ナルちゃんは邁進中
ナルちゃんの一日は鏡の前に立つ事から始まる。ナルちゃんがナルシストであるが為の行動であった。
鏡に写る自分を眺め、悦に入った表情になる。しかし、彼女はあくまで平凡顔だ。
「あぁ・・・今日も綺麗」
もう一度言おう。彼女はあくまで平凡顔だ。
だが、彼女は自身の顔を何よりも美しいと思っている。周囲には理解出来ない感覚を持っているのだろうか。
「今日の私も最高・・・いってきます」
にっこり笑った彼女はそれでも平凡である。
ルンルンとスキップをしながらナルちゃんは学校へと向かう。ただし、スキップは何処かが変だ。本人は気にしていないというか、気付いていないが。
そして、上機嫌に鼻歌を歌っている。その鼻歌も何処かが変である。はっきり言うと、音痴。
だが、ナルちゃんはそんな事を気にする子では無い。幾ら変だろうが、彼女にとっては自分が正しいのだ。
楽しげに登校するナルちゃんである。
「今日も最高ですわ」
ナルちゃんを見守る影がいた。ナルちゃんはその存在に気付かないが、周囲は知っている。彼女だけは怒らせてはならない事を熟知させられたのだから。
かつて、ナルちゃんはその性格によって周囲から浮いていた。いや、現在も浮いてはいるのだが。
ナルちゃんの奇天烈さに堪え切れず、周囲は彼女をいじめたのである。ナルちゃん自身は気付かなかったが。
その事に気付いたナルちゃんを寵愛している彼女。そんな彼女がそれを許す筈が無かった。彼女は報復をしたのだ。報復を受けた者は言った。
『思い出したくない』
『口にするのも恐ろしい』
そんな彼女に守られながら、ナルちゃんは今日も邁進中である。