席、または仰向けが推奨されるVRで、またしても仁王立ち。

 直立不動のままゲームに没頭し始めた。


「…なんそれ?」


 答える者は居ない。

 排熱のファンが唸り、ランプがピコピコと光るだけ。

 廃屋には滑稽のゲーミングカラーだった。


***


「やば、傷開いてきた」


 徒歩で山を降り、線路がある麓までやってきた沙多は、回復薬(ポーション)をゴクゴクと飲み干す。

 既に一度は回復済みだった。

 だが効果が低く、即効性も無い安物を使ったせいか、じんわりと皮膚に血が滲みだす。


 そうして電車を待つまでの時間に、二度目の回復。

 ゆっくりと傷が完治する頃には到着のアラームが響き、乗車した。


(けどなんでバレたかなぁ)


 電車内は満席でないが、乗客はそこそこ。

 綺麗に戻った自身の肌を見つめ、呆然と席に座る沙多。頭の中は謎で溢れている。


――特に、宗仁(シュウト)に現実で出会ったという事実が悩ましい。

 

 沙多は現実と『ルシフェル・オンライン』で姿を使い分けている。

 ゲームでは紫紺(インナーカラー)が目立つハーフアップの髪型。

 現実では、桃色をストレートに両肩へ下ろした髪型。


 顔そのものは変えられない。が、ガラッと雰囲気が変わるという自負があった。

 それらは身バレ防止のための策で、実際バレたことはない。

 しかし彼はそれを見破った。


(ちゃんと見た目変えてんのに…)

 

 クルクルと桃の髪を指で巻き、唸る沙多。

――しかし、やけに寄せられる視線に、思考は中断された。

 今日何度目か分からない、妙な注目だ。


(服に何か付いてる?)


 まるで珍しい何かを見るような目。

 だが自身の格好を見下ろせば――その理由が分かった。

 

(あれ、アタシ――)


 それは制服でも、出かけるときの私服でもない。

 最近ずっと着用していたが為、もはや違和感が無くなった衣服。


「――なしてこの服来てんの?」


 それは修道(シスター)服。


 黒を基調に白が混ざり、裾は動きやすいよう自身でカスタマイズした服。

――つまりゲームの服装。


 理解不能。その一言で頭が埋め尽くされる。

 むしろ「いつも通りじゃん」とすら一瞬思えてしまった。

 だが、徐々に奇妙な点が浮上する。


(待って、普通にスキルとかインベントリ…使ってた?)


 襲われた際、杖を取り出して応戦。

 怪我をしても、回復薬(ポーション)を取り出し回復。

 時刻を見たスマホも、購入したVR機器も、インベントリに収納し、片手で悠々とシェイクを飲んでいた。


(じゃあ…)


 それはゲームだけの機能だ。

 いや、そもそも前提がおかしい。


 沙多は転移の直前まで、『ルシフェル・オンライン』をプレイしていた。

 ゲームでの最後の記憶は、"タマモ"ギルド。

 そこで得た天恵が、異世界へやって来た原因。


 しかし、帰ってきたのは――ベアルの家。


「なんでリアルの方にいんの?」


 その疑問も、やはり答える者は居なかった。

 レールを進む車輪が、踏切を通過する振動が、無機質にゴトゴト響く。 


***


「沙多っちどこいってたん?」

「返信なくて寂しすぎな」


 翌日、学校へ向かえば友人たちから問いの嵐。


「ガチでごめ~ん、めちゃ忙しくて死んでた」


 机に腰かける沙多は鞄を置く。


「てか聞いて。バイトさ、クビんなったんだけど。ヤバくない?」

「えぐ、何やらかしたのよ沙多は」

「一週間近く無断欠勤した」

「それはクビで草」


 やがて鳴るチャイムの音。

 談笑すれば経つ時間も早く、学業に励む時間が訪れる。


「…あれ、アタシの席なんか変じゃね?」


 教師を待つ間に、プリント類を確認。

 しかし机の中が、沙多の記憶と少々違った。

 教科書の類はやけに整頓され、手鏡といった小道具も存在しない。


「そいや沙多っち居ない間に席替えしたよ」

「マ?」


 しれっと友人から知らされる情報。

 となれば、誰かを席を占拠し、十分近く喋っていた事になる。

 相手からすればいい迷惑だろう。


「アタシの席ないなった…」

「あるから、あっち」


 指された先には確かに空席が一つ。荷物をまとめ移動する。

 占拠されていた席には、男子生徒がスチャっと着席した。


――――――

――――

――


「…アタシの知らん間に世界が変わってるなぁ」


 一限目、二限目と続く授業。

 聞かされる内容はもはや未知の領域だ。

 一週間の差は重く、ついていけない。

 板書すら億劫でままならない。まあ、元からではあるが。


(後で課題とか写させてもらお)


 教師の目を盗み見てスマホを触る。

 画面には『ルシフェル・オンライン』と打った文字。

 だがやはり、検索しても件数はゼロ。言葉が似ただけのゲームや漫画がヒットする。


(アタシっていま、どういう状態なんだろ)


 何故か現実でもインベントリやスキルを扱える。

 この意味がまるで分からない。

 ならば今ログインしたら、ゲームの中の自分がどうなっているのかという疑問もあった。


(決めた、しばらくはガッツリやろ)


 欠いた日数の埋め合わせが激しく、しばらく触れていないVR。

 幸い、あと少しで長い休みが待っている。

 バイトもクビになった今、全ての時間をゲームに注ぎ込むと決心。スマホを消し、黒板を見上げる。


「それで夏休み前の期末テストだが…」

「…やばい、ガチで詰んだ」 


 しかしここでゲームオーバーだ。


一般人からはコスプレイヤーと思われていた模様。


今さらですが、序章リメイクで新しい番外編を一話分差し込んであります。

時空を跨いだ話ですが、興味ある方は遡ってみてください。

ほんとに今さらな報告だな

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