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最強スキル【勝確BGM】で異世界ヒーローしますッ!  作者: かんでんち
第四話 ルミナスパレスリゾート編 1
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俺は悪くない世界が悪い

 エルクシア学院の駐車場に4台のチャーターバスが並ぶ。俺とシアは寮で待ち合わせをして、集合時間10分前に駐車場に到着した。生徒たちは幾人かの塊になってバカンスへの期待感に会話を弾ませている。そんな中で一際目立つ集団が俺とシアを見つけて手を振った。


「おーい、セーダイ君、こっちこっち~!」


 メンツはエルクシア学院の生徒会室長のエリア先輩。俺たちに手を振った新聞部の部長のレニー先輩。それから金髪縦ロール巨乳お嬢様のポーリーン先輩。そして……、誰?

 いつもの集団と思いきや、一人見慣れないビン底眼鏡のピンク髪の女の子が混じっている。


「おはようございます。あの……そちらの――」


 言いかけて、ポーリーン先輩に抱っこされていた長靴猫が俺の顔に飛びついてきた。


「ご主人~~! 逢いたかったニャーー!」


 顔に貼りついて噴水のような涙を流すダルニャニニャンこと長靴猫の首根っこを掴んで引き剥がし、シアの腕の中に置いた。


 『吾輩が悪かったニャ、もうお家帰るニャ』とか言っていて、相当過酷な目に遭ったようだ。


「酷い事なんて一つもしておりませんわ。それはもう最上級のおもてなしでしたのよ?」


 隣でちょっと幼児退行している長靴猫を母親のような顔でシアがあやしている。エリア先輩はタイミングよく見慣れないビン底眼鏡のピンク髪でおさげの女の子を俺に紹介した。


「こちら生徒会長のラヴィ・ルア・テンプル様です」


「生徒会長さん……? てっきりエリア先輩が生徒会長なんだとばかり」


「よく誤解されるんです。生徒会室長は生徒会役員のまとめ役。生徒会長は学院全ての生徒たちのまとめ役、そのように覚えておいていただければ」


 丁寧に説明してくれるエリア先輩の横で生徒会長・ラヴィ先輩はニコニコしている。大きなビン底眼鏡で表情が今一つわからないのだが。


 ラヴィ……ラヴィか……。王女様の名前がラヴィニア様だったな。口元は似ている気がするが、そこまでよく見ていない。髪の色は異なるが、そんなの幾らでも変える方法はありそう。ただ、身長はかなり違う。多分、ラヴィニア様より10cmくらい小さく、俺より小さい。もしかしてヒールを履いていた……とか?


 俺が訝しんで見ていることに気付いたのだろう。少しだけ動揺した声でエリア先輩は話を続けた。


「ら、ラヴィ様はとてもお忙しい方で、今回も不参加だと思っていましたが……」


 するとラヴィ先輩がエリア先輩にそっと耳打ちをした。


「あぁ、なるほど。ええと、セーダイ君に会えるのを楽しみにしていました。今日はここにいるメンバー全員、同じ班なのでよろしくお願いします……だそうです」


 どこからツッコんでいいのかわからない。


「えーっと……、そういうのって普通クラスの中からグループが決まるものなんじゃ」


 一応俺の中のインストールされた常識を探ってみたが、こんな取って付けたような采配はやはり不自然なもののようだ。


 するとまた、ラヴィ先輩はエリア先輩に代返させる。


「問題ありません。生徒会長権限でどうにでもなる……とのことです」


 どこに問題がないの、散らばってるでしょ、方々に。


 集合時間が近づくころ、シアが辺りをキョロキョロと見回し始めた。


「どうした、シア?」


「うーん、ロミちゃんやっぱり来られないのかなって」


 そう言えば、そうだった。ロミがいないとシアのBクラス入りが決まってしまう。


 ラヴィ先輩は不安そうにするシアを見て疑問を抱いたようだった。エリア先輩がすかさず代返。


「どうされましたか……と、仰っています」


 生徒会室長って絶対、ラヴィ先輩の為に後からできた役職だろ……。


 シアは説明するべきか迷った様子だったが、ラヴィ先輩は『何でも言ってほしい』といことを代返させて、シアが抱える問題を聞き出した。すると、妙なことが起こった。ラヴィ先輩がステナビを取り出し、どこかに通話し始めたのだ。そして、集合時間から遅れること20分。なんとロミが現れた。


「もう諦めてたぞ。そしたら急にパパが連れて行くって言い出して」


 先生たちに遅れてしまったことを謝罪しているグラハム先生はどこかやつれて見えた。


 これラヴィ先輩がなんかしたんだよね……。




 俺たちの乗車したバスは、無人運転で最早予想通りというか、先ほどのメンバー意外乗車していなかった。というかもう最初から仕組まれていたかのように座席が長方形のコの字型だ。


