顔がイケメンなら心もイケメンでいろ!
「ところで尋ねたいのだが、何故君は私の側室候補と一緒にいるのかな?」
側室!? それお妾さんってコトォ!?
……あれ、側室とお妾さんって同じものだっけ?
いやいやいや、問題はそこじゃない……!
俺が驚いて何も言い返せないでいると、金髪イケメン……ジェイラスはシアに暗い視線を落とした。
「まぁ、ここを卒業するまでは好きにしたらいいさ。けど、分かっているねシア。僕の機嫌を損ねれば君の家は立ち行かなくなるのだということを」
「……はい」
シアは寂しそうに頷く。
ジェイラスはどこか満足した様子で嗤っていた。
何でも持ってそうな癖に、どうしてそういう態度ができるんだよ。
顔がイケメンなら心もイケメンでいろ!
俺を助けようとしたシアとは雲泥の差だな。
居てもたってもいられず、何でもいいから言い返そうとジェイラスの背中に向かって口を開いた、その時だった――。
けたたましいアラート音が鳴り響き、大きな黒板ディスプレイに赤文字が表示される。
警告――。
スコープ1 カテゴリー3 発生予兆アリ――。
それは魔物の襲来予測だった。
スコープとは発生範囲、カテゴリーとは災害規模を意味する言葉だ。
ジェイラスは「チッ」っと舌打ちをする。
シアは突然のことに動揺している俺の手を取り、教室の入り口に走る。
「シア、チャンスじゃないか。そろそろ功績の一つでも上げたらどうだ? そっちのナントカ君もシアと仲が良いのだろう? 手伝ってあげたらどうだい?」
ジェイラスの嗤った表情は酷く醜いものに見えた。
「――戦う。でも彼ダメ。まだ訓練を受けていない、から」
「フンッ、何故こんな女に≪聖鎧≫が渡ったのか……」
「行こう、セーダイ」
俺は流されるまま、彼女に連れられて教室を去った――。
「ここはシェルター。意味はわかる?」
俺はシアに連れられて、学院の外にある扉の前に立っていた。
「わ、わかるけど……」
突然、ゴーンと巨大な鐘が打ち鳴らされたような音がして、続いて、空気を揺さぶる衝撃波が俺たちを襲う。
学院の外にある街から火の手が上がったのが見えた。
「結界に穴が開いた……」
炎交じりの煙が立ち上る上空から、大きな翼を揺らして、赤黒いドラゴンが街に降り立つ。
「なんだよ、あれ……」
俺の目がイカれていないのなら、その全長は優に三十メートルはある。
「あれが、魔物……なのか……」
何が魔物だ……、何がファンタジーだ……。
あんなものは破滅そのものじゃないか。
「セーダイはここにいて。ここに居れば助かる。今度はちゃんと守るから……」
シアが笑っていた。けれど、泣いているようにも見えた。
『聖鎧――』
彼女が短くそう呟くと光が溢れて、俺は両腕で顔を覆った。
光が収まると、彼女は輝く白い鎧を身に纏っていた。
そして、彼女の背中越しに、空を駆けていく鎧姿の生徒たち。
「バイバイ……」
俺が周囲の状況に気を取られている間に、シアは一言を残して飛び立ってしまった。
「……クソッ!」
俺は走り出す――。
大人しくしていろと言われて大人しくしていられるほど、大人じゃない。
俺は何もできない自分への苛立ちに突き動かされるまま、シアの寂しい笑顔を追い駆けた……。




