二枚重ねのベーコン
昼休みの時間になって、学食を訪れる。
正直感動したね。
どこか西洋風を思わせるくつろぎ空間に、マホガニーのような落ち着いた色合いのテーブルが縦三列、横五列で並んでいた。
ビュッフェスタイルで、ちょっと種類は少なかったが栄養に配慮された食事が盛られている。
かつての俺の高校の学食ときたら、昭和臭のするボロっちぃ感じだっただけに、転生して良かったとこの時ばかりは思った。
俺とシアは二人で向かい合って座る。
これから二人優雅なランチ……。
ほら、頬っぺに付いてるよ、セーダイ。とか、妄想が先走る。
ただそれは、俺の眼前に山盛りになった料理がなければの話だ。
「す、すごい量だね」
俺は料理の横から、頂きますをするシアの顔を覗き込んだ。
「……っ。お腹、空くから……」
フォークをブスっと差して、二枚重ねのベーコンを口に詰め込もうとしていたシア。
見られて恥ずかしかったのかポンと赤くなる。
力持ちだもんな、シアは。俺だったら、そもそもこの料理を抱えて歩ける気がしない。
ステータスが高いと消費カロリーも増えるのだろうか?と周囲を観察してみたが、誰もシアのように食べていないことから、シアが大食漢なのだと理解した。
――でもね! そこも好き!
そんな風に楽しいランチを過ごしていた俺たちの前に、金髪イケメン、ジェイラス・ルア・フォードが現れる。
またシアにいちゃもんか?と思ったのだが、ヤツは俺に掴みかかってきた。
「貴様、シアから聖鎧を譲渡されたな――ッ!」
「ええっと、何のことやら……」
「とぼけるな! 私はこの目で見ていたんだぞッ! あれは、あれは本来、勇者となるべき僕がシアから譲渡されるはずのものだ……ッ!」
え、勇者……?
俺はインストールされた記憶から勇者について思い返す。
ふむ、聖剣と聖鎧を持つ者のみが到達する人類の頂き……か。
「やめて、ジェイラス……」
「お前もお前だ! 何故コイツに渡したッ!」
「それは……」
さて、どうしたものか……。
チビでもやしの俺はこの手のヤツによく絡まれる。
それ故、いなし方も心得たものだ。
けど、シアが近くにいる手前、可能な限り穏便に済ませたい。
「あのぉ……ご存じたと思うんスけど、その件に関しては聖鎧も含め箝口令が敷かれていたはずでは?」
「なんだと……ッ!」
俺が煽ったとでも思ったのか、金髪イケメンは青筋を立てて顔を近づける。
短気なジェイラスには言い分は通らなかったようだが、後ろに控えていた同じAクラスの取り巻き連中には俺の意図が伝わったらしい。
「そ、そうですよ、ジェイラスさん。揉め事にするのはマズイですって」
「王家の勅令なんでしょ? 最悪、処分されちゃいますよ、俺たち……」
ジェイラスは取り巻き立ちを睨み付けるが、どこか冷静になるポイントがあったのか、俺を椅子に叩きつけ手を離した。
「いたた…‥」
「大丈夫、セーダイ?」
俺は近づこうとするシアを手を翳して制止する。
お尻が青あざになるくらいどーってことないさ。
「シア、私は忠告したはずだ。だが、お前はそれに従わなかった。……お前の家はもう終わりだ」
そう言い残してジェイラスと取り巻きたちは去っていく。
そして、こちらを観察していた周囲の生徒たちは視線を戻して昼食を再開する。
それにしても前にも家がどうのって言ってたな……。
「シア、聞きたいことがあるんだけど」
「……」
「友達の俺にも話せない?」
「……話しても、セーダイを困らせるだけ」
シアとの楽しいランチはこうしてジェイラスによって台無しにされてしまったのだった。