「ええ!? この子、グラハム先生の娘さんなの!?」


 ロミを紹介をすると、まずレニー先輩が驚ていみせた。先日俺も似たような反応をしたな。


「ふふふ、ロミ・マッコーキンデールだ! よろしく! 好きなものは仮面ヒーロー・ショウだ!」


 何故かエリア先輩がちょっと危ない目になってワナワナ震えている。


「か、可愛い……。尊い……」


 ん……? 今、なにか不穏なワードが……。


「ところで、俺たち特別待遇過ぎませんか? なんか作為的なものを感じるんですが」


「まぁ、いいんじゃない? だってこの合宿……もといバカンス自体、セーダイ君のためのものだし」


「はぁ――!?」


 レニー先輩の唐突なカミングアウトに、ケツが椅子から浮いた。エリア先輩がロミにオレンジジュースを与えながら、ヤレヤレという顔をする。


「レニー、どうして暴露してしまうのですか……」


 ヤメテください、エリア先輩。レニー先輩が俺をからかっている説が心の支えだったのに。


 そして、何故か俺の隣に座っているラヴィ先輩がうんうんと頷いている。


「まぁ、そうなんですの? セーダイ、貴方なにを仕出かしましたの……。このわたくしに言ってご覧なさい……」


 待って下さい、ポーリーン先輩。ダメな子を見る目で俺を見ないでください。


「なんだよ、セーダイ。お前に言えば解決したんじゃないか。パパの前で駄々っ子して床を転げ回った私の貴重な時間を返せ」


 手にしたオレンジジュースを掲げて抗議してくるロミ。子供っぽい抗議の仕方にシアがくすくす笑ってエリア先輩がうっとりしている。


 この期に及んで、心当たりがないなんてことは言うつもりはない。それなりにいろいろやったと思うし、誰かの役に立ったはずだ。しかし……だ、俺が驚いているのはそこじゃない。


 俺は改めて周囲を見渡す――。


 シア、ロミ、ラヴィ先輩、エリア先輩、レニー先輩、ポーリーン先輩……長靴猫はどうでもいいか。俺へのご褒美的なバカンスであるのなら、この美人美少女揃いの、この状況が意味するところはなんなのかと問いたいのだ。


「お、セーダイ。お前の称号にハーレム系主人公ってのが加わったぞ」


 おいいいいぃぃぃッッ!?


「あ、消えた……」


 何故か、白い人がケラケラ笑っているイメージが脳内に浮かんだ。


「ロミちゃん、ハーレムってなに?」


 ハーレムがわからないシアと、その問いに、女性専用居住区のことでは?なとど答えるポーリーン先輩。


「ふ、シアはまだまだ子供だな。いいか? ハーレムとは大勢の女の子を侍らせてエロいことをすることだ!」


 ぷぅ、っと頬を膨らませたシアが俺の頬を引っ張って怒り出す。


「セーダイのばかばかばかっ! ばかエッチ、浮気者ぉ!」


「いだだだ、ちょ、ほおぉとれるぅ!」


「せ、セーダイ、わたくしをそのようなイヤらしい目で見ていたのですね! ふ、ふふふ、不潔ですわっ!」


 両腕で体を抱いて何やら隠そうとするポーズをするポーリーン先輩だが、巨乳が強調されて一層エロく見えるだけだった。





 バスは列を成してネオルミナスシティの中央にそびえ立つラジアル・クラウンの駐車場へと入り順番に停車していく。そして、俺たちのバスが最後に停車した。


 先にバスから降りた生徒たちは俺たちを……というより俺を見て何を思うだろう。いや待て、この綺麗どころ揃いのメンバーの中で俺のようなモブ顔はむしろ目立たないのではないだろうか。ならば徹底的にモブになればいい……! 全員の荷物を抱えて静かに後ろから尾いて行けば完璧だ。


 名付けて、フェイクオブ付き人……!


 バスを降りていざ実行……と思ったのだが、早々に係員の人たちがワゴンに乗せて大きな荷物を運んで行ってしまった……。


 先生たちの指示で生徒たちはグループごとにラジアル・クラウンのエントランスに入っていく。エレベーターを待つ集団が、現れた俺たちのグループに一斉に振り返った。俺の左腕を恋人繋ぎしたシアが、右側腕を恋人繋ぎしたラヴィ先輩が、俺たちの前をポーリーン先輩とレニー先輩が、そして『ちっちゃいお手て尊い』とか言って、頭に長靴猫を乗せたロミと手を繋いだエリア先輩が後に続く。


 もういっそ逆光で見えなくなっているんじゃないかと思いたかったが、いつぞやのキラキラオーラを放つ二枚目男子が『ぐぬぬ』という顔で俺を睨む。


 違うんです。俺は悪くない世界が悪い。




 俺たちが案内されたのは青い海と青い空に囲まれた『ルミナスパレス・リゾートホテル』という超一級ホテルの最上階特別室(ペントハウス)だった。ホテルのワンフロワーが丸々俺たちの貸し切りと来たもんだ。


 寝室はダブルベッドが二つ並んだ部屋が全部で10部屋。その一室に荷物を置くとカーテンを開いてみる。60階という高さから見下ろす広大な人工の海はここが巨大な塔・ラジアル・クラウンの中とは信じられなくなってしまう程、広く深く壮観だった。


 ダイニングに移動するロミと長靴猫が仮面ヒーロー・ショウごっこをしていた。一見ほのぼのとした光景なのだが、ロミをステナビで撮影するエリア先輩が『推せる! 尊い!』とハァハァしながらローアングラーしていて『この人もうダメだ』と心の中で思うばかりだった。



 ソファーに座った一同を前にエリア先輩は日程説明を始める。


「本日の日程ですが、午前中は自由。二階レストランで昼食を終えた後、皆でビーチへ行きましょう。夕食はグランピングエリアで頂きます」


 合宿という話はどこへやら、完全にバカンスだった。ところでグランピングってなんだ?


 明日の予定はまた明日告知、ということで俺たちは一旦、解散する。俺はすかさずロミを捕まえて例の件を尋ねることにした。


「明日の午前中も自由時間だってエリア姉ちゃんに聞いたからな。そのタイミングでラジアル・クラウンの最下層に向かう」


 流石というか目的地もキッチリ判明しているようだ。最下層か、そこに何があるのか知らないが、皆に気付かれないよう気を付けないとな。


「そうだ。丁度いい。セーダイ、午前中はこの私が直々に魔力についてレクチャーしてやる」


「ホントか! 助かるよ」


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