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20、螺旋の出現

 地平線の先に落ちた赤い雷は螺旋だった。

 陸とアイルは空にそびえる2機の螺旋を見上げた。

「螺旋と偽螺旋」

 アイルは2つの螺旋を見比べた。

「どっちが本物の螺旋なんです?」

「決まっていること聞く意味ない。こっちよ」

 アイルは迷うことなく自分の螺旋を指さした。

「これは偽螺旋。いずれは破壊すること必要なもの」

「……」

「いま続きのこと引き継ぐやってもいいことね。どうする?」

「やらないよ」

 陸は自分の螺旋を見上げた。

「でもどうして螺旋がここにあるんだろ」

「終わりよければすべてよしということ」

 アイルは以前までやっていたように螺旋に乗り込もうとした。

「xb?」

「どうしたの?」

 アイルは何度も螺旋の前で手をかざした。

 しかし何も起きなかった。

 陸が螺旋に乗りこむときは、螺旋から放たれた青い光が自分の体を包み込み、螺旋と一体化した。

 おそらく、アイルも同じように螺旋と一体化していたのだろう。

 しかし、できないらしい。

 陸も同じように螺旋に乗り込もうとした。

 しかし、螺旋から青い光が放たれることはなく、螺旋は鉄の塊に還元したようにピクリとも動かなかった。

「螺旋に乗れない」

「壊れたこと? ざけんじゃねえぞ」

 アイルはマニアックな語彙を良く知っていた。

「死ぬことまでここにいるってこと? ざけんじゃねえぞ」

 アイルの機嫌が治まらなかった。はたから見ていると、宇宙を背負う器にはとうてい見えなかった。


 恵梨香は螺旋が消えたポイントを見つめていた。

 恵梨香の隣には友香がいて、母親と同じ場所を見ていた。

 今日は螺旋捜索の最終日であり、まもなく宇宙船は太陽系に帰還することになっていた。

 恵梨香はこれから起こるすべてのことを理解しているような目つきをしていた。

「まもなくだ、友香。良く見ておきなさい」

「はい」

 友香は表情1つ変えなかった。友香のこの態度は四六時中同じだった。

 ただこれから起こることに身を任せているだけのようだった。

 そこに自分の意志はない。

「時が来た」

 恵梨香は身を前に乗り出した。


 ややあって、螺旋が消えたと思われる場所に青い光が現れた。

 それはローラの輝きに似ていた。優しい輝きだった。

 科学者たちはすぐその光を感知した。

「突発的に光が。発生源は特定できません。この近くですが、光体発生源が発生する科学的根拠が……」

 観測センターでは科学者たちが慌ただしく動き始めた。

 しかし、恵梨香はすべてをわかっているかのように冷静だった。

 恵梨香は友香に言った。

「友香、祈れ。地球の螺旋だ」

「はい」

「螺旋は1つでいい。今日は特別な日。大日本帝国の復活の日だ」

 恵梨香はにやりと笑った。


 螺旋消失ポイントから青い光が放たれるのと同時刻、陸の体に青い光がまとわりついた。

 螺旋と一体化するときと同じ光。どうやら、地球の螺旋は本来の力を呼び戻したようであった。

「なんであーただけ。私は?」

 アイルは陸に不満げな目を向け、アルマゲストの螺旋と向かい合った。

「bbbXXX! XXnXb!」

 アイルはありったけの激励の言葉を螺旋に送った。

 その言葉が届いたのか、アイルの体にも赤い光が灯った。

「bbX! ちょー気持ちいいって感じ!」

 アイルは初めて満面の笑みを浮かべた。

「螺旋動いたことの後、続きを引き継ぐこと! わかったこと?」

 陸が応える前に、両者はそれぞれ螺旋と一体化した。


 陸は螺旋の体と一体化したとき、いつもと違うものを感じていた。

 これまでは、螺旋と一体化したとき、陸は一人だった。

 螺旋は聖域だ。陸ではない何人も螺旋に入ることはできない。

 しかし、今回は背中に重さを感じた。

 何かを負ぶっているような感じがした。

「なんだろう……」

 陸は背中の違和感をたしかに感じ取っていた。


 2機の螺旋の姿が暗黒宇宙に現れた。

「何かが例の地点に出現。この反応は……螺旋です」

 観測センターはさらに慌ただしくなった。

 螺旋捜索の総指揮は恵梨香だったので、恵梨香は現場に指示を出した。

「ここにしばらく待機」

「ですが、螺旋計画の本部からは帰還命令が出ています。ケネディ大統領もまもなく帰還します。その指示を受けるべきでは?」

 科学者たちはそう言ったが、恵梨香はこう返した。

「私がすべての責任を取る。ここに待機」

「わ、わかりました。何か策があるのですか?」

「今日という日を覚えておくがいい。新しい宇宙秩序が誕生する日だ」

 恵梨香のその言葉を理解できた者はいなかった。


 暗黒宇宙に現れた2機の螺旋は向かい合った。

「螺旋が戻ったこと、続きのことよ」

 アイルは地球螺旋に対して戦闘の意志表示をした。

 しかし、陸は何も答えなかった。

「どうした? 怯えること?」

「……」

「そう……」

 アイルは肩の力を抜いた。

「そうね、お腹空くことだものね。私も類似のことよ。次にすることにすることドンピシャ、正々堂々それ了解」

 アイルはそう言うと、戦闘態勢を解いた。

 先ほどの索漠とした世界を抜け出し、陸とそれなりに打ち解けたこともあり、いまは戦う気分ではなかった。

 陸もおそらく同じ気持ちだろうと思った。

 アイルは地球螺旋に微笑みかけると、背中を向けた。

 戦いは次の場で正々堂々と行おう。地球とアルマゲストの誇りをかけて。

 アイルは自分の故郷のほうに目を向けた。

 恒星ローラが見えた。美しい輝きを放つこの星はアルマゲストと地球の間にあり、2つの世界をつなげる架け橋になっていた。

 あるいはアルマゲストと地球にコロシアムの舞台を用意するものだったかもしれない。

 しかし、アイルには希望の光に見えた。

 アイルは愛国者だった。アルマゲストのために尽くすために螺旋に乗ると決めた。

 しかし新しい方法があるのかもしれない。

 アイルはアルマゲストに戻ったらその方法を考えようと思った。


 アルマゲスト螺旋はローラに向けて前足を踏み出した。

 そのときだった。


 地球螺旋が鋭いステップでアルマゲスト螺旋の背中に迫った。

 地球螺旋の鋭い右手が敵螺旋を貫いた。

 不意打ちだったためその攻撃を避けることはできなかった。

 いや、不意打ちでなかったとしても避けることができなかったかもしれない。

 明らかにかつての螺旋を超越した速度とパワーだった。

 アイルは即座に戦闘モードになった。

「xxxhxhhbx!」

 アイルは不意打ちという卑怯な手を使った陸を罵る言葉を叫んだ。

 アイルは地球螺旋と向き合うとすぐさま攻撃に転じた。

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