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グール鉄鬼  作者: 大麒麟
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第九十三話 異世界の事情

 所変わって異世界。そこは今海太達がいる岩木世界とも、彼の故郷世界とも異なる、別の次元上に存在する地球上の世界。


 そこは岩木世界とも海太達の世界とも全く異なる文化の国家が栄えていた。

 フィクションの設定によくある旧時代が滅んだ後にできた文明なのか、人類の根源的なところから違う歴史を歩んだ並行世界であるのかは、少し見た程度では分からない。いやそれを知る必要性は、もうどこにもないだろう。

 何故ならその世界は、もうすぐ滅びようしているから・・・・・・


【助けてくれ!! コンロード様、我らに救いを!】

【うわぁあああああああああっ! もう駄目だ! あんなにたくさん、どんどんこっちに来るぞ!】


 その世界のあるところには、かつては百万を超える人口を抱えていた巨大都市がある。そこはコンロード教という巨大宗教勢力が国家全土の権力を掌握し、長きに渡って人類の歴史を栄えさせていた。

 だがここ数年の間に、その歴史は大きな変革がもたらされようとしている。


 国内のほとんどの工業・農業・商業の経済産業のほとんどが、今はストップしている。しかも国全体の人口は、変革前の2%以下に減少していた。

 景気が悪い程度では済まされない、この急速な衰退は何故起きたのか? 答えは簡単、国民のほとんどが怪物に喰い殺されたから・・・・・・


 コンロード教の聖地であり、国の首都で会ったそこは、もはや見る影もない瓦礫の草原となっている。

 かつてそこは、下等市民から搾り取った金を使いに使って、それは実に美しい都市であった。

 様々な装飾がなされた豪華絢爛な建物が建ち並び、歩道や塀などもかなりの高級素材で形作られていた。その街を多くの高貴なる身分の人(貴族や神官)たちが、微笑みながら散歩し、茶会を開き、劇場・競売・娼婦遊びなど、様々“高貴”な遊びにふけり、皆幸せに暮らしていた。

 まさに富と権威の強さを示す街である(海太達の観点から見れば“税金の無駄遣い”と評しただろうが・・・・・・)。


 だがそんな幸せな日常はもう訪れない。高級な資材で美しく彩られた(普通に建てられた建物よりも、実は脆い)建築物は、バラバラの破片に分解され、あちこちで火災が発生している。

 そんな凄惨な街の中を、多く新たな住人が闊歩していた。


 彼らの姿は、

 ケンタウロスの蜘蛛バージョン。

 鳥のような羽毛・嘴・羽が生えた鳥人間。

 全身に爬虫類のような鱗・下半身にトカゲのような尻尾が生えた爬虫類人間。

 等々、実に多彩な人種で満ちあふれている。


 彼らは街の建物を手当たり次第に破壊し、街の住人を無差別に殺す。そして殺した人々の死体を、バリバリと喰っている。

 中には身体の一部が砕け、血みどろになってもなお、死に切れていない人間もいた。だがそんな者もお構いなく、皆彼らのごちそうとなっていった。


「助け・・・・・・助けてくれ・・・・・・・・・死にたくない・・・・・・いやだいやだいやだ・・・・・・」


 まだ生きていて意識もある内に喰われていく感覚というのは、どのようなものであろうか? 食事をしている当人達には、それを気にしている者は誰もいなかった。






 首都から少し離れた位置にある森の中、そこにはコンロード教の神殿の一つがある。

 大きな石造りで、赤い三角屋根、美しい色合いが組み合わさった硝子で作られた窓、などが存在する、これもまた金がかかってそうな神殿だ。


 長い間手入れが疎かにされて、内装はすこしすすくさいその建物の中に、今は久しぶりに大勢の人間が中でごった返していた。

 彼らは別に巡礼に来たわけではない。そこに数百人と箱詰めになっているその人々は、全員この国でも上位の貴族・神官とその家族達、そしてその護衛の兵士達である。


 海太達の感覚であれば、かつてのヨーロッパの貴族衣装に、異民族的なアレンジが施されたデザインの高級服を着た人々。金色に彩色された(機能的な意味はなさそうだが)鎧を着た兵士達。

 ついこの間まで、都市の中で、外の情勢など全く気にとめずに贅沢三昧な生活をしていた彼らが、何故こんなところにいるのだろうか?


