第17話
自室に戻ってきたリリィは、また窓辺に腰掛け空をボーッと見上げる。そして、レオンが触れた頬にそっと触った。
「…………」
レオンの手はもうないのにリリィはなんだか、まだ頬がレオンに触れられているような感じがした。
触れられた箇所に熱がまだ残っているような感じがしたのだ。
(私、どうしちゃったのかしら……今日は、レオン様の顔が頭から全然離れないわ……)
手袋越しだけど、確かに感じたレオンの熱。思い出しただけで、リリィはまた顔が熱くなってきた。
「っ!! も、もう今日は寝よう!」
と言っても、何せリリィは幽霊だから目を瞑っても眠れないのである。しかし、少しでも邪念を払えべく目を閉じたのだった。
(明日は普通に……普通に接する……)
まるで羊を数えるように、リリィはずっと心の中で呟いていたのだった。
✿―✿―✿—✿
翌朝。結局、目を閉じてもリリィの頭からは昨日の出来事が忘れられなかった。
否、忘れられることなど出来なかったのだ。
リリィは、小さな溜め息を吐く。すると、また、体が引き寄せられる感覚がやってきた。
リリィは、その感覚に「きたわ!」と思った。
それは案の定だった。リリィの体は、またもや勝手に部屋を出て壁をすり抜けた。そして、感覚が無くなる頃にはレオンの前にいたのだ。
「やぁ。おはよう、幽霊姫♪」
いつもなら怒るリリィだが、昨日の事もあってレオンと目を合わせることができないでいた。
「お、おはようございます……」
リリィはレオンの言葉に少しだけ胸が痛くなる。
(昨日は初めて名前を呼んでくれたのに、また幽霊姫って……)
しかし、当の本人はリリィ考えなどわからず、相変わらず王子様のような優しい頬笑みを浮かべていた。
「さぁ、行こうか♪」
「は、はい」
少しだけ近づけたよう気がしていたのに、また離れてしまったことにリリィは少しションボリとなった。
そこで、リリィは我に返った。
(なんで、私が落ち込まないといけないのよ!? べっ別に、私は……!!)
「おい、そこの幽霊。早く馬車に乗れ」
後ろから黒曜の声が突然聞こえ、リリィはビクッと肩を揺らし驚いた。
「行くのか、行かないのかどっちなんだ。早く決めろ」
「なっ!? 行くわよ! もうっ!」
(って、この人には私の声は聞こえないんだっけ?)
黒曜がどこまで幽霊を見えるのかはわからないが、もしリリィの言葉もわからなければ、怒った自分が馬鹿に見えてくる。そんなことを思いながらリリィは溜め息を吐くと馬車に乗った。
その傍らで見ていたレオンは、二人のやり取りが可笑しいのかクスクスと笑っていたのだった。




