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俺のスキルには無限の可能性が秘められている

「そこまでだ、怪人!!!」


 アントマンはステージに飛び出した俺に気付て、ゆっくりとこちらを振り返った。舞台袖からスタッフたちの慌てる声が聞こえる。


「子供たちを怯えさ……まだしてないけど! させようとやがって、この俺が相手だ!」


 その時、どこからともなくBGMが流れ始める。



 考えてみれば不思議なものだ――。

 白亜の天使像は楽器を携えて現れるが、BGMそのものはどこからともなく聴こえてくる。

 もっと自由でいい……か……。なんたって神様の作ったスキルだもんな……。そうか……。俺のスキルには無限の可能性が秘められているんだ……!




「行くぞ、変身ッッ!!!」


『勝利武装オーバーライド』


 光に包まれ俺の体を覆っていく金属……。

 それはこれまでの武骨なイメージとはことなり、より滑らかに有機的に形成されていく。


 騎士の意匠を残しつつ、その姿はメタリックブルーのパワードスーツに近いものだった。


 子供たちの声援が上がった――。

 大人たちは演出なのだと思っているようで、子供たちと一緒に盛り上がっている。


 よし、パニックにならずに済んだな……。あとは……。

 アントマンは俺を敵と認識したのか指先から長い爪を伸ばして大きく手を振り上げた。


「おっと! 一瞬で爪が伸びるのか」


 付け焼刃だったはずなのに、グラハム先生の授業で学んだ一連の動きが自然とできる。


「そんなんじゃ、このスーツは破れないぜ!」


 右手で爪を受け止め、左拳を腹部に叩き込んだ。


「GuGeeッッ!!!」


 アントマンは衝撃で一歩後退する。

 すかさず回し蹴りを頭部に叩き込んだ。


「Giiiiiッッ!?」



「すごい、セーダイが格闘してる!」


「まぁ、システムの恩恵もあるんだろうが……、パパは教えるのが得意だからな」


「パパ……? それって……」



 自分の動きを確かめ、一つずつを確実なものにするため、次々に型を叩き込む。アントマンは練習用サンドバックにされていることに気付いたのか、突然、寄生を上げて口から何かを吐き出した――。



「マズイぞ、強酸だ! セーダイ、皆を守れッ!!!」


 安心しろ、相棒はそのくらい予測済みだ――!


「勝利武装≪即応防壁/リアクティブシールド≫ッ!!!」


 吐き出された強酸はシールドに阻まれて、アントマンの足元を焦がだけに留まった。


「アントマン、分かりやすい名前で助かったぜ! さぁ、そろそろフィニッシュだッ!」


 アントマンは勝てないことを悟ったのか、背中から大きな羽を出して飛び去ろうとする。

 逃がすかよ――ッ!


「勝利武装≪装甲変換/リボルヴ・マグナム≫ッ!!!」



 一瞬で20M程まで飛び立ったアントマンを地上から打ち抜く――。そして、アントマンは盛大な花火となって爆発四散した。


 ド派手な演出にポカンとする親御さんとは裏腹に、子供たちは大喜びだ。


「皆、悪いヤツが出たら俺を呼べ! それじゃあな!!!」


 新しいスーツの脚力とスラスターで俺はその場を飛び去った。


 立ち上がって目を輝かせる子供たち。ロミもその中の一人だった。

 そして、ステージは大盛況の内に幕を閉じたのだった――。




 俺は適当な場所で元の姿に戻ると、二人を探して合流した。


「あぁ、よかった。セーダイ、怪我はない?」


 いきなりシアが飛びついてきた。


「な、無いよ。大丈夫だから」


「なかなか……かっこよかった。ちゃんとヒーローだった」


「あぁ、ええっと……ありがとう?」


「そ、装甲を変化させてリボルバーを形成した過程は見事だったな。私の言葉をちゃんと理解しようで何よりだ」


 なんかロミの顔が赤くなっているが、言い分は正しい。

 ロミに『もっと自由でいいはずだ』と言われていなければ、あんな風に武器を形成することなんて一欠片も想像しなかっただろう。


 突然、ロミを呼ぶ聞きなれた声が近づいてきた。


「おーい、ロミー! どこに行ったー!」


「ロミちゃーん、帰るわよ~」


 声の主は俺たちの姿を見つけて近づいてくる。


「ん……お前たち……」


 声の主はグラハム先生だった。俺は驚きのあまり、面白い顔になっていたと思う。すると、ロミはテテテと走り出してグラハム先生の足にしがみ付いた。


「パパ!」


「はぁ!? パパぁ!?」


「おぉ、ロミ、こんなところにいたのか。探したぞ」


「迷子センターに行くところだったわ」


「ゴメンね。そこのお兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒にいてくれたの」


 ロミは別人と入れ替わったのかと思えるほど、子供らしい声でグラハム先生の顔にスリスリしていた。その姿に俺とシアはポカンとしてしまう。


「セーダイにシアか。お前たちがロミを助けてくれたんだな。感謝するぞ」


「そう、ありがとうね。でも、その制服……もしかしてデートだった?」


「なにぃ? 制服のまま不純異性交遊とはいい度胸だな」


「え、いえ、ち、違います! その、俺たちヒーローショーを見に来ただけで!」


 ロミがグラハム先生の娘だということを上手く呑み込めず、意味不明な言い訳が口を突く。


「ロミちゃんって言うんですか? お母さんにそっくりですね」


「えへへ、ありがとう。お姉ちゃん!」


 そして、グラハム先生は早く寮に戻れよ、と言い残してロミと一緒に帰って行った。


 なんだか、化かされた気分だ――。




 翌日、エルクシア学院で見慣れない姿の猫に飛びつかれた。まぁ、ダルニャニニャンなのだが、フリフリのドール姿だったのだ。


「ご、ご主人助けてニャ! あの女、吾輩に無茶苦茶するんだニャ!!」


「待ってくださいましー! まだこちらのお洋服を試してませんわよー!」


 ポーリーン先輩が両手一杯に長靴猫用のフリフリ衣装をかざして現れる。


「ギニャァァ! 吾輩、オスだニャ! なんでそんなもん着せられなきゃならんのニャぁぁっ!?」


 俺とシアの周りを逃げ回る長靴猫とポーリーン先輩がぐるぐると追いかけっこする。


 平和っていいなぁ――。


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