【何をしている!? まだ転移魔法の準備とやらは終わらんのか!?】

【もう奴らは、すぐ近くにいるかも知れないのよ!? あたしは喰われるなんて嫌よ!? そういうのは下民共の役目でしょう!? 身分違いもいいところだわ!】

【おい! 何故お前までここにいる!? 大して金もない家系が、無駄に人を増やして迷惑だ!】


 かつては多くの巡礼者が、高司祭からのありがたい言葉を聞いていた、神殿内の礼拝場。

 だがそこは神秘・高貴とは無縁な、汚い言葉が飛び交う騒乱の場となっている。押しかけた人数分の椅子が足りず、階位と強い護衛を持った者が優先的に席を取る。他では席の取り合いで、これまた汚い罵り合いが起こっている。たかが数分立たされている程度のことでである・・・・・・


 彼らの多くが罵声を浴びせている場所。本来司祭が立っているはずの礼拝奥の机には、これまた金がかかっていそうな身なりの者が、王様のように堂々と座っている。

 このRPGの僧侶の衣装を派手にしたような装いの肥満気味の中年男性こそ、この国最高権力者=教皇である。

 彼の隣にいた将兵クラスと思われる護衛の兵士が、猿群れのように鳴きわめく彼らの言葉に、怒声を上げて答える。


【静まれ! 転移魔法は高度な術式だ! 下手なやり方をすれば、どんな危険地帯に飛び込む判らんのだ!】

【それをどうにかするのが教皇だろうが! 教皇様は神の力を授かり全能のはずだろう!? だったらその神の力をとっとと見せやがれ!】

【黙れ! 黙らんと全員死罪にかすぞ!】


 兵士の言葉に、その場は一瞬静まった。だがそれは“死罪”という言葉に怯えたからではない。むしろその逆である。

 しばらくすると礼拝堂一帯に乾いた笑いが何重にも重なって発せられてきた。


【死刑だ~~~? やれるもんならやってみろよ? もう国も金もないてめえらなんぞ、ただの肥えた豚だろうか? なんならこの場の全員で、お前らを締め上げてやろうか?】


 軍人と思われる屈強な男の言葉に、大勢の者達が同意の言葉を上げてくる。中にはその場で殺せ、無駄な人数を減らせという言葉もある。


 先ほどから一言も喋っていない教皇。最初は見栄を張って堂々とした態度で皆を見下ろしていた。

 だが今の彼は追い詰められたウサギのように恐怖で震えている。自分たちを殺せという言葉に、冷や汗を滝のように垂れ流している。


(何故じゃ? 何故儂がこんなことを言われるのじゃ? 儂は教皇じゃぞ・・・・・・教皇はこの世で一番高貴なはずじゃぞ?)


 ほとんど幼児のような思考しか持てていない教皇。彼は生まれた頃からの金持ち貴族。これまで誰から、責められたり罵られたりといった経験はほとんどない。

 彼の思い出にあるのは、皆が皆自分を偉大なる神の子だと崇め奉り、何もかも思い通りに生きていた記憶だけだ。


 その時に、その騒がしい礼拝場に駆け込んでくる者がいた。それはこの神殿周囲の警備をしている、コンロード神聖国の兵士の一人である。


【大変です! この神殿の位置に向かって、大勢の下等市民達が押し寄せ来ます。確認する限り、少なく見積もって一万以上! どうやら貴族の一部が、ここに向かって移動しているのが、どこかで漏れたようです!】






 道と言える物がどこにもない熱帯の森の中を、数え切れないほどの数の人間が蟻の群れのように、ワラワラと歩いている。

 皆、全身が汚れきっており怪我をした者も多い。その表情は一様に、疲労と絶望のどん底に落とされている。


 ここは一般に人が入り込むような所ではない。それが街一つ分の数の人間が、草木を掻き分けて強引に前進しているのだから異様である。

 彼らが通った先には、完全に草や土が踏み固められて、大分平らになっている。時々力づいて倒れた者達の姿もある。酷い中には人に踏みつけられ続けて、既に絶命している者もいた。

