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未来の失敗が見える子供は、全部避けて進む ~一歩ずつ間違えない選択が、世界を変えていく~  作者: 黒川レン


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第9話 門前の火

 外で、起きる。


 その確信だけが、はっきりしていた。


 門前。

 黒い袋。

 そして、火。


 断片は短い。だが十分だ。


 止めなければ、燃える。


 屋敷ではない。

 門だ。


 だが、それで終わらない。


 門が燃えれば、騒ぎになる。

 騒ぎになれば、王都の監査が入る。

 そして――


 帳簿の問題が、表に出る。


 繋がっている。


 すべて。


 僕は、父を見た。


 まだ、間に合う。


 だが、時間はない。


「護衛を出せ。三人でいい。相手の動きを見ろ」


 父の指示が飛ぶ。


 外へ。


 門へ。


 もう動き始めている。


 遅い。


 このままだと、間に合わない。


 止める。


 もう一度。


 今度は、直接。


 僕は大きく身体を揺らした。


 強く。


 はっきりと。


「――ああああああっ!!」


 泣き声が響く。


 さっきよりも大きい。


 意図を持った拒絶。


 空気が揺れる。


「アルト!?」


 母が抱きしめる。


 父も振り返る。


 いい。


 止まれ。


 止まって考えろ。


 僕は泣き続ける。


 ただの泣きじゃない。


 “急げ”の逆だ。


 “行くな”だ。


「……」


 父が止まる。


 思考が揺れる。


 だが、足りない。


 まだ、確信が足りない。


 もう一押し。


 僕は、視線を動かす。


 ゆっくりと。


 扉の外。


 門の方向へ。


 そして――


 強く、目を見開く。


 不自然なほどに。


 赤ん坊が、何かを“見ている”ように。


 父の目が、細くなる。


 気づいた。


 違和感が、形になる。


「……待て」


 低い声だった。


 だが、はっきりしている。


 使用人の動きが止まる。


「護衛を二手に分けろ。門の外と、内側だ」


 変わった。


 配置が変わる。


 それだけで、未来はズレる。


「火の気を警戒しろ。水を持たせろ」


 来た。


 核心だ。


 父はまだ知らない。


 だが、“火”を予測した。


 それで十分だ。


 僕は泣き止む。


 静かに。


 タイミングを合わせて。


 不自然だ。


 だが、もう誰も指摘しない。


 指摘できない。


 空気がそれを許さない。


「……妙だな」


 父が小さく呟く。


 だが、その目はもう違う。


 疑っている。


 状況を。


 そして――


 僕を。


 それでいい。


 信じる必要はない。


 疑えばいい。


 疑いは、思考を変える。


 それが狙いだ。


「行け」


 父が手を振る。


 護衛が走る。


 門へ。


 速い。


 だが――


 間に合うか。


 僕は目を閉じる。


 断片が来る。


 門前。


 男が立っている。


 笑っている。


 護衛が近づく。


 会話。


 そして――


 袋。


 落ちる。


 火。


 上がる。


 だが――


 今回は違う。


 護衛が気づく。


 水を投げる。


 炎が小さい。


 消える。


 男の顔が歪む。


 失敗だ。


 そこで映像が切れた。


 僕は目を開ける。


 息を吐く。


 成功だ。


 完全ではない。


 だが――


 止まった。


 門の火は、防げた。


 その瞬間。


 外から、声が響く。


「火だ!」


 続いて。


「いや、消えている!」


 ざわめき。


 混乱。


 だが、炎は広がらない。


 止まっている。


 屋敷の中の空気が、一瞬だけ緩む。


 ほんの一瞬。


 だが確かに。


「……ふむ」


 父が目を細める。


 外の様子を聞く。


 状況を整理する。


 そして――


「中に入れるな。拘束しろ」


 来た。


 次の段階だ。


 防ぐだけじゃない。


 捕まえる。


 原因を。


 敵を。


 流れが、攻勢に変わる。


 いい。


 それでいい。


 僕は静かに息を整える。


 これで一つ。


 大きな破綻は防げた。


 だが――


 終わりじゃない。


 むしろ、ここからだ。


 敵は一人じゃない。


 断片はまだ残っている。


 地下。


 帳簿。


 そして――


 もっと大きな流れ。


 王都。


 その時。


 頭の奥で、また断片が弾けた。


 今度は、広い場所だ。


 石造りの建物。


 人の列。


 そして――


 掲げられる紙。


 ヴァレイン家の名。


 だが、違う。


 燃えていない。


 まだ。


 その代わり――


 別の名前が、そこにある。


 知らない名だ。


 だが、重要だ。


 理解した。


 敵は一人じゃない。


 “組織”だ。


 僕は、ゆっくりと目を開けた。


 未来は変わった。


 だが、問題は増えている。


 次は――


 もっと大きい。

門の火は、なんとか止まりました。

ただ、それで終わるほど簡単な話ではなさそうです。


ここからは「個人」ではなく「組織」との戦いに変わっていきます。


もし少しでも面白いと感じていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、捕まえた“敵”から何が見えるのか。

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