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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
六章.竜鳥虎搏編

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1.巨影の甲【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「う~ん…」


 朦朧とする意識は、磯の匂いにて覚まされる。

 耳朶を打つはさざ波。まるで漂流したかのよう。そんな錯覚に、沙多は身を跳ね起こす。


「起きましたかぁ」

「うわ…寝起きに見たくない顔」


 傍には既に起床済みの新堂。

 あちこちをペタペタと触り、薬品(アイテム)を持ち出しては何かを検証していた。


 見渡せば、淡い色の岩盤や砂利の地面。周囲にはサンゴ礁らしき塊も生えている。


 ここは間違いなく、レアエネミーの体内。生物の腹の中だ。

 しかし海底にいるかのように神秘的で、だからこそ不気味だった。


「竜宮城みたい…」

「感傷に浸るのも結構。ですが()()は良いですかぁ?」

「…もう獲物狩り(ハンティング)、始まったって事でいいん?」

 

 コクリと頷く新堂。確かに食べられる直前、宣言があった。

 ならば悠長にはしていられない、既に他の参加者は行動を開始しているのだろう。


「ってもガチでどうすりゃいいの。(コア)が何処にあるのかも知らんし…」


 勝利条件(コア)がポツンと在るのか、隠れているのか、何らかの仕掛けを解けば出現するギミックのかも不明。

 

「加えてダンジョンの規模や構造、障害の全てが未知数です。……まあそれ込みで楽しめ、という事でしょうが」


 あまりに説明が不十分。"パラダイム"らしいと新堂は肩を竦める。


「僕らはダンジョンの実態を探る事から始めましょう。あれだけ居たプレイヤーが周囲に誰も居ない。つまり、狭い空間では無い」


 インベントリから試験管を備える新堂。 

 「回復よし、狂化剤よし、ゾンビ薬よし」と、レッグホルスターや白衣の裏地に差し込んでいく。


「その為の薬品(アイテム)は大量に用意しました。自決用の毒薬も足りていますね」

「…自決用?いっつもそんなの持ち歩いてるん?」

「情報が命のゲームなので、尋問を防ぐ為に服用するプレイヤーは多い。上級者(ベテラン)であればなおさらです」


 装備やアイテム、情報を抜き取られる前に服用する。無論、(カルマ)値が低いプレイヤーに限る話ではあるが。

 罰金(デスペナルティ)は生じるも損切として悪くないと、試験管を揺らす。

 

「…まあ、アタシも尋問受けそうになった時あるけどさぁ」


 思い出すのは"タマモ"ギルドの潜入時。捕らえられた記憶に、口をへの字に曲げた。


「それに今回も有用かもしれない。このダンジョン、深入りすれば脱出できない可能性だってあるんですよぉ?」


 いわば"詰み防止"。

 身動きが取れない状況に陥った際、時間の浪費を避ける手段にもなる。


「君にも何本か差し上げます」


 徳用パックのような試験管の詰め合わせ(アソートセット)。それを滅多に他者へ施さない彼が、しかも無料(タダ)で手渡した。


「珍しいじゃん、アンタが自分の(アイテム)くれるなんて」


 つまりそれだけ、本気でこの大会に臨んでいるという事だろう。

 呆気とられ目を丸くする沙多。緩やかな潮風が、紫紺髪のハーフアップを靡かせた。


***


「ここにある(コア)って、まだ誰も分かってないんよな?」

「貰った紙にはそう書いてあったよねっ」


 各々が行動を開始しはや十数分。菅原とベルタは資料を片手に並び歩く。

 二人は素直にレアエネミー本体を探す算段らしい。


 周辺には同じく淡い色の岩層と、サンゴ礁らしき破片。

 ただ、沙多たちとは遠く離れた位置なのか、色彩が異なる。


「だからどんな形なのか想像しなきゃ……ってあ!居た居た!」

「ベアルの(あん)ちゃん、デカくて分かりやすいわ」


 やがて発見した影は、見慣れた巨躯と灰赤色のシルエット。

 ただし新調した野武士のような装いは、やはり目新しい。それは既にスタート時点で合流していたベアルだった。

 

「ム、ウヌらか」

「ただいま!やっぱり全然人と会わないや」

「逆にパーティなら、まとまって転送されとるっぽいな」

 

 三人がここに集ったのは運ではなく、同じチームだから。

 メンバーの申請時、悪魔は菅原らの陣営として登録されている。その概念を、レアエネミーひいてはダンジョンが読み取ったようだ。


 悍ましい巨大亀であったが「融通を効かせてくれるあたりゲームらしい」と、体内からその姿を仰ぐ菅原。


「それで、あんちゃんはどうする?もう大会は始まってるらしいよっ?」 


 この競技、プレイスタイルは様々だ。

 フィールドを調べる者、ダンジョンの(コア)を探す者、妨害を企てる者。


 では悪魔の場合、何を優先として立ち回るのか?