 それ以外にも、森の肉食獣に捕まって、行方知れずになっている者もいる。


【ちくしょう、何でだ? レグンは滅ぼしたのに、どうしてあの化け物はいなくならないんだ?】


 途中で誰かが、ぼそりとそう呟いた。彼のその言葉は、この国に誰もが疑問に思っていたことである。


【・・・・・・今更何言ってんだ? 決まっているだろう・・・・・・教皇様は俺たちを騙してたんだよ。前からおかしいと思ってたんだ。あの化け物共、レグンさえ襲ってたっていうし】


 皆が疲れ切っている中、それに答えられる者はいないと思いきや、一人の若い男がそう呟くように言った。

 だがそれは彼らが今まで信じてきた物を完全に否定する物であり、それに今まで死んだよう表情だった男に怒りの感情を沸き上がらせた。


【てめえ! 教皇様を侮辱する気か! 教皇様が我々を騙すものか! この反国者が!】

【それ以外に何があるって言うんだよ!? 実際に教皇様は、俺たちを見捨ててアサギ神殿にいってんだろうが!】

【違う! 教皇様は何か考えがあって、アサギに行かれたのだ! だから俺たちは教皇様についていってんだろうが!】


 その場で叫び合い殴り合う二人。他の者達は、そんな無駄に体力を消費している二人を無視して、黙々と神殿のある方角の森の奥へと入っていった。






 今この世界にいる人々は、大昔は別の世界に住んでいたという。だがその世界は度重なる魔法戦争によって瘴気に汚染され、大部分が人が住めなくなった。

 このまま世界が滅びるのかと、誰もが絶望しかけたときに、彼らに救いの手を差し伸べたのが“コンロード”という異世界の大魔道士だと言われている。


 彼女は生き残った人々を、その死にかけた世界から避難させ、当時無人だったこの世界に移住させた。人々は彼女に多大な感謝と敬意を送り、やがて彼女を神として崇めるようになった。


 だがコンロードが移民させたのは、その人々だけではなかった。彼らの故郷とは別の世界から、また別の難民をこの世界に移住させたのだ。

 彼らの一族の名は“レグン”という。人と鶏を合わせたような姿の亜人族である。レグン達は、先に移住した人間達と、かなり近い言語形態を持っている。だからこそ、同じ所に住まわせたらしい。


 だが彼らは魔法が使えなかった。そのかわり記憶力・計算能力が高く、そして手先がとても器用。彼らの一族の技術者は、人間を遙かに凌ぐ能力を持っていたという。

 その他に、文化などの面で、人間達とは大きく異なっていた。


 彼らが住んでいるこの大陸とは別の土地にも人が住んでいるらしいが、そこの人種がどうなっているのかは不明である。

 少なくともこの土地に住んでいる者達にとっては、レグンはこの世界でただ一つの異端の種であった。


 そんな自分たちは様々な面で違いが見られる彼らを、人間達は気味悪がり差別しようとした。だがそれはコンロードが許さなかった。

 コンロードは彼らと無理に共存せずともいいが、決して争っては行けないと説き、双方は渋々それに従った。


 やがてコンロードがこの世界から去る。双種族は交流こそしないものの、決してコンロードの言いつけを破ることなく、お互い争うことなく平和な時を過ごしていった。


 だが時が流れて、今から三年前。二種族の均衡が壊れる事態が起こった。

 この世界に無理矢理開けられた異界の門から、謎の魔物がこの大陸に侵入してきたのだ。それは別の世界では“人妖”“ワールドビースト”と呼ばれる者達であった。


 彼らはその圧倒的な力で破壊を尽くした後、何故か火が燃え尽きたかのようにあっさりと死んでしまった。当時の彼らは、まだこの世界の環境に適応し切れていなかったようだ。

 だがそんな事件が何度も頻発しておき、人々はどこからともなく現れる謎の怪物に恐れおののいた。


 そんな時コンロード教皇が、全国民に向けてこんなことを言い出した。


【我ら教団の調査の結果、あの魔物達はレグン達が生み出し差し向けたことが発覚した。やつらはコンロード様の教えを破り、我らを滅ぼし、この世界を自分たちだけの物にするつもりなのだ!

