第12話 行き先の決定
次は、そこだ。
そう思った瞬間に、問題が現実へ戻ってくる。
王都。
学びの場。
未来では、そこに“僕がいる”。
だが今は違う。
僕はまだ歩けない。
言葉もない。
選択肢は限られている。
つまり――
“行かされる理由”を作るしかない。
書斎の空気は、少し落ち着いていた。
男は拘束されたまま。
父は指示を出し終え、短い沈黙が流れている。
嵐の前ではない。
嵐の“後の整理”だ。
だからこそ、次が重要になる。
「王都に報告はするのですか」
母が静かに言った。
核心だ。
父が視線を上げる。
「する。しない理由がない」
即答だった。
迷いがない。
つまり――
流れは王都へ向かう。
いい。
方向は一致している。
だが、それだけでは足りない。
“行く”だけでは意味がない。
“関わる”必要がある。
僕は、ゆっくりと息を整えた。
考えろ。
どうすれば、自然に組み込める。
赤ん坊が王都へ行く理由。
普通ならない。
だが――
“異常”なら、ある。
その時。
頭の奥で、断片が弾けた。
さっきの続き。
王都。
建物。
若い顔。
そして――
誰かが言う。
「推薦だ。特例として受け入れる」
言葉がはっきりしている。
推薦。
特例。
つまり――
普通じゃないルートだ。
条件がある。
“異常性”。
それを示す必要がある。
僕は目を開けた。
父を見る。
そして――
ゆっくりと、手を動かす。
空中に。
意味のない動きに見える。
だが、連続させる。
同じ形を。
繰り返す。
さっき描いた“紋章”と同じように。
「……またか」
父が呟く。
気づいている。
繰り返しに。
偶然ではないことに。
いい。
それでいい。
僕は動きを止めない。
一定のリズムで。
正確に。
赤ん坊には不自然なほどに。
「あなた」
母が小さく言う。
「この子……」
「分かっている」
父の声が低い。
だが、否定しない。
拒絶もしない。
観察している。
そして――
評価している。
空気が変わる。
ほんの少し。
だが決定的に。
「……偶然ではないな」
父が言った。
初めてだ。
明確に、“そうではない”と認めたのは。
関係が変わる。
完全ではない。
だが、一段階進む。
「何かを見ているのか」
問いかけ。
だが、答えは求めていない。
確認だ。
自分の中の仮説の。
僕は、動きを止めた。
そして、父を見る。
逃げない。
ただ、それだけ。
だが、それで十分だ。
「……」
父が黙る。
長い沈黙。
思考が動いている。
そして――
「王都に連れて行く」
言葉が落ちた。
静かに。
だが、重く。
来た。
決定だ。
母が驚く。
「この子を?」
「このままここに置いておく方が危険だ」
理由が作られる。
自然に。
合理的に。
いい流れだ。
「監査も入る。状況が動く。……なら、手元に置く」
嘘ではない。
だが、本質でもない。
それでいい。
表の理由と、裏の目的が一致していれば問題ない。
僕は静かに息を吐く。
これで一つ。
道が確定した。
王都へ。
未来に繋がる場所へ。
だが――
終わりじゃない。
むしろ、ここからが本番だ。
頭の奥で、断片が弾ける。
今度は、少し先だ。
王都。
建物。
廊下。
そして――
誰かが立っている。
振り返る。
目が合う。
知らない顔。
だが、強い。
明らかに。
そして――
その背後。
同じ紋章。
さらに上。
繋がっている。
完全に。
理解した瞬間、冷たいものが走る。
これは終わらない。
王都に行っても。
その先がある。
だが――
止まる理由にはならない。
むしろ、逆だ。
進むしかない。
僕は、ゆっくりと目を開けた。
父が指示を出している。
準備が始まる。
屋敷が動く。
今度は――
外へ向かって。
未来は変わった。
道もできた。
だが、その先には――
まだ見えていない敵がいる。
第1章の流れが一つの区切りに近づいてきました。
アルトの「行き先」が決まり、物語は次の段階へ進みます。
ここから先は、さらに広い世界と大きな敵が関わってきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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次は――王都へ向かう“移動”と、その途中で起きる出来事です。




