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未来の失敗が見える子供は、全部避けて進む ~一歩ずつ間違えない選択が、世界を変えていく~  作者: 黒川レン


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第11話 名前のない上位者

 次は、王都だ。


 そう結論した瞬間に、問題が一つ消えた。


 そして、十は増えた。


 規模が変わるというのは、そういうことだ。


 屋敷の中で完結していた問題が、外に繋がる。

 外に繋がれば、制御できない要素が増える。


 つまり――


 僕の手が届かない。


 書斎の空気は、さっきまでと違っていた。


 緊張はある。

 だが、方向が定まっている。


 敵が“見えた”からだ。


「王都の商会……か」


 父が低く呟く。


 だが、その声には迷いがある。


 完全には掴めていない。


 当然だ。


 商会は“手段”であって、“本体”ではない。


 問題は、その上にいる。


 名前のない上位者。


 そこに届かない限り、終わらない。


「吐かせろ」


 父が短く言う。


 護衛が男を引き起こす。


 さっきまでの軽さは消えている。


 圧が増している。


「誰の指示だ」


 真正面からの問い。


 逃げ場はない。


 だが――


 男は笑った。


 まただ。


 だが、さっきとは違う。


 少しだけ、歪んでいる。


「知らないな」


「嘘だ」


「本当だよ」


 軽い。


 だが、耐えている。


 まだ崩れない。


 理由は分かっている。


 “上”が怖いからだ。


 目の前の父よりも。


 なら――


 そこを崩す。


 恐怖の対象を、入れ替える。


 僕は男を見る。


 じっと。


 逃げない。


 断片と照合する。


 暗い部屋。

 机。

 向かいの影。


 あの時、この男は怯えていた。


 表には出していなかったが、確実に。


 つまり――


 完全に従っているわけじゃない。


 利用されているだけだ。


 なら、崩せる。


 僕は視線を動かす。


 男から、父へ。


 そして――


 床。


 地下の方向。


 もう一度、男へ。


 繋げる。


 断片を。


 父がそれに気づく。


 ほんの一瞬。


「……地下の件と繋がるな」


 来た。


 言葉になった。


 点が、線になる。


 男の目が揺れる。


 明確に。


 初めてだ。


 完全に動いた。


「知らないな、と言ったな」


 父の声が低くなる。


「だが、お前は“知っている顔”をしている」


 正しい。


 完全に正しい。


 だからこそ、刺さる。


 男が黙る。


 呼吸が浅くなる。


 いい。


 崩れている。


 あと一押し。


「お前が口を閉ざしても構わん」


 父が言う。


 ゆっくりと。


「だが、上はお前を助けない」


 間。


「ここで死ぬか、あちらで消されるかだ」


 選択肢を与える。


 どちらも悪い。


 だが――


 比較はできる。


 そして、人は“マシな方”を選ぶ。


 男の視線が揺れる。


 迷いが生まれる。


 その瞬間。


 僕は、静かに視線を重ねた。


 逃げない。


 まっすぐに。


 理解しているかのように。


 男の呼吸が止まる。


 一瞬だけ。


 だが、それで十分だ。


「……知らない」


 声が弱い。


 さっきよりも。


 崩れている。


 だが、まだ足りない。


 名前が出ない。


 それが必要だ。


 だが――


 ここで無理に引き出す必要はない。


 むしろ、逆だ。


 “断片”でいい。


 そこから繋げる。


 僕は、ゆっくりと目を閉じる。


 断片を探す。


 さっきの映像。


 机。


 紋章。


 そして――


 書類。


 そこに、何かがあった。


 名前ではない。


 印だ。


 特徴。


 形。


 それを思い出す。


 目を開ける。


 父を見る。


 そして――


 空中を、わずかに指でなぞる。


 形を描くように。


 赤ん坊の無意味な動きに見える。


 だが――


 父の目が止まる。


 見ている。


 理解しているわけではない。


 だが、引っかかっている。


「……紋章か?」


 来た。


 方向が定まる。


 男の顔が変わる。


 完全に。


 隠しきれない。


 それで十分だ。


 父が振り返る。


「王都の商会の中でも、紋章を使うところを洗え」


 指示が飛ぶ。


 流れが変わる。


 具体的になる。


 敵が、ぼやけた存在から、“探せる対象”になる。


 これで戦える。


 完全ではない。


 だが、大きな一歩だ。


 僕は静かに息を吐く。


 ここまでは、予定通りだ。


 だが――


 問題はここからだ。


 頭の奥で、また断片が弾ける。


 王都。


 建物。


 紋章。


 そして――


 その奥。


 さらに奥。


 同じ紋章を持つ、別の場所。


 もっと大きい。


 もっと上。


 繋がっている。


 連鎖している。


 理解した瞬間、寒気が走る。


 これは一つじゃない。


 “階層”だ。


 上に、上がある。


 その上にも。


 終わらない。


 僕は目を開ける。


 父が指示を出している。


 男は黙っている。


 屋敷は動いている。


 だが――


 これは、まだ入口だ。


 本当の問題は、その先にある。


 そして、その先は――


 ここからでは、届かない。


 つまり。


 僕は、もっと外へ出る必要がある。


 そう結論した瞬間。


 断片が、もう一つ弾けた。


 今度は、はっきりしている。


 広い場所。


 人の列。


 制服。


 若い顔。


 そして――


 僕がいる。


 立っている。


 少し大きくなった姿で。


 場所が分かる。


 これは――


 学びの場だ。


 王都にある。


 そこに行けば、届く。


 そう確信した。


 僕は、ゆっくりと息を吐く。


 未来は、また一つ変わった。


 そして、道が見えた。


 次は――


 そこだ。

敵の輪郭が少しずつはっきりしてきました。


ただ、その分だけ「もっと上」が見え始めています。

アルトが次に向かう場所も、ようやく見えてきました。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけるととても励みになります。


次は――“王都へ繋がる道”が動きます。

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