 これは断じて許せん! 我らは人類の尊厳とこの世界の平和のために、悪しき種族・レグンと戦わなければならない。長きにわたる誓約が壊れるのはもはや致し方ない! これは奴らの方が先に仕掛けたことだ!】


 ・・・・・・言うまでもないが、これは全くの嘘である。

 実際は全くの逆、レグン達を嫌悪する教団が話をでっちあげて、彼を滅ぼす口実を作ったのだ。


 魔物達が何者なのかなど、彼らは全く知らない。当時はまだ魔物による被害は、月に何件か村が潰される程度であった。

 これはこれで大惨事であるが、貴族や神官達にとっては些細なレベルの災害である。人が死んで税収の取り口が減れば、残っている民の税率を上げればいいだけのこと。当然その些細な災害を最終的にどう片付けるかなど、誰もほとんどまじめに考えていない。

 放っておいても、そのうち自然と収まるのだろうと、簡単に思い浮かんでいた。富と権威と長きにわたる平穏は、国の中枢の者達の頭をかなり鈍らせていた。


 やがてレグンと人間との戦争が始まった。最もレグン達の方はすぐに戦いに出たわけではない。最

 初に自分たちはそんな陰謀など行っていないと、人間側に弁明した。だが人間達は対話自体を受け入れようとしなかった。

 それどころか交渉に来た使者を捕らえ、なぶり殺しにして、見せしめに街の中に死体をつるし上げた。さすがにこれにはレグン達も激怒し、やがて戦争が始まった。


 戦争は二年近くに渡って続いた。戦争でたくさんの人が死ぬ一方で、魔物達による犠牲者も次々と増えていく。

 魔物達は人間だけではなく、レグンさえも襲いかかっていた。この辺りで、魔物=レグンの手先という教団の説明はおかしいと主張し始める者が現れた。

 だが彼らは虚言を吐いて国を惑わせようとする反国者として、皆処刑されていった。この辺の凶行から、教団の嘘に気づく者もいたが、その数は気づかない者よりも圧倒的に少なかった。


 やがて多くの犠牲者を出しながらも、戦いは人間側が勝利した。全滅寸前にまで追いやられたレグン達は、かつてコンロードが残したという秘宝を使い、異世界へと逃げていった。

 これによってこの少なくともこの大陸からは、レグン達は実質滅亡し、この大陸は人間一種族だけの物となった。


 これで魔物達の襲来は収まり、元の平和な生活に戻れると誰もが信じた。

 魔物によって友を家族を失った者達は、ついに仇を討つことができたことに喜ぶ。生き残った者達はお互いを慰め合い、そして悲しみを乗り越えて、これからの未来を前向きに生きていこうと決意した。


 だが現実には・・・・・・平和など訪れなかった。

 魔物達の襲来は収まらない。それどころか被害は更に拡大していく。最初はこの世界の環境に適応しきれずに、すぐに死んでしまっていた魔物達。

 だが時間が流れるにつれて、彼らは進化していった。この世界にどんなに居着いても死ぬことはなくなり、それどころかどんどん増殖していった。


 レグン族は滅びたのに何故? 異界に逃げた者達がまだ何かしているのか? それとも彼方の大陸に住む者達の仕業か? 人々は思っていたのとあまりに違う現実に戸惑った。

 やがて教団や国々の権力者達も、この魔物の襲来は、政権利用などにやってられる余裕のある存在でないことにようやく気づく。


 魔物=レグンの手先、という調査結果を出した教団の魔法局には、連日報道者や不満を口にする人々が押し寄せて、何度も暴動が起こった。

 世界の人口が七割ぐらいになったところで、魔法局はこれ以上教団側につくのは得策ではないと考え、事実を全て暴露した。レグンと魔物達には、何の関連性もないと・・・・・・。自分たちは教団に脅されて、仕方なく嘘の調査結果を出したのだと・・・・・・


