第十話・バトルロワイヤル予選
人工天体【アウル】での予選バトルがはじまった。
予選はアウルの各エリアでの、生き残りバトルロワイヤル戦だった。
アグラと一緒にホシノフネに乗ってやって来た、他のチームも惑星の各エリアに分散して、生き残りをかけた闘いを繰り広げているはずだった。
黎明の怪獣旅団は、いきなり怪獣軍団に取り囲まれた。
「なるほど、最初にオレたちを協力して沈めておこうって魂胆かろ……おもしれぇ、まとめて相手になってやらぁ」
アグラが手の平を拳で打ちつける。
エアルが、血気に満ちたアグラに言った。
「ここは、バルちゃんに任せてみましょう……一度、バルちゃんも戦ってみたいと言っていましたから」
人間形態で特殊なロープで空中に浮かぶ、人間の少女姿の、大食小型ペット獣『バル』ちゃんが。
「バルぅぅぅ」と、鳴いてアピールする。
アグラが重りをつけられて浮かんでいる、バルを見下ろして言った。
「あぁん? やってもいいけれど……一度予選の初戦をはじめたら、助けねぇからな……あれだけの数の怪獣の相手をできるのか? 黎明の怪獣旅団の一体として、恥ずかしくない闘いがバルに」
ズノウが電子の赤い目で、周囲を取り囲む怪獣たちのパワーを測定して言った。
「どの怪獣もバルちゃんのパワーを下回る、雑魚パワー数値です……やらせてみたらいいんじゃないですか、いざとなったら補欠登録をしてある、マダナイを出せば」
「そこまで言うなら……バルに任せる」
六次元超獣のヘキサゴンが、バルを除くメンバーを不可視で攻撃が無効になる不可視六次元空間に入れると、周囲をドーナツ型に取り囲む怪獣たちからは見えなくなった。
雑魚レベルの怪獣たちがざわめく。
「なんだ? 空中に浮かぶ人間を残して、黎明の怪獣旅団の姿が消えた?」
「あの、浮かんでいる人間は怪獣か?」
「人間形態の怪獣もいるから、かまわねぇやっちまえ!」
取り巻く怪獣たちから、一斉にビーム光線やら火炎放射やら電撃攻撃やらの、エネルギー系の攻撃がバルに集中する。
「バルうぅぅぅ!」
バルの腹部にある本体が、エネルギーを吸収して少女体を包むように膨張して、脈動する風船怪獣へと変化する。
そして、吸収した攻撃を倍増して包囲している怪獣たちに向けて放つ。
「ぎゃあぁぁぁ!」
「コイツ、エネルギー吸収系の怪獣だぁぁ」
数分後──バルからボコッボコッにされた怪獣たちが、呻く姿があった。
アグラが感心した口調で呟く。
「戦意を喪失させて、戦闘不能にしたか……バルは、その気になれば相手の記憶も吸収できるからな」
他のエリアに散った、アグラと一緒にホシノフネに乗ってやって来た各怪獣チームも、順調に初戦の雑魚怪獣たちを倒していた……ひとつのチームを除いては。
◆◆◆◆◆◆
「いったい、あなた方なんなんですか……本当に怪獣ですか?」
人工天体の宇宙空間で初戦の相手を迎え撃った知の怪獣チーム【十三の秘宝】は、苦戦していた。
地上で闘った時は、十三の秘宝の地底宇宙人や海底宇宙人たちが有利だった……妖の怪獣チーム【朧の火車】が、変化するまでは。
朧の火車は、一体の怪獣だけのチームだった。長い前髪を真ん中から垂らして、レトロな火の車輪が付いた。
巨大な下牙が口から生えた顔の怪獣。
その怪獣の髪が無数のヘビに変わり、ニワトリの鳴き声が聞こえた瞬間……巨大な顔だけの怪獣の双眸から発せられた光りを浴びた、十三の秘宝のメンバーは次々と石化して倒された。
「ギィギィ……たわいない……ギィギィ」
不気味な声で笑う、朧の火車の怪獣を見て……ディス・ノミアは気づいた。
この怪獣は、数体が合体している合体獣だと。
(これは、わたしが得意とする闘いを「よそう」と紳士的に言って……相手が油断した隙に攻撃する卑怯な手は使えそうにありませんね……ここは一旦、宇宙空間に退却します)
そして、宇宙空間に逃れたディス・ノミアが。
「ここまで、来れば」
そう呟いて、振り返った時──今まで、地上にいたはずの朧の火車の怪獣が、宇宙空間にもいた。
それを見て動揺するディス・ノミア。
「どうやって……わたしより早く、宇宙空間に……」
ディス・ノミアが見ていると、妖の怪獣の顔面が縦に割れて。
巨大な一つ目の別の顔が現れた。
恐怖に悲鳴をあげるディス・ノミア。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
一つ目から、黒い霧のようなモノが吹き出して、ディス・ノミアを包む。
「こ、これは……暗黒暴食獣『グラトニー』? いや、さらに未知の物質がミックスされて……ブラックホール? うわあぁぁぁぁぁぁ!」
ディス・ノミアの姿は、グラトニーホールに呑み込まれて消滅した。
知の怪獣チーム【十三の秘宝】……予選敗退。
◆◆◆◆◆◆
人工天体の地上で、グラトニーホールに呑み込まれて消滅する、ディス・ノミアの姿を特殊な鏡面を使って見ている者がいた。
妖怪事典を広げて持った男が言った。
「ふふっ……これが妖のチームの実力だ、思い知ったか怪獣ども」
あやかしの付喪神の魔鏡面〝雲外鏡〟を持って魔鏡を妖怪王に見せている。
キャスケット帽子をかぶり、ショートパンツ姿の片目を前髪で隠したカッパ少女が妖怪王に向って言った。
「いいんですか……妖怪が怪獣バトル大会に参加しても?」
「妖怪が、怪獣バトルの大会で優勝する……滑稽じゃないか……大丈夫、バレていない」
「いやいやいや、すでにしっかりバレていると思いますよ」
【創作裏話】
妖のチームの、怪獣の顔が割れて別の怪獣の顔が中から覗いているという描写は……ウルトラシリーズに登場した。一度見たらインパクトが凄すぎて忘れられない【妖邪剛獣・ガイモス】です




