↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/23

第2章 第1項 二日酔いなき爽快な朝とケダマの環境改変能力による劇的ビフォーアフター、そしてダンジョン食材での調理開始

第1項 二日酔いなき爽快な朝とケダマの環境改変能力による劇的ビフォーアフター、そしてダンジョン食材での調理開始


 目が覚めると、そこは地獄の底――のはずだった。

 だが、俺の体調はすこぶる良かった。

「……頭が痛くない」

 俺、クロードは岩肌に寝転がったまま、自分の額に手を当てた。

 昨晩、人生への絶望を肴に安酒を煽り、正体不明の毛玉魔王と飲み明かしたはずだ。通常なら泥のような二日酔いに襲われ、全身の古傷が痛むはずの朝。

 しかし、今の俺の体は羽毛のように軽い。

『毒素はすべて我が頂いた』

 脳内に直接響く、重厚かつ滑らかなイメージ。

 見上げれば、真っ黒な巨大毛玉――ケダマが、天井の鍾乳石にぶら下がるようにして浮いていた。

「おはよう、ケダマ。お前、アルコール分解までできるのか。最高の相棒だな」

『礼には及ばん。お前の肝臓が悲鳴を上げる際の“老いへの恐怖”もまた、珍味であった』

 どうやら俺の健康不安すらも、こいつの餌になったらしい。

 俺は上体を起こし、周囲を見渡した。

 そこは殺風景なダンジョンの最下層、百階層の広間だ。ゴツゴツとした岩と、湿った苔、そして遠くで聞こえる魔物の咆哮。

 生活するには不便極まりない。

「さて、どうするか。地上に戻るにしても、レオンたちが門番をしているだろうしな。何より、またあそこで荷物持ちをする気にはなれない」

 俺が独りごちると、ケダマがふわりと降りてきた。

『ならば、ここを都とすればよい。住めば都、心頭滅却すれば火もまた涼し。現世即浄土だ』

「都って言ってもなぁ。座る場所もねえし、酒を置くテーブルもねえ」

『造作もない』

 ケダマが黒い毛を逆立て、空間を振動させた。

 ズズズズズ……!

 低い地響きと共に、硬い岩盤がまるで粘土のように変形を始める。

 俺の目の前で、荒々しい地面が平らにならされ、岩壁の一部がせり出し、見事なL字型のカウンターへと変わっていく。表面は磨き上げられた黒曜石のように滑らかだ。

 さらに、手頃な大きさの岩が削り出され、背もたれ付きの椅子が数脚生成された。

「おいおい、マジかよ……」

 数分もしないうちに、そこには無骨ながらも雰囲気のある「バーカウンター」が出現していた。

『座る場所は作った。次は供物だ』

「供物って……ああ、つまみか」

 俺はリュックの中身を確認する。食料は少し残っているが、心もとない。

 だが、俺には『魔力感知』がある。

 岩の陰に生えている『アビス・マッシュ(深淵茸)』。毒々しい紫色をしているが、適切に熱を通せば高級肉のような味がするキノコだ。

 俺は近くの地面の亀裂から吹き出すマグマの熱を利用し、即席の石板焼きを始めた。

 ジューッという音と共に、香ばしい匂いが立ち込める。

「よし、開店準備完了だな」

 誰が来るわけでもないが、俺は満足げにカウンターの中に入り、リュックに残っていた予備のカップを磨き始めた。

 ここは今日から、俺の城だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。