第十三話・時のチーム【黎明の怪獣旅団】VSパワーのチーム【ラウズ・スキナ赤い服】
アグラは、次の闘いが開始されるまでの短い時間。
本戦巨星『ティル・ナ・ナーク』を、ブラブラと散策していた。
「美のチームと闘ったビル群以外は人工建造物は、たいして無い星だな……高い山とか湖とか山はあるが……人工物がねぇと壊しがいがねぇな」
ティル・ナ・ナークには、古代遺跡とか世界遺産になるほどの古代建造物は、存在しているが……エアルから、アグラはそういった建造物の破壊は厳禁されている。
「怪獣にはそんなの関係ねぇだろうが……世界遺産? 上等じゃねぇか、いつの日かブッ壊してやる」
アグラは雪をかぶった円錐形をした成層火山と、その火山の麓に広がる、次の怪獣バトル本戦が開催される予定の樹海を眺めた。
「大会本戦のバトルフィールドは、チームレベルが下の対戦相手チームが指定してくるってのが……気に入らねぇが。まぁ、オレはどんな場所でも闘って勝つだけだ」
立ち止まったアグラは。
先端に人間男性の裸身上半身が融合した尻尾を、持ち上げて眺めながらアグラは、後方の地中を移動してついてきている、赤いタコ頭に背を向けたまま言った。
「おい、ずっと赤い頭だけを地上に出してついてくるのは、気分が悪い……地中から出てこい、舎弟になった暗殺灼熱獣」
大地を熱で泥液状化させて移動してきた、灼熱暗殺獣のユダールが地面に出てくる。
「ここだけの話し……なぜ、オレが後ろからついてきているとわかった? アグラの兄貴」
「誰でもわかるわ! 赤いタコ頭がついてくれば……前から聞きたかったが、おまえは人間と融合はしていないのか? 大会本戦のティル・ナ・ナークは、人間と融合した怪獣じゃないと入星できないからな……おまえが、融合している人間を見せろ」
「ここだけの話し……アグラの兄貴だけに、恥ずかしい姿を見せるんですからね」
ユダールの後頭部から、意識を失った水着姿の女性が斜めの体勢で出てきた。
「ここだけの話し……少し脱水状態で、水を与えないと熱中症で死にますね」
「軟弱だな……人間ってのは、ユダールおまえはどう考えている……大会に参加するのに、どうして、ひ弱で弱者な人間を強靭な怪獣と融合させなきゃいけねぇんだ? どんな理由があるんだ?」
頭から水蒸気を出しながら、ユダールは脱水状態の人間女性を触腕で体の中に押し込んで言った。
「ここだけの話し……人間には怪獣に無い、何かを持っているからじゃないんですか」
「何を持っているんだ?」
「オレも良くはわからないんですけれど〝愛〟とか〝勇気〟とか〝希望〟とか〝夢〟とかっていうモノを……」
「夢ならオレも持っている、有名な建造物や名所を破壊するコトがオレの夢だ……その〝愛〟ってのは喰ったら、美味いのか?」
灼熱暗殺獣が小声で言った。
「ここだけの話しですけれど……油で素揚げとかすると、熱いうちはそれなりに食べられるらしいですよ、作り置きはできないみたいで……人間の男女の愛とやらは、三年くらいで冷めてしまうらしいですよ」
「そうか、一度喰ってみてぇな愛っていうモノを」
◆◆◆◆◆◆
雪をかぶった円錐形をした成層火山の麓に広がる樹海の中に、パワーの怪獣チームのリーダー『ベオ・ウルフ』が操る骨のブーメランが大木を次々となぎ倒す。
飛んで戻ってきた、骨ブーメラン【グレンデル】を手にしたベオ・ウルフが言った。
「怪獣はパワーがすべて、パワーこそ怪獣」
ベオ・ウルフの言葉を聞いた暴魂獣アグラが、嬉しそうに手の平に拳を打ちつける。
「やっと、オレが望んでいた怪獣バトルができる……勝負だ! ベオ・ウルフ!」
「おぉ、アグラ! 力と力のぶつかり合いだ!」
樹海が揺れる、怪獣同士の闘い──会計経理電脳獣『ズノウ』は、四脚歩行で雪をかぶった岩山のような姿をした、パワー怪獣の突進を受けて吹っ飛び、同時に数個のネジが緩んで体から飛び出した。
