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第12話

 レオンとリリィの前には、それぞれ温かい紅茶とお菓子が置かれていた。

 先程、黒曜が持ってきたのだ。

 無論、リリィは普通の飲み物を飲むことが出来ないので見ることしかできない。レオンは足を組み紙とペンを持っていた。


「さぁ、君の過去を僕に話して」

「は、はい……」


 レオンの紺桔梗色の瞳に真っ直ぐ見つめられ、リリィの心臓は無いはずなのに不思議とドキッなる。レオンの視線から避けるように小さく俯くと、リリィは自分の過去を……生まれを語り始めた。


「私は……私には、親はいません。まだ赤ん坊だった頃、教会の前に捨てられていたらしいです」

「教会?」


 レオンが聞くとリリィは小さく頷き話を続ける。


「はい。そして、そこの神父様に育てられました。神父様はとてもお優しくて、時には厳しくて……ふふっ、父親がいたらこんな感じなのかな?って思ったことも何度もあります」

「へぇ~」


 リリィは当時のことを思い出すように小さな笑みを浮かべ話し出す。


「教会にいた時は幸せでした。年下の孤児の子供の面倒を見たり、遊んだりして。そして、15歳の春に養子にしたいと言ってくれた、貴族の人が現れたんです。人柄はよさそうな人でした。神父様も、きっと大丈夫だろうと言って見送ってくれたのです」


 楽しそうに話していたリリィの顔は次第に暗くなり始めると小さな声で「そして、この街に来たんです……」と、言った。


「その教会というのは、どこにあるんだい?」

「ソイユという街の教会です」

「……ソイユ」

「この帝都みたいにお店が沢山あるわけでもない、ただの田舎街です」


 リリィは「あはは……」と苦笑し、自分が育った街のことを思い出す。

 ソイユは小さな街ではあるが、周りは深い森に囲まれ、お店も少なく、街の人は幼い子供たちや老夫婦が多い。それは〝街〟というよりも〝村〟に近かった。

 この帝都みたく貴族階級の者が街を歩くことも、夜の舞踏会を開くこともない。夜は静かで、昼は子供たちの笑い声が溢れる街――それがリリィの育ったソイユという街だ。

 リリィは、同じ教会で育った子供達のことを思い出すと自然と笑がこぼれ話を続けた。


「でも、私にとっては居心地が良かったんです」

「そうなんだね」


 リリィはレオンの優しい笑みに、また恥ずかしくなる。


「あ、あの、なんだか話が逸れましたね! えっと……次は何をお話しますか?」

「そうだねぇ…養子として育ててくれた貴族の名前を聞いてもいいかな?」

「はい。フロディーテ様です」

「フロディーテ……ふーん……」


 レオンは顎に手をあてなにかを考える。それが少し気になったリリィは、レオンが何を考えているのかが気になり尋ねた。


「あの、何かあるのでしょうか?」

「ううん。なんでもないよ」


 にっこりと微笑むレオンに、リリィは何だかはぐらかされたような気持ちになる。

 レオンはリリィに聞こえないように「フロディーテか……」と小さく呟いたのだった。

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