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ー第5項 四苦からの完全なる解脱と実質的な不老不死、深淵の底で続く終わらない宴と笑い声

第5項 四苦からの完全なる解脱と実質的な不老不死、深淵の底で続く終わらない宴と笑い声


「極楽、ってやつだな」

 クロードは呟いた。

 かつて、自分を追放した連中は、栄光や金や名声を求めてあくせく生き、今は地獄を見ている。

 人間はみな、来世の幸せや、将来の安定のために「今」を犠牲にする。

 だが、クロードは「今」だけを見ている。

 この瞬間にある酒の味。ケダマの毛並みの温かさ。

 それだけで十分だった。

『そうだ。輪廻など必要ない。魂の引っ越しなど面倒なだけだ』

 ケダマが同意する。

『我らはここで、永遠に“現世”を楽しみ尽くす。それが即身成仏だ』

「違いない」

 クロードはグラスを飲み干し、おかわりを注いだ。

 外の世界では、英雄譚や悲劇が繰り返されているだろう。

 だが、この地下百階層の小さな居酒屋には、そんな喧騒は届かない。

 あるのは、心地よい静寂と