第十一話・技のチーム【鉄火莫耶】VS魔のチーム【白きアラティル石】
初戦は、知のチーム【十三の秘宝】を除いて優勝候補のチームの、ほとんどが通過した。
町の怪獣食堂でアグラが、エビに似た味の海洋生物をかじりながら、テーブルを挟んで座るヘキサゴンに向って言った。
「それにしても、知のチーム【十三の秘宝】が初戦で敗退するなんて、想定外の番狂わせだなぁ……ディス・ノミアを破った、妖のチームってのは大会のダークホースだな」
「そうだな」
ヘキサゴンは、食べ終わった骨付き肉の骨をしゃぶりながら、別の場所を見ていた。
「おい、ヘキサゴン……オレと話しをしている時によそ見か……いったい何を見て?」
振り返ったアグラは、食事をしている巨大な人間のような顔を見た。
二本の長い髪の毛を動かして食べ物を、後頭部の口に運んでいた。
「なんだありゃ? アレも怪獣か?」
ヘキサゴンが、なにやらブツブツ言っている声が聞こえてきた。
「大かむろ……大首……つるべおとし……おとろし……赤舌……食べ方をみれば、二口女も混じっているような……針女も少し」
「おい、さっきから何を言っているんだ? アイツ、いったいなんだ?」
ヘキサゴンは、アグラの問には答えずに、しゃぶっていた骨を噛み砕くと椅子から立ち上がって言った。
「食べ終わったら食堂を出るぞ……今はアレには、関わらない方がいい」
「どういう意味だ?」
「この世の中には、知らない方がいいコトもある」
ヘキサゴンは六次元鞭毛を振動させて、アグラと一緒に次元移動で食堂から瞬間移動で外に出た。
アグラとヘキサゴンが食堂からいなくなると、妖怪頭の後ろからキャスケット帽子をかぶったカッパ少女が、ヒョコり顔を覗かせた。
「へぇ~アレが、黎明の怪獣旅団の暴魂獣アグラか……へぇ~」
◆◆◆◆◆◆
その日の夕刻──怪獣の破壊を前提とした、夕刻の下町で技のチーム【鉄火莫耶】の『ジン・ゴロウ』と。
魔のチーム【白きアラティル石】の『ゲー・ティア』が、夕陽の中で対峙していた。
頭に鉢巻を巻いて、腕組みをしたジン・ゴロウがゲー・ティアに言った。
「これは、提案だけれどよ……リーダー同士で一対一勝負で、決着つけねぇか……弟子のロボット怪獣やサイボーグ怪獣をキズつけたくないからな……こいつらも、予選で雑魚怪獣と闘って満足したみてぇだから」
「いいですね……わたしも召喚獣は、休ませたいですから……その提案受けましょう」
ジン・ゴロウが後方に控える弟子怪獣たちに言った。
「おまえたちは、手を出すな……これは、リーダー怪獣同士のガチだ」
対峙して戦闘態勢に入った二体の怪獣は、時間が停止したように間合いを保って、互いに機会を伺う。
最初に動いたのは、ジン・ゴロウの方だった。
体から突出した回転ノコギリを、ゲー・ティアに向って飛ばす。
ゲー・ティアも、魔法障壁の陣円で防御しつつ雷を放ったり、魔導力で浮かせた建造物をジン・ゴロウの頭上から落として反撃した。
ジン・ゴロウは落下してきた建造物を頭のノコギリで切断する。
建造物の中に居た、人間が転がり落ちるのが見えた。
互いに笑い合う、技のチームリーダーと魔のチームリーダー。
「どうやら、実力は互角みてぇだな……このまま、やりあっても、どちらかが傷つくだけだ」
「そうですね……それは、無意味な闘いです……わたしたちは、人間ではないので」
ジン・ゴロウが言った。
「魔のチームが次の闘いに進め……技のチームは、ここでリタイアする」
「いいえ、魔のチームこそ、リタイアしますから技のチームこそ次の闘いに進んでください」
「それなら、二つのチームがリタイアでいいじゃねぇか……初戦の闘いで十分楽しめたから」
「そうしましょう」
夕陽の中で互いの実力を認めた二体の怪獣が近づき、握手を求めて手を伸ばした──その時。
ジン・ゴロウとゲー・ティアの後方で弟子怪獣と召喚獣の悲鳴が聞こえた。
振り返った二体の怪獣は、地面から湧き上がってくるコールタールのような黒いモノを見た。
コールタール状のモノは、ジン・ゴロウとゲー・ティアの足下からも湧き上がり、二体の怪獣を包んでいく。
ジン・ゴロウが言った。
「なんでぇ? これは? これは、魔のチームの力か? うわあぁぁぁ」
「ち、違います……これは、強力な妖の力……うわあぁぁぁ!」
その場にいた怪獣たちは、黒いコールタールのようなモノに包まれた。
◇◇◇◇◇◇
数十分後──技のチームと魔のチームが闘っていた場にやって来たアグラとヘキサゴンは、そこに異様な物体を見た。
体が裏返ってピクッピクッ蠢いている、怪獣たちの姿があった。
顔をしかめるアグラ。
「なんでぇ、コレは……いったい、何がどうなっている? ジン・ゴロウとゲー・ティアは?」
ヘキサゴンが二体の裏返った怪獣を指差す──一体は、サイボーグの内蔵機械と回転ノコギリが血肉の間から露出していて。
もう一体は、魔法陣のようなモノが裏返った内臓から斜めに出ていた。
ヘキサゴンが呟く。
「〝モズマ〟という名前の妖怪が存在する……口から内臓を吐き出して体を裏返す妖怪だ、これはモズマの力だな」
「生きているのか?」
「元の状態に戻せば大丈夫だが……ダメージが大きすぎて、大会参加はムリだろうな」
「どいつが、こんな酷いコトを……オレが見つけてぶっ飛ばしてやる」
ヘキサゴンが、六次元鞭毛を振動させて、裏返っていた怪獣の体を少しづつの元の状態に戻しながら言った。
「今はやめておいた方がいい、迂闊に動くと相手の思う壺だ……世の中には知らない方がいいコトがある」
〝モズマ〟イギリスに出没する、人間を襲う表皮と内臓が裏返った不気味な妖怪……一説には昼間は美しい女性の姿で夜になると、口から内臓を吐き出して体を裏返して人間を襲うとも