 ベルタは首を傾げて答えを待つ。

 

「――ならば屠ってよいのだなッ?」


 刹那、魔力が流動した。

 悪魔の形――人間の輪郭が崩れ、全身が崩壊。黒い霧のような姿に分散する。


「「…えっ」」


 菅原とベルタは呆気とられる事しか許されなかった。

 まるで蠅が群がるように宙へ浮遊。

 その一つ一つの粒子から、恐ろしいほど魔力を秘めた破壊力が漏れ出し――


「――【辰星(しんせい)()とし】ッ!」

 

 連鎖的に、地面へ向かって次々と降下。

 まるで流星群だった。偽の空から、広範囲に黒点が降り注ぐ。


 やがてそれらは無差別に着弾し――爆ぜた。

 

 轟音に思わず耳を塞ぐ菅原とベルタ。だが両手を貫通してなお鳴り響く。

 ズドドドッと絶え間なく大地を打ち続け、一粒一粒から超新星爆発(スーパーノヴァ)を彷彿とさせる衝撃。

 それらが十数秒、このダンジョンを襲った。


「ぁぐ…ォ…ッ」


 無論、傍にいた二人は無事ではない。

 極僅かな余波だけで吹き飛び、聴覚と視覚がやられていた。


「死…死んじゃう……【カバーディア】…!」


 すぐさま己と菅原に、指で作るシャッターをカシャリと降ろすベルタ。

 鹿型エネミーから模写(コピー)した状態異常回復(リフレッシュ)。前日、服の汚れも落として見せた技だった。


「やはり魔力は以前よりも減らぬかッ。ならば幾度とこれを撃ち放って――」

「――アカンッ、それ禁止や禁止!!」


 一方でこれを連発しようと息巻く悪魔。血眼で菅原は止める。

 回復が少しでも遅れていたら、ストッパーが居なくなり悲劇が起こっていただろう。


「絨毯爆撃みたいな(それ)、被害がデカすぎるわ!」

「しかしこの場は『れあえねみぃ』の胎の中と聞いたぞ?」


 悪魔が見据える先は、惨状甚だしい爆撃の跡地。

 青く澄んだ地殻は割れて渓谷のように。周囲には何も残らない凸凹の空間。煙と焦げ臭さが充満していた。


「ならば最もこれが早かろう。核とやらを探す手間もあるまい」

(コア)関係なしにゴリ押すつもりやんけ…」


 本大会の趣旨は、どこかに存在しているであろうレアエネミーの弱点を探し、討伐を競うもの。

 だからこそ調査、探索、妨害と各々の行動は分かれる。


 しかしベアルは、どれでもない"破壊"を選ぶ。

 盤上をひっくり返すが如き、悪魔にしか許されない無法の一手だ。


「でも効いているのかな?今の――」


――その瞬間、空間全体が揺れた。

 船の汽笛のように重低な、盛大な音を響かせて。


「…あれ、なんか地面傾いてない?」

「いやちゃう!これ……ッ」


 それは巨大亀(レアエネミー)の咆哮だった。

 そして巨大亀(ダンジョン)は――形を変える。


「――外でレアエネミーが暴れとる!」


 不安定に震撼する台地。ガラガラとせり上がる一帯。

 やがて立っていられないほど勾配が激しく傾けば――

 

――おもちゃの箱を倒すように、九十度。パタンとひっくり返る。

 

「ちょっ…これホンマにアカン……!」


 当然、箱がひっくり返ったならば、中に入っているオモチャは大惨事だ。

 床だった面が壁に、壁だった面が床と変化。

 菅原達は重力の影響を受け、宙へ放り投げられた。 

 

――果たしてベアルの攻撃はダメージを与えたのか?


 そんな疑問をダンジョン自らが答えた。

 身を捩るように、痛みで暴れた自転。これ以上明らかな事実はない。


「死ぬ!ほんとに死んじゃうゥゥ!!」


 なまじ広大なフィールドだ。

 かつて壁だった境界、今まさに床になろうとしている受け皿は遥か先。

 トドメに岩石やサンゴ礁らしき塊も、頭上から雪崩の如く降り注ぐ。


「やっぱ禁止や!その技ァァァァ!」


 文字通りの天変地異。数百メートルはくだらない落下劇を演じ、悲鳴がこだました。


書いてる途中でゼ〇ダの伝説のブ〇ワイにこんなダンジョンあったなぁ、って思いながら書いてた。

そろそろ書き溜めのストックがマズイ。週一投稿に戻りそう。焦ろ

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