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最強スキル【勝確BGM】で異世界ヒーローしますッ!  作者: かんでんち
第四話 ルミナスパレスリゾート編 1
23/34

アーカイブ:魔力運命論

 俺に宛がわれた部屋でシアも招いてロミのレクチャーを受けることにした。


「最初に二人に尋ねたい。魔力とは何だと思う?」


「えっと、授業で“魔力はこの世界に満ちた未発見の元素である”って習ったよ」


「俺はその授業を受けてないけど、確かに納得できる話だな。前の世界の漫画とかラノベでは定番の設定だったし」


「オーケー。いいだろう。科学者は未知へ挑むとき、まず解き明かしたいそれが何であるかを定義することから始める。曖昧なものを、曖昧なままを探ろうとしても、答えは出せないからな。必要なセオリーだ。それでは、本題に入ろう――」


 ロミはこういう時、自然と大人びた口調になる。普段は存分に子供をやっているだけに、頭の中に人格スイッチでもあるのかと思ってしまう。


 まるで探偵のようにその場を行ったり来たりしながらロミは話し出した。サスペンス的なBGMでも聴こえて来そうな雰囲気だ。


「まずは何故お前に魔力が必要なのかということを話そうと思う。最大にして唯一の理由はお前の【勝確BGM】及び、それを体現する勝利武装は本来、魔力とMPによって動作するものだからだ。おそらくどちらも完全に0の状態では【勝確BGM】そのものが起動しないのではないかと私は考える」


「いや、俺、魔力もMPも0なんだが……」


 シアは念の為と、魔眼で俺のスタータスを確認したのか、俺の顔を見て頷く。


「まぁ慌てるな。たしかにステータスには魔力とMPという表記がある。この二つは電圧と電流の関係によく似ているな。魔力=電圧、MP=電流って感じだ。あくまでステータスの中での役割の話だがな。パパに直接尋ねてみたが、MPについては魔力のあるなしに関わらず、訓練で高められるもののようだ。氣とかオーラのようなものと考えると解り易いかもな」


 魔力を氣やオーラによって放出するってことか……。たしかに修行で上げられそうなイメージだ。

 

「ようするにドラ〇ンボールだな」


「え、ドラ〇ンボール……?」


「魔力も努力で上げられるみたいだが、生まれ持った才能で殆ど決まってしまうらしい。それでは次に、私が考える“魔力の性質”についての見解を話す。私が前世からスキルを所持していた、という話は覚えているな?」


「んと、ギフテッド……だっけ?」


「そうだ。私が転生するとき神様モドキは言った。あの世界には魔力がない、と――。だが、魔力の存在しない世界で私はギフテッドを使用していたのは間違いない。MP自体は持っていた可能性が高いが魔力が存在しない為、私は電圧に代るものとして自分の運命を代用してしまったのだろう」


「運命を代用……? 運命……。……なんだかそれ、違和感があるね」


「私もだ。例えば寿命であれば、物理的に肉体に作用するものとして理解できるのだが、私の人生を振り返ると、幸福や運命という言葉でしか説明ができなくなる」


「う~ん? え~~っとぉ……」


 早くもシアが頭に人差し指を当てて唸り始めた。


「私は行き詰った。そこで一旦、視点を変えることにした。魔力とは何かという考えを忘れて、魔力という言葉で納得できてしまう理由を考えた。運命という言葉では納得できないのに、何故か魔力という言葉でなら納得できてしまう。この違いはなんだろうと考えた」


「運命と魔力……。あぁ、そうか。魔力は粒子的なエネルギーってイメージがあるな。でも運命は……」


「いいぞ、セーダイ。その通りだ。『運命=魔力』なのだとすると、“魔力はこの世界に満ちた未発見の元素である”という仮説は、“運命はこの世界に満ちた未発見の元素である”と置き換えられなければならない。これが違和感の原因だ」


 い、イカン。ロミが頭よすぎて、またわからなくなってきた。

 重要なところだけ思い出して、考えをまとめよう。


 『運命=魔力』はロミの実体験に基づいた論説だ。しかしそれは、この世界の定説である“魔力はこの世界に満ちた未発見の元素である”という物理論を真っ向から否定するもの……だということか。


「よし、なんとか理解した」


 シアはベッドにぐて~っとなって動かない。もうダメみたいだ。


「けど、じゃあ、魔力の正体って一体何なんだよ? どうすれば俺はそれを引き出せるんだ?」


「引き出すだけなら簡単だ。願えばいい。魔力をくれ、MPをくれってな。おそらくこれまでも無意識にやっていたはずだ。セーダイの【勝確BGM】は、そのくらいいい加減で曖昧でチートだからな」


 無意識に……。0%を0.00001%に……。


「運命を元素とは言わないし、運命は概念であってエネルギーではない。だがもし、魔力の代わりに運命を消費してしまったというのなら、変換器(コンバーター)として機能した『何か』があったはずだ。そして、我々はそれを知っている」