 当然その発表を受けた後、暴動の域を超え内乱まで勃発した。魔法局の暴露を信じる者と、未だに教団の無実を信じる者とで、各国は大混乱に陥る。

 だがそれはすぐに鎮まることになる。魔物達は加速度的に増え、もはや人間同士で争っている余裕などなくなったから。


 魔物達の圧倒的な数と戦闘力に、国々は次々と喰い潰され、あっというまに世界は滅亡の一歩手前、すなわち現在のような状況に陥っていった。






 教皇達が向かったという神殿に向かって、黙々と進む一行。次第に進路の邪魔になっていた木がなくなり、大きな街道の中に出た。

 ここはかつて、別の都市と神殿をつなぐ道であった。今は通る者が少なくなり、道には雑草が生い茂っているが、これまで通ってきた道と比べればどうということもない。


 普通はこの見晴らしのある所は、今の時勢では危険なのだが、幸い周りに魔物達の姿はない。これに人々の表情が僅かに綻んだ。

 このまままっすぐ進めば、迷うことなく神殿に辿り着く。結構広い道であったため、一万人近い人々は全員が街道の中に立つことが出来た。


 やがて再び歩き出す人々。やがて進みゆく前方の道から、こっちに向かって何かが接近しているのが見えた。


【聖騎士団だ! 我らを救いに来てくれたんだ!】


 馬にまたがり、金色の甲冑を纏った兵士達=聖騎士達が数十人ほど、この難民達の前に立つ。

 これに人々は歓喜した。聖騎士団は既に壊滅したという話だったが、まだ生き残りがいたのだ。だがその聖騎士が口にした言葉は、彼らの期待を完全に裏切る者だった。


【貴様らは教皇様の行く道を汚し、我らの神事を妨害しようとした! よって貴様らを神の名の下に全員処刑する!】


 あまりの言葉に人々が動揺する中、騎士達が一斉に腰の物を抜剣していく。彼らが精神を集中すると、聖騎士達の持つ魔法の力が、その魔道剣に流れ込んでいく。

 雷の力を宿し、バチバチと小さな電光を発しながら、剣身が紫色に発光するロングソード型の魔道剣。そしてその切っ先を、突き刺すように難民達に向けた。


【おっ、お待ちください、誤解です! 我らは教皇様の邪魔をする気など何も!】

【聖騎士様! 我らをお助けください! もう聖都は滅ぼされました! 我らにはもうどこにも行くところがないのです!】

【私の国は、影も形もなく焼かれました! もう教皇様以外に頼れる者がいないのです!どうかお願いします!】


 難民達は必死になって、聖騎士達に懇願した。中には危険を察して、その場から逃げ出す者もいたが、大部分はあくまで教皇と聖騎士を信じ、その場にとどまっている。

 そんな彼らに聖騎士の出す答えは・・・・・・


【はぁ? 馬鹿かお前ら? 何で下民なんかを我らが助けねばならないのだ? 役に立たない家畜は処分するに決まってるだろう。自分に教団から慈悲をもらう価値があると思っているとは、とんだ思い上がりだ! いやむしろそれは教団への侮辱だ! 汚らわしい虫けら共が、ここでその罪深い命を償うがいい!】


 仮面でその表情は見えないが、その声は相手を心の底から軽蔑しきった、実に醜い声だった。


 聖騎士達の剣から、一斉に魔法の雷が放たれる。今のは聞き違いかと、もう一度言葉を上げようとした人々に、それは容赦なく降りかかった。

 象すらも一撃で丸焦げにする雷撃の嵐が難民達を襲う。難民達は悲鳴を上げる暇すらなく、一瞬で感電し焼かれ炭化していく。僅かで数秒で、そこは墨を撒き散らしたかのように黒い物体が積み重なった、炭山の街道と化した。


【うむ。やはり悪を滅ぼすのは、いつやっても清々しい者だ♪】


 そう口にし、聖騎士達は意気揚々と神殿に戻っていった。


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