第十二話・時のチーム【黎明の怪獣旅団】VS美のチーム【聖典ヴィーダ】
闘いは決戦の本戦巨星『ティル・ナ・ナーク』へと場所を移した。
黎明の怪獣旅団と聖典ヴィーダは、鏡面のようなガラス窓の建物群の場所で闘っていた。
「はみゃ、なかなかやるな……黎明の怪獣旅団」
ビルの窓に映る、リーダー天使獣『チャミエル』が翼を羽ばたかせると衝撃波でガラス窓が粉砕される。
ガラスの破片に映る自分の姿に見惚れるロボット怪獣のチャミエルが、恍惚した表情で呟いた。
「はみゃ……綺麗だみゃ、あたし」
美のチームの美しいメス怪獣たちは、メンバー総当たりで時のチームの怪獣たちと対決する。
光沢がある純白の体毛に、宝石が下がった多毛怪獣。
全身が宝石でできたような四つ足怪獣。
黄金色の二足歩行怪獣。
春先の残雪残る雪山のような模様の体に、 美しい蔓花が咲き乱れる怪獣。
飾り羽根を揺らして踊るたびに、紙吹雪のようなナニかを撒き散らす鳥頭のカーニバル怪獣。
アグラが戦っているのは美しい白蛇二体が、体に巻き付いたような姿の光沢のあるメスの蛇怪獣だった。
蠢くヘビの首をつかんだアグラに、胸元を押さえたメス怪獣が言った。
「エッチ……どこ触っているんですか」
慌てて手を離すアグラが文句を叫ぶ。
「ぐあぁ、闘いにくい! メスの怪獣は苦手だ! エアル、相手を交代してくれ!」
エアルが闘っているチャミエルと、アグラの白蛇怪獣と交代する。
「はみゃ、選手交代かみゃ……あたしは、どっちが相手でもいいみゃ」
チャミエルの目から発射された、結晶化光線がアグラに向かって飛ぶ。
アグラは『口から何か出る防御』で、蜘蛛の糸の壁を作ってチャミエルの攻撃を防いだ。
「一度見た攻撃なら、防げるぜ」
「はみゃ……じゃあ、この攻撃はどうかみゃ」
チャミエルの腹部が開いて、ミサイルがアグラに向かって飛ぶ、
アグアはミサイルと一緒に飛び出してきたモノに唖然として、そのまま攻撃を受ける。
ミサイルはアグアの体に命中して爆発したが、アグアは倒れない。
アグアが体に絡まった、赤茶色の物体をつかんで言った。
「いったいこりゃなんだ? ミサイルと一緒に飛んできたこの物体は? モツ?」
アグラが握りしめた筒状の長い物体は、チャミエルの腹部と繋がっていた。
チャミエルは、ミサイルと一緒に自分の臓物も発射していた。
悲鳴を発するチャミエル。
「きゃあぁぁぁ! 見ないでください……醜い臓物まで発射してしまいました!」
引っ張って回収した臓物を体に中に押し込んで、腹部の開いたフタを閉めると。
チャミエルは、その場にしゃがみ込んでいった。
「美のチームの負けみゃ……闘いの最中に、汚らしい臓物をぶち撒けて美意識を損なうなんて、美のチームのリーダーとしてあるまじき失態をしてしまったみゃ……潔く敗北を認めるみゃ」
アグラが言った。
「そうか……リーダーが敗北を認めたなら、オレはそれ以上は何も言わない、綺麗ないい闘いだった……一つだけ教えてくれ、臓物が出たってコトは……もしかしてチャミエルはロボット怪獣じゃなくて、サイボーグ怪獣じゃないのか?」
アグラの質問には答えずに立ち上がったチャミエルは、長い後ろ髪を掻き上げて、美チームの仲間怪獣に言った。
「華麗に美しく闘う……それが、美の怪獣チームが掲げている理念……その理念をリーダーである者が破ってしまった以上、潔く敗北を認めるのも美のチームの美徳……臓物を発射してしまったからには、リーダー失格みゃ」
美のチームの怪獣たちが口々に言った。
「リーダー……辞めないでください美のチームのリーダーは、チャミエルしかいません」
「天使獣のチャミエルがリーダーを辞めたら、あたしも美のチームを抜けます」
輪になって抱き合い涙を流す美のチームの友情と団結に、アグラの目にも溶岩のような熱い涙が浮かぶ。
キラキラとしている美のチーム【聖典ヴィーダ】を見ていたアグラは、地面から現れてモノを見て叫んだ。
「あぶねぇ、そこから離れろ!」
アグラの声に四方に避け散る美のチーム。
逃げ遅れた鳥頭のカーニバル怪獣の足首を地中から現れたモノがつかむと。
一瞬で鳥頭のカーニバル怪獣は白い煙を出して白骨化した。
「てめぇ、何者だ!」
アグラの尻尾が、地中から現れたモノを吹っ飛ばす。
大根が抜けるみたいにスポッと地面から抜けて転がったのは、人間の頭から手足が生えた奇妙な生物だった。
人間の頭から手足が生えた生き物を、吹っ飛ばしたアグラの尻尾の触れた一部が、白い煙を出して白骨化していた。
アグラは急速再生で、白骨化した尻尾を元の状態に戻す。
短い足で立ち上がった人間の頭に手足が生えた生き物を観察して、ヘキサゴンが言った。
「〝五体面〟という妖怪がいる……〝はらだし〟という妖怪の親戚とも呼ばれている……その類いか、しかし怪獣を白骨化させたあの能力は?」
五体面の顔が中央から割れて、今度は中からドクロの顔が現れる。
五体面の皮を脱ぎ捨てた生物は、今度はドクロに小さな白骨の体がついた姿に変わった。
頭だけが大きいガシャガシャ音をさせている、生き物をアグラが睨みつけるとドクロは分裂して二体になった……さらに、アグラが睨んでいると、頭だけが大きいドクロはガシャガシャ音をさせて、増えていく。
「この野郎、また増えやがった! にらめっこなら負けねえぞ!」
意地になってドクロを睨みつけている、アグラを見てヘキサゴンが言った。
「〝ガシャドクロ〟という、巨大な骨格妖怪がいる……睨みつければ増え続ける頭蓋骨の〝目くらべ〟と、いう妖怪もいる……ニャーラ、アグアの視線をドクロからそむけさせてくれ……このまま、あのドクロが増えていけば星を埋め尽くす」
ニャーラが、アグラの首をつかむと、グギッとアグラの視線をドクロ妖怪から背けさせた。
小爆発するように、大頭で小さい体のドクロは次々と、消滅していなくなった。
ドクロ妖怪が消えると、白骨化していた鳥頭のカーニバル怪獣の姿も元の姿に戻った。
アグラが、首の後ろを擦りながらヘキサゴンに訊ねる。
「視線がそらせなかった……ヘキサゴン、ありゃいったい何だ? 今回の大会の裏で、いったい何が起こっているんだ?」
フジツボのような突起物の中から、男性の顔を覗かせて、六次元超獣ヘキサゴンが言った。
「この世の中には、知らない方がいいコトもある」
美の怪獣チーム【聖典ヴィーダ】……本戦自主敗退。




