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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
幕間

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85/109

ex.○○さん【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「――なあ、現実のプレイヤーとリンクしてねえかッ?」

「…どうしたんだ、急に」


 俺は様子を伺うので精一杯。

 威勢よく、大発見と言わんばかりに、そいつは飛び込んできた。

 

 伸び始めた亜麻色の髪。鈍色と黄土色の革鎧を揺らしながら扉を破る。

 いい加減に髪を切れと言い始めたが、「まだ大丈夫」と、そいつはゲームの世界に熱中する。


「プレイヤー現在地…つまり住所を記録してたら、絵みたいなのが浮かんできたんだよ!」


 権限がない限り入れない団長室、そこの本棚から一つの書物を取り出した。

 テーブルに広げ、バラバラと捲れば、窓から陽光が字面を照らす。


「点描みたいな感じなんだっ、住所の地点をこうポツポツ打ってけば…ほら!」

「確かに…何らかの紋様…"古代言語"らしき箇所もあるが…」


 埃っぽい部屋の中、インクの匂いが混ざる空間に、確かな熱気が生まれる。

 だが情報として未確定。

 懸念や疑念は山ほどある。それに――


「――公表できないだろ。個人情報を参照した一説なんて」

「…まあな、参照されたプレイヤーの反感もあるし、ギルドとしての信頼も落ちる」

「配信は?まさか今ライブ中じゃないだろうな」

「安心しろ、ここ最近はやってない」


 そいつが手に持つ書物は、ギルドを運営する過程で保管された個人情報。

 情報屋として渡り歩き、仲介に掲示板を使えば、手に入ってしまう機密だ。


「だから俺らだけの秘密な、いいだろ?『ルシフェル・オンライン』の何か重要な意味がある気がするんだ」

「…はあ、また調子の良いことを」


 いつもそうだった、楽しげに笑って俺を引っ張り出す。このゲームすら、始めた起因はお前にあるんだぞ。

 そして今回も断れなかった。

 椅子を引く手が、自分でも上機嫌だと分かってしまう。


――この紋様は何だ?意味は分かっているのか?

――言葉じゃないのは確かだ。俺が()()()()


――ここは何を表している?古代言語でいいのか?

――ああ、"唄"…"ル"…"◆■"?駄目だ、文字が不完全だと天恵でも分からない。


――全ての住所を照らし合わせよう。手伝うぞ。

――サンキュ、俺がいま打ったのはここの範囲で…


 お互いが机に向かって数時間。

 広くもなく、狭くもない、二人で使うには丁度いい書斎。

 ランプがほどよく熱と明かりを届け、気付けば点描は終わっていた。


「…流石に全部は完成しねえか」

「完成度は四割ほどか?だが全貌は見えたぞ」


 それは円形に並べられた紋様と文字列。

 随所に欠けた箇所はあるものの、言い表すならば――


「――魔法陣、なのか?」

「ぱっと思いつくのはそれだな。…ってことはスキルか何かで発動するもんなのか…?」

「スキルに魔法陣のエフェクトがあるのは基本的に魔法職だ。これはどれかの(ジョブ)に該当する魔法陣の可能性もある」


 一つずつ仮説を立て、しらみ潰しに可能性を探る。

 とはいえ正体に迫るにはまだ遠い。

 数千人という情報からなる点。それでもなお、プレイヤーの居住情報が欲しくなるほど穴あきが多い。


「…待て、中心地はどこになっている?」


 だからこそ、やけに点が、住所が一つもない魔法陣の中心が気になった。

 

「何故こんなにも空白なんだ?ここは地図のどこだ」

「病院だよ、プレイヤーなんて居なくて当然だ」


 至極真っ当な意見。納得した。

 だが同時に、中心が病院であるという事実に違和感があった。

 俺は思わず眉をひそめる。


「何故そこが中心なんだ、理由や根拠が見いだせない」

「偶然じゃないのか?」

「そもそもこの周辺に、プレイヤーが密集しているのがおかしいだろう」


 非正規とはいえゲームなんだぞ?ネットを介して、プレイ人口は全国に散らばるはずだ。

 にも関わらず、知り得た住所は全て偏った地域。


「…確かに、プレイヤーの住所は全員この円の内側…。外には誰一人居ない」


 ハッと気付いて息を飲む。「何で気付かなかったんだ」と悔しさが混ざるそれに、俺はぶっきらぼうな笑みを返す。

 するとそいつは借りを返すように席を立った。


「俺はスキルの魔法陣に該当するものが無いか、手当たり次第に調べてくる。だから代理を頼む」

「…プレイヤーの情報をかき集める役目を押し付けてないか?」

「いいじゃんか、なら変わるか?」

「いや、面倒だ。俺がしばらくギルドを預かろう」

「だろ?」


 役割分担は決まった。

 しばらくは俺が団長(マスター)代理として活動を行う。

 結局やる事は情報収集。ギルドのスタンスとなんら変わりはない。

 とはいえ、長い目で見る必要があるだろう。

 目標を達成するには最低でも半年、ともすれば一年以上の歳月が必要に――

  

「――天恵は?これに使用してみるか?」


 だからこそ、最短距離で答えが拝める可能性に、ふと触れた。

 本来は情報交換のための手札。誰かに売り渡そうとしていた情報だ。

 

「一つだけ伏せていたレアエネミーがあっただろう?」

「…ありだな。あれって"微妙"だった奴だし」

「ああ、あの人面樹みたいなエネミーだ」


 実際にレアエネミーかは、撃破するまで分からない。

 事前に判断する材料は、エネミーの強さ、希少さ、異質さ。

 

 だが俺らが知るレアエネミーは、森林エリアにて遭遇したそれは、強敵では無かった。

 評価できるのは、未確認個体という希少性だけ。

 

「確かに取引で使うにも持て余すし…ここで使うか」


 逆に言えば、倒したとて得られる天恵。その"質"が悪い可能性が高い。

 あまり幅を利かせた願いは叶えられないだろう、という推測があった。

 ならば無理に手札とするより、個人で利益に繋げた方が波は立たない。


「そうと決めりゃ行ってくる!」

「俺も同行しよう」

「いやいいよ、一人で問題ない」


 強敵ではないとはいえ、腐ってもレアエネミー。死の危険性(リスク)はある。

 だがそいつは単騎(ソロ)で平然と挑むという。


「…お前が言うなら大丈夫か」


 それでも俺は、そいつの実力を信頼している。

 俺がゲームを始めた時点で既にトップ層。リリース後まもなく始めた古参組でもある。


「おう、俺が留守の間頼んだぜ?副団長(サブマスター)


 籠手を装備し、振り向く背中。

 準備運動とばかりに腕を回し、扉の取っ手に手を掛けた。

  

「なるべく早く帰って来い。俺も結果が気になる」


――それが、交わした最後の言葉だった。


全く異世界に関係ない奴のエピソードです。しかも"こっち?"って感じのキャラ。


そろそろ週2での投稿頻度を目指していこうと思います。

基本月曜に追加で上げます。

話のストック無くなったら週1に戻します。

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