0%を0.00001%に
シアの体から体温が失われていく。
俺はボロボロになった彼女の手を掴んで何もできずに泣くばかりだった。
出会って間もない女の子なのに、胸が張り裂けそうで、心の奥底からどうしようもない怒りが込み上げてくる。
その時何故か、白い人の言葉が記憶の中で木霊した……。
「スキルとは願いの力であり、いずれ君の“在り方”そのものになる。セーダイ君が強く強く願うのならば、0%を0.00001%にすることだって不可能じゃない」
『聖鎧を譲渡――』
シアは事切れる寸前、俺の頬に触れてそう言った気がした……。
ステナビからあの音声が響く。
『譲渡を受諾』
「なんだ……?」
ステナビをポケットから取り出す。
『これより、聖鎧制御のためステラナビゲーションをトレース最適化します。スキャニングを開始……アビオニクス、アップデート』
0%――。
0.00001%――。
0.00101%――。
0.01001%――。
――――――……。
――――――…………。
――――――………………。
『可能性境界の確率限界を突破しました――』
次の瞬間、黒煙に覆われていた空が割れ、光の中、荘厳な装飾に彩られてた巨大な七つの門が出現する。その大きさは扉一つでブラックドラゴン全長に匹敵した。
都市の全ての人々が空を見上げていた。
ブラックドラゴンでさえも、その超常の現象に心を奪われ、巨大な眼に焼き付けているようだった。
遠くそびえ立つ摩天楼のベランダから高貴な身なりをした女性が身を乗り出してその光景に目を見開く。
「あれは……ッ!? ……誰か、誰か説明を!」
隣に立ち、モニターを操作する文官らしき男性が驚嘆しながら告げる。
「観測不能……。電磁波、重力波、魔力観測計、全て振り切れています……」
「何が起きている……」
ジェイラスは呟いた言葉はネオルミナスシティ全ての人間の代弁であったに違いない。
巨大な扉が開き、顕現したのは楽器を掲げた七体の天使を模した白亜の石像だった。
左から、ハープ。
ヴァイオリン。
ヴィオラ。
ホルン。
フルート。
チェロ。
コントラバス――。
『スキル“勝確BGM”発動――』
ネオルミナスシティ一帯を大音量の音楽が包み込む。
それはまるでセーダイの怒りと悲しみを描くようなメロディだった。
「神々の……顕現…………」
高貴な身なりをした女性が、そう呟いた。
周囲を見渡したジェイラスは目を見開いた、地上の一点から巨大な光の柱が空を貫くように立ち昇る。
「今度は何だ……!?」
『【聖鎧/ヴァルキリーメイル】を【勝利武装/オーバーライド】へコンバート。全てのステータスを勝利武装Lv.1の限界値まで強制上昇させます――』
セーダイ・バツマル
称号:ヒーロー(異世界転生者)
HP 16(+10000)
MP 0
力 3(+10000)
守り 2(+10000)
速さ 4(+10000)
魔法 0
スキル:勝確BGM
習得:勝利武装Lv.1
『勝利武装≪光輪の調べ/エンジェルラダー≫展開、半径百メートル以内の味方ユニットを全回復――』
七体の白亜の天使像の内、フルートとチェロの石像が優美な旋律を奏でる。
「傷が……癒えていく……」
長身の教師はその身に受けた傷が光となって消えていくのを見た。
光の中でシアは目撃した。
自分が体が再生されていく瞬間を――。
立ち上がったセーダイの体が生きた金属によって覆われて行く様を――。
「セーダイ……?」
セーダイの姿はまるでアニメから飛び出した、ヒーローのように力強くシアの眼には映った。
白銀に輝くその姿は余りに機械的で洗練された姿だった。
セーダイの身長は151cm、しかし、白銀の機械騎士は2Mはあろうかという雄々しき姿だった。
上空からジェイラスが聖剣の柄をギリギリと握り締めた。
「聖鎧を取り込んだだと!? 私の聖鎧を、ゴミの分際で――ッッ!」
セーダイの体を覆う金属は、最後にその怒りの表情を包み込むようにしてバイザーを形成し、装着を完了する。
「待ってろ、シア。アイツは俺が……ぶっとばすッ!!!」
そして、白銀の機械騎士の瞳が黄金に輝き瞬く――。