ジン・ゴロウが作ったネジも少し緩んで機体の外に飛び出したが、すぐに回転してズノウの体の中に戻る。
「さすが、名匠怪獣ジン・ゴロウが作ったネジです……わたしは接近戦は苦手な電脳怪獣です……ギブアップします」
少し離れた場所では、冷気を放つモフモフ冷凍獣『ニャーラ』の冷凍光線が、岩を持ち上げてニャーラに向かって投げつけようとしていた、筋肉バカ怪獣を凍結させる。
「少しオレの冷気で頭を冷やしな、脳筋の暴れん坊獣『ブルー・キング』」
六次元超獣『ヘキサゴン』が、六次元鞭毛を振動させると、闘っている怪獣の頭上に、底が平らな超大鍋が降ってきて怪獣を大地に押し潰す。
「その大鍋の下でしばらく、眠っていてくれ……超古代獣『ゴルラ』」
大食小型ペット獣『バルちゃん』は、対戦している豪腕怪獣からの、パンチ連打を受けるたびに破壊エネルギーを吸収して膨れ上がって……そのまま、空へと風船のように飛んでいった。
「バルゥゥゥ」
聖霊鳥『エアル』は旋回しながら、子守唄の歌声で、手製の骨柄オノを持った。
巨大ゴリラのような姿の巨獣を眠らせている。
アグラとベオ・ウルフは、怪獣プロレスバトルでぶつかり合い。
互いの手を正面からガッチリ受け止めて、パワー勝負をしていた。
ベオ・ウルフの体を、片方の膝が地面に近づくまでパワーで押しているアグラが言った。
「楽しいなぁ……ずっと、おまえとこうして闘っていたいなぁ」
ベオ・ウルフがパワーで押し返すと、今度はアグラの片膝が地面に近づく。
「そうだな……でも、決着はつけないとな」
互いに一歩も譲らずに、対等な位置まで押し合いをする二体の怪獣。
その時──地面に地割れが走り、アグラとベオ・ウルフが力比べをしている位置の近くに、黒い長首の怪獣が現れた。
力比べの組みを解いて、飛び離れるアグラとベオ・ウルフ。
ベオ・ウルフは地面に刺しておいた、骨ブーメランを引き抜いて身構える。
「ひゃひゃひゃ、ナニまどろっこしいコトやってんだよ……相手を喰っちまえばいいんだよ……ひゃひゃひゃ」
虐の怪獣チーム【キルム・キルム】の現在のリーダー海魔『オルク』が、四つ足で膨れた腹をアグラとベオ・ウルフに誇示しながら、二つに割れた舌をチョロチョロ出して挑発した。
アグアは、オルクの膨れた腹を見て言った。
「もしかして、怪獣を喰ったのか……仲間を喰ったのか」
「ひゃひゃひゃ……腹が減っていたから、対戦相手の怪獣を一体喰った」
「虐チーム仲間の怪獣はどうした?」
「ひゃひゃひゃ……オレが怪獣を丸呑みしているのを見て逃げた……ひゃひゃひゃ、おまえたちも喰ってやる」
「てめぇ……チームリーダーの『キング・ジャージ』が知ったら、激怒するぞ! 怪獣の同胞を捕食するなんざ外道の怪獣だ」
「黒煙蛇獣『キング・ジャージ』は、ずっと不在だ……虐のチーム【キリム・キリム】の実質リーダーは、オレだ……それに、キング・ジャージは最初からリーダーじゃない」
「どういう意味だ?」
「なかなか、リーダーが決まらなかった虐のチームに、ひょっこり現れて勝手にリーダーを名乗って、虐のチームをまとめやがった……ひゃひゃひゃ、気に入らねえ」
「それだけ虐のチームが荒れていて、リーダーの素質がある怪獣がいなかったってコトだろうが」
「うっせい! 怪獣は怪獣を喰えばいいんだよ……弱肉強食で最後に残ったヤツが、キング・オブ・モンスターだ!」
オルクの逆さ頭が、アグラたちを捕食しようと四方に割れて広がる。
その時──オルクの頭上から、毛が生えて牙の生えた赤い口を開けた頭に、爪が生えた腕がついた、妖怪怪獣がオルクの背中に落下してきて膨れた腹を圧迫した。
口から苦く青い体液を吐き出すオルク。
「おごぉぉぉ!」
オルクの口の中から、呑み込まれていた黒い昆虫怪獣が消化されずに吐き出された。




