↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/23

ー第4項 営業終了後の静寂と二人だけの晩酌、生まれ変わる必要のない今この瞬間の完璧な幸福

第4項 営業終了後の静寂と二人だけの晩酌、生まれ変わる必要のない今この瞬間の完璧な幸福


「ふぅ……今日も忙しかったな」

 すべての客が帰り、静寂が戻った店内。

 クロードは店の入り口に『準備中』の札をかけると、カウンターの特等席に座った。

 隣には、人間サイズに縮んだケダマがちょこんと座っている。

「ほら、今日は上等なワインが入ったぞ。王様からの差し入れだ」

 クロードがボトルを開け、二つのグラスに注ぐ。

 芳醇な香りが広がる。

 チン、とグラスを合わせる音が、静かなダンジョンに響いた。

『……良い香りだ。だが、やはりお前の作る酒の方が、味がある』

 ケダマが満足げに身を震わせる。

「よせよ。俺のはただの安酒だ」

 クロードは笑いながら、ワインを口に含む。

 美味い。

 だが、かつてのような「苦しみを忘れるための味」ではない。

 純粋に、生きている喜びを噛みしめるための味だ。

「なぁ、ケダマ。俺たち、いつまでこうしてられるかな」

『いつまでも、だ』

 ケダマが即答する。

『我は時を食わない。お前の時間は止まっている。老いもせず、病まず、死なず。ただ、この“今”が永遠に続くだけだ』

 そう。

 クロードは気づいていた。

 この店を開いてから、自分の爪や髪が伸びていないことに。

 肌の艶も、体力の衰えもない。

 ケダマが、クロードの「生老病死」の苦しみを、発生した端から食べてしまっているからだ。

 普通なら、それは「呪い」かもしれない。永遠に死ねない地獄。

 だが、ここでは違う。

 毎日、面白い客が来て、美味い酒が飲めて、最高の相棒がいる。

 それが永遠に続くのなら、それは地獄ではなく――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。