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未来の失敗が見える子供は、全部避けて進む ~一歩ずつ間違えない選択が、世界を変えていく~  作者: 黒川レン


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第13話 出発前夜

 屋敷が、外へ向かって動き始めていた。


 昨日までとは違う。


 同じ廊下。

 同じ人間。


 だが、流れが変わっている。


 内側に閉じていた動きが、外へ開いている。


 王都へ。


 その一言で、すべてが変わる。


「荷は最小限にしろ。道中で補給する」

「護衛は?」

「増やす。門の件がある以上、同じ手は来る」


 父の声が響く。


 短く、的確に。


 無駄がない。


 いい状態だ。


 だが――


 安心はできない。


 むしろ、ここからが危険だ。


 屋敷の中では、まだ制御できた。


 外では、できない。


 僕は乳母に抱かれながら、静かに周囲を見る。


 準備が進んでいる。


 馬。

 荷車。

 武器。


 そして――


 人の顔。


 緊張している。


 だが、迷いは少ない。


 父の判断が、全体を引っ張っている。


 いい流れだ。


 だが――


 足りない。


 まだ、見えていないものがある。


 頭の奥が、わずかに疼く。


 断片が来る。


 夜。


 道。


 揺れる光。


 そして――


 音。


 矢の音。


 短い。


 鋭い。


 それで終わる。


 映像が切れる。


 短すぎる。


 だが、十分だ。


 来る。


 移動中に。


 外で。


 狙われる。


 当然だ。


 門で失敗した以上、次は確実に仕留めに来る。


 なら――


 対策を打つ。


 今のうちに。


 僕は、ゆっくりと身体を揺らした。


 小さく。


 だが、繰り返す。


「どうしたの、アルト」


 母が覗き込む。


 僕は答えない。


 代わりに、視線を動かす。


 窓の外。


 道の方向へ。


 そして――


 ゆっくりと、目を細める。


 不自然なほどに。


「……外が気になるの?」


 母が言う。


 いい。


 気づいた。


 だが、足りない。


 もう一押し。


 僕は、再び身体を揺らす。


 今度は少し強く。


 そして――


 短く泣く。


「……」


 母が父を見る。


 言葉はない。


 だが、意図は伝わる。


 父がこちらを見る。


 長い。


 深い。


 考えている。


 そして――


「……夜は動かない」


 言葉が落ちる。


 変化だ。


 予定が変わる。


「昼に出る。視界がある方がいい」


 理由が付く。


 自然に。


 だが、それだけでは足りない。


 矢は昼でも飛ぶ。


 問題は、“見えない攻撃”だ。


 もう一手。


 僕は、視線を動かす。


 今度は――


 護衛。


 武器。


 そして、空。


 順番に。


 ゆっくりと。


「……上か」


 父が呟く。


 来た。


 届いた。


「弓か」


 言葉が具体になる。


 いい。


 これで防げる。


「盾を持たせろ。上を警戒させる」


 指示が飛ぶ。


 護衛が動く。


 流れが変わる。


 未来が、また一つズレる。


 僕は静かに息を吐く。


 これで――


 矢は防げる。


 少なくとも、一度目は。


 だが――


 それで終わらない。


 敵は一手で終わらない。


 断片は短い。


 だが、“一度”しか見えないということは――


 その先がある。


 別の手。


 別の攻撃。


 それが来る。


 その時。


 父がこちらを見る。


「……本当に妙な子だな」


 呟き。


 だが、否定ではない。


 受け入れている。


 変化だ。


 関係が、一段進む。


「だが、悪くない」


 短い言葉。


 それだけで十分だ。


 信頼ではない。


 だが――


 “使う価値がある”と認めた。


 それでいい。


 僕は目を閉じる。


 次を探す。


 断片を。


 来る。


 今度は、少し長い。


 道。


 昼。


 馬車。


 護衛。


 そして――


 止まる。


 何もない。


 静かだ。


 その瞬間。


 地面が崩れる。


 落ちる。


 馬車が。


 護衛が。


 すべて。


 そこで映像が切れる。


 罠だ。


 次は、下から来る。


 僕は目を開けた。


 未来は変わる。


 だが、敵も変わる。


 それを前提に動かないと、間に合わない。


 僕は静かに呼吸を整える。


 次は――


 地面だ。

王都へ向かう準備が整ってきましたが、敵もそれを待っているようです。


一つ防げば、次が来る。

その繰り返しの中で、どこまで先回りできるかが鍵になりそうです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次は――移動中に仕掛けられる“罠”です。

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