第13話
レオンは話を逸らすように「それで、他には何かない?」と、微笑みながらリリィ言った。
リリィは話を促すレオンに口ごもる。
「えっと……その……」
リリィは、自分が他者から遠巻きにされていたことを言おうか悩んでいた。レオンまでもが自分のことを避けるようになったらどうしようという不安が少なからず心にあったからだ。
だが、リリィはレオンになら話しても大丈夫だと思った。理由はわからないが、物好きなレオンだからこそ避けることはないだろうと思ったのだ。
(レオン様ならきっと大丈夫、よね)
「……私、実は周りから嫌われていたんです」
自傷気味に微笑むリリィ。レオンは「どうして?」という風にリリィを見つめながら首を傾げていた。
リリィは苦笑いをしながらレオンを見ると、自分の髪に触れた。
「ほら、私の髪って他の方たちと違うじゃないですか」
「あぁ、髪色のことだね。そうだね……確かに、この国では珍しい色かもしれない。でも、僕は好きだよ」
「え……」
レオンの言葉にリリィがポカンとなる。そんなリリィを見てレオンは微笑みながら話を続けた。
「君のその髪色は僕も本でしか見たことがないのだけれど……東洋に、藤っていう花があるんだ」
「ふじ?」
「うん。その花はね、少し変わっているんだ。普通は空に向かって咲くはずなのに、藤の花は下に向かって流れるように花弁が咲くんだ。そして、色は君の髪色と同じ薄くて淡い紫色なんだよ」
リリィは初めて聞いた花の名前に「へぇ~」と言いながら頷いた。
「藤の花も変わっているけれど、でも、人を魅了し人を惹き付ける美しさを持っている。君の髪もそれと同じだ」
「……っ!!」
初めてそんなことを優しい目で言われ、リリィの頬はカァっと熱くなる。
「そ、それとっ! 他にも理由はあるんです!!」
「理由?」
リリィは熱くなった頬を紛らわすように何度も頷く。まるで、恥ずかしがっているのを隠すみたいに。
「その……あまり覚えていないんですが、周りから髪の色以外に〝変わり者〟って言われていたんです」
「僕と一緒だね♪」
レオンの嬉しそうにする表情を見てリリィは息を呑む。
「たっ、確かに……」
「そこは否定してほしいなぁ~。レオン様は変わり者じゃありません!って」
レオンの女性の真似にリリィは苦笑する。
「えーと……話しを戻しますと、私は変わり者で気味が悪いってよく言われていたんです」
「それは、どういうこと?」
レオンの質問にリリィの顔が暗くなり、リリィはレオンから目を逸らし俯いた。
「………覚えていません。どうして私は周りからそう言われたのか……不思議と覚えていないんです。それ以外のことなら覚えているのに……」
「霊体になって記憶が消えたのかな……? でも、霊体の過去の記憶喪失となると全て消えるはずなんだけど……一部だけの損失、かぁ」
レオンはしばし考えると、自分で納得するかのように「うん」と、小さく呟きながら頷いた。
「よし、聞き込み調査をしよう」
「聞き込み調査?」
リリィがレオンに尋ねるとレオンはリリィの顔にグイッと近づいた。
「言ったはずだよ? 僕は、君の全てを知りたいって。だから、街に出て聞き込み調査♪」
「わかりました! いっ、いいから離れてくださいっ!」
リリィはレオンの肩に触れ、無理やりレオンを離す。距離を置かれたレオンは少し残念そうな顔をした。
リリィはレオンとの距離が少し離れたことに、ホッと安堵の息を吐いた。
(はぁ~、何だか恥ずかしかった……)
リリィは熱くなった頬をレオンから隠すように俯く。そして、レオンを上目遣いで見て小さく「……よ、よろしくお願いします」と、小さく呟いたのだった。
もちろん、この上目遣いは態とやったのではない。それはレオン自身もわかっていた。
リリィは権力の持つ者に興味無く、また、自分を武器として他人に媚びようとしない素直で明るい女の子だとレオンは思ったからだ。レオンはリリィの無意識にする上目遣いに驚いたのか、一瞬目を見開いた後、いつものようにリリィに微笑んだ。
「今のは結構きたなぁ……。ま、それはさておき、よろしくね幽霊姫♪」
(結構きたって、どういう意味なのかしら?)
ニコニコ笑うレオンに対し、レオンの言うことがわからず首を傾げるリリィだった。




