第14話
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話を終えると、レオンはこれから用事があるからとリリィに言うと屋敷を出て行ってしまった。
リリィには「好きに屋敷の中を見ていい」と言ってくれたが、リリィはなんとなく自室から出る気にはなれなかった。
「はぁ……」
窓から外を見れば空はまだ明るかった。
時計を見ると時刻は、まだ13時だった。
リリィは、相変わらず自分の体が眠っている窓辺の隙間にちょこんと座り、窓から庭をボーっとしながら見ていた。
(聞き込み調査……こんなこと思うのも変なのかもしれないけど――)
リリィは「自分のことを知るのが怖い」と内心思っていた。そんな矢先、部屋のどこからか猫の鳴き声が聞こえ始めた。
「ミャー」
「え?」
リリィは、ふと猫の鳴き声がする方を見る。どこから入ってきたのか、黒い毛並みの猫は体が眠っているリリィの頬をすり寄せた。
「猫? いったいどこから入ったのかしら?」
リリィがそう呟くと、猫はまた「ミャー」と鳴くと霊体であるリリィを金色の瞳で真っ直ぐ見つめた。
「あなた、私が見えるの?」
猫は返事をするかのように「ミャー」と、一鳴きする。猫はベッドを降りると、霊体であるリリィの傍に行き、リリィ同様に窓辺の小さな隙間にぴょんっと飛び乗った。
「ミャー」
「ふふふっ。なんだか不思議な猫さんね」
霊体である体は基本的になにかに触れることはないが、なぜだかリリィが『触りたい』と思えばリリィは物に触れることができる。リリィは猫の頭を撫でようと手を伸ばすが、それは寸前で止まり、リリィは手をひっこめた。
(死んでるわけでも生きているわけでもない……でも、幽霊になった私……)
リリィは普通の幽霊とは違い、自分自身でも自分のことがなんだか怖く感じた。
「ミャー?」
そんなリリィを心配するように猫が首を傾げながら鳴くと、リリィは猫を見た。そこで猫の首になにかついていることに気がついた。
どうやら首輪をしているらしい。
「首輪が付いてる。ええと……ミヤ? あなた、ミヤっていうの?」
「ミャー」
「そう。ふふっ、可愛い名前」
「ミャー」
「何だか、本当にあなたと話をしているみたいね」
リリィは先程の不安は無くなり、ミヤの喉を優しく撫でた。
ミヤは最初キョトンとしたが、気持ちよくて直ぐに喉をゴロゴロと鳴らした。
「そういえば、あなたは誰の猫なの? どこから来たの?」
ミヤはリリィの手から離れるとストンと床に降りる。そして、まるでリリィを誘うかのようにドアの方に向かい、後ろを振り返りリリィをジッと見た。
「…………」
リリィは行こうか悩んでいたが、こうやって引きこもっても仕方がないと思いミヤの後に付いて行くことなった。
よく見ると部屋の扉が少しだけ空いていることに気かづき、リリィはミヤがその隙間から入ってきたのだとわかった。
部屋を出て廊下を宙に浮きながら猫に着いていくリリィ。着いた先は、一階の中庭だった。
中庭にはテラスがあり、周りは色んな色の薔薇が咲いている。庭というより、薔薇園のようだった。
「わぁ〜、綺麗」
薔薇の門をくぐり、辺りを見回すリリィ。
「ミャー」
ミヤは『こっちだよ』と言っているみたいに、リリィの方を振り返り一鳴きする。
「ふふふっ、なんだか、アリスみたい」
(白兎ではなく、黒猫だけど)
リリィはそう思うと一人でクスクスと笑った。
最終地点に着いたのか、ミヤはある場所に辿り着いた。
「え……? これ、お墓……?」
そう、ミヤがリリィを誘った先には一つのお墓があったのだ。石板の周りには薔薇の花が彫られ〝バイオレット〟と書かれている。
墓の周りには見たこともない空色の薔薇が咲き誇っていた。
「……バイオレットって女性の名前よね?」
リリィは、その事に少しだけ心がモヤがかかったような気がした。
「恋人、かしら……?」
石板には享年等は書かれておらず、ただ、『愛するバイオレット』と書かれていただけだった。すると、足元からミヤの鳴き声が聞こえてきた。
「ミャー」
リリィはその場に座り込み、手の甲でミヤの頬を撫でる。ミヤはゴロゴロと喉を鳴らし、リリィの甲に自分から擦り寄っていた。
まるで、もっと撫でてと言っているようだ。
「ふふふ。ねぇ、あなたはどうして私をここに連れて来たの?」
「ミャー」
ミヤは、ただ鳴くだけでその理由を教えてはくれなかった。
そのことにリリィは苦笑する。
(それも当然よね。だって、猫なんだもの)




