ヒーローはいつだって、皆が俯かないために戦うんだ
「お断りします」
二人が驚いて俺を見つめた。
「俺の望みは、この都市を、この都市で始めてできた友達を救うことです」
その時、俺は初めて意志を口にした。
「何故です……。これは、この世界の有様は私共の愚かさ故。どうして、貴方様が……」
どうして、そう問われても答えはない。
好きになった女の子が泣いている――。
神様モドキからスゲー力を貰った――。
それは“理由”であって、“答え”じゃないんだと思う。
じゃあ、どうして……。
平和な日本で生まれて、優しい両親に育てられて……。
そんな俺に確固たる答えなんかある訳ない。けどさ……。
「それは――」
次の瞬間だった、サロンの扉を蹴破って、覆面をした男たちがアサルトライフルを掲げ、大挙して押し寄せる。
「全員そこを動くな……っ!」
「何者です!? 警備は……!?」
王女様の側仕えをストックで打ち付けて眠らせると、男たちは俺たち三人を囲い込む。
「ラジアル・クラウンは我々『巨竜の咆哮』が占拠した! 我々には要求がある、手荒な真似をするつもりはない、大人しくしろ!」
「『巨竜の咆哮』……。どうやってここへ来たのです」
銃を突き付けられもラヴィニア王女様は毅然としていた。
「殿下、やはり貴方は何もわかっていない。我々は既に見捨てられた民だ。そんな者たちはどこにでもいる!」
メイドの一人がテロリストたちの背後で俯いている。
「まさか……」
「申し御座いません……殿下。わ、私の家族も……結界の中に……住めない者たちなのです……」
――お前の家は終わりだ、シア。
その瞬間、ジェイラスの言葉が頭に響く……。
「シア……、お前の家も……?」
「……っ」
シアは必死に叫びたいのを堪えているように見えた。
俺を困らせるだけだと言ったあの時、俺は呑気に答えてくれるまで待てばいいと考えた。
友達として踏み込んでいい場所と、そうじゃない場所を綺麗に分けようとしていたばかりに……。
「我々の要求は一つだ……! ここに、この場所に……いさせてくれ!」
そうか、この都市にはもう人口を賄える余力なんかないんだ。
こんな悲しいことってあるかよ――。
犠牲に苦しむ者、犠牲を強いて苦しむ者、そして、口を閉ざし泣くだけの者……。
なぁ、白い人……言ったよな? 俺が強く望めば0%を0.00001%にすることだって不可能じゃないって。
今の俺はまだ答えなんて持っちゃいない……。
「けど、好きになった子が泣いてんだ。今はそれだけで十分……ッ!」
「セーダイ様!? 下がって!」
「あ、あぶいない、セーダイ!」
「な、なんだお前……。よ、余計ないことをしてみろッ! お、俺たちは本気だぞ!」
その時、どこからともなく音楽が流れて来る。
「ひぃ!? な、なんだこの音……ッ! おい、どうなってる!?」
「これ……、もしかして…‥」
「キタキタキター! キたニャご主人ッ!」
――その光景を白い人は見ていた。
「それでいい……答えなんかに囚われるな。ヒーローはいつだって、皆が俯かないために戦うんだ」
俺は目一杯拳を握り締めた――。
そして、その腕が眩しく光を放つ――。
光が腕に巻き付いて腕時計のような形状になった。
『遅くなり申し訳ありません、マスター。システムの最適化に時間を要しました』
「何でもいい、手を貸してくれ。友達が、皆が泣いてる……ッ!」
『命令を受諾、音声入力にて実行可能です』
音声入力、変身の合言葉……そんなの決まってるッ!
「行くぞ、……変身ッ!!!」
周囲の空気を押し出すような衝撃が足元から溢れ出して、俺の体を白銀の金属が覆っていく。
『勝利武装オーバーライド』