「スキルは願いの力……」


 ふと、白い人の言葉を反芻していた。

 ロミは静かに目を閉じる。


「概念に過ぎない運命を動かせすただ一つの力……。つまり、この世界でも前の世界でも願いの力……意思力は魔力として変換可能な力あり、逆説的に……私は……■■■■■■■で、■■■■■■■■ということになる……」


「え、なに……? ゴメン、聞き取れ――」


『はい、ストーップ! そこまで~~』


 突然脳内に声が響いた。それは白い人の声だった――。




 パンっという両手を叩いたような音が聴こえて、俺とロミはあの場所にいた。


 周囲を見渡す。それぞれの目に同じ景色が映っているのかまでは分からないが、間違いなく転生したあの日訪れた校長室だった。


 ロミが見たこともない表情で校長の机に肘を付く白い人を睨みつけていた。


「何をしたんだ……。私たちは……用済みか……?」


 唐突にロミがぶっそうなことを言い出す。


『違う違う。ちょっと呼んだだけさ。直ぐに戻すからそんなおっかない顔しないでよ』


 相変わらずノリが軽い。

 しかし、どうやら死んでしまった訳ではなさそうで、ロミは怒った肩を下ろす。


『しかし、ロミ君。君はすごいな。まさか、正解に行きついちゃうなんてね』


「褒められても嬉しくないがな……」


「ロミ……? ……白い人。一体何の用で俺たちをここへ呼んだんだ?」


『有体に言えば、口止だ。ロミ君の記憶を一部封印させて貰おうと思って』


「記憶をって……。それは幾ら何でも横暴だろ」


『我々のためじゃないよ。ロミ君の為だ』


 ロミは俯いて黙っている。


「なぁ、どういうことだよ。俺にもわかるように説明してくれ」


『実はね、スキル枠使ってロミ君の前世だった女性は自らの記憶の一部を消したんだ。けれど、ロミ君は魔力の正体を探る過程で、その可能性に行きついてしまった……』


「……何か、嫌な記憶……だったとか?」


「答えはいつだってシンプルだ……。私はスキルを持っていたから不幸になったんじゃない。私はスキルの存在に気付いて、多分、自らの意思で使ったんだ。両親を、追い込んで……」


「――っ!」


「その結論に至った時も、『私なら有り得る』って思った」


『セーダイ君とは違い、今の君は転生して生まれ変わった、記憶を引き継いではいるけど別の人間なんだよ。責任を感じる必要はない』


「昨日今日気付いたことじゃないし、わかっているつもりだ。他人事のように感じている部分だってある。でも……本当になかったことにしていいのかと、ふと考えることは……ある」


「ロミ……」

 

『今の君は小さな女の子だ。向き合い続ければ心に負担が掛かってしまう。ロミ君、再度一部の記憶を封印することに同意してくれるね……?』


 ロミは目を閉じて、何故か数字を数え始めた。


「6……5、4……3……2、1……。……。……あぁ、頼むよ」




『――。さ、これでいい』


 俺には何も起きていないように見えたが、強張っていたロミの体からふと力が抜けたのはわかった。


『そうだ、せっかく呼んだのだし、セーダイ君。君にご褒美を与えよう』


「ご褒美……? 俺に?」


『言ったろ? 成果を出したと判断されれば、どんな願いだって叶えてあげられるって。まぁ、今回はちょっとイレギュラーだからね。本当に何でもとはいかないけど……魔力なんてどうだい?』


「魔力か……それってスキル枠を消費したりするのか?」


『いいや。これは真理へと至ったロミ君と、その礎となる力を得たセーダイ君へのご褒美だからね。サービスだ』


「なんだ、神様モドキ。一つだけか? ブラックドラゴンとか結界とかは? そもそも私とセーダイの二人なんだから、二つなんじゃないのか?」


 少し元気になったロミに合わせるように、白い人はどこかおどけたような声色で話を続ける。


『たしかに。ならばそこは魔力値への還元ということで、少し多めに盛ってあげるよ。後は……そうだな。例えば、セーダイ君の打ち止めだった身長を伸ばすとか……』


「打ち止め!? 嘘でしょ!? あ、いや……俺は魔力を貰うんだし……」


『ロミ君のパパさんも、鍛え甲斐があるんじゃないかなぁ』


 ロミの顔を見ると、ハッとした表情を浮かべている。


「いいかもな! 身長が伸びればパパのトレーニングの成果が一層高まる! パパは常々言っているぞ! 筋肉は全てを解決するってな!」


『ダロォ~? セーダイ君は根性だけはあるからね。あ、でも、急に伸ばすと皆がびっくりしちゃうだろうから、頃合いを見て実行するってことで』


 ロミが満面の笑みでうんうんと首を振っている。

 ちょっと待って、なんか誘導されてない……?


「ちょ、タイム! 今のやっぱり、な――」



 俺が慌てて取り消しを要求しようとした瞬間、キーンという耳鳴りと共に光に包まれて、瞳が眩しさになれると、俺とロミはホテルの部屋に戻ってきていた――。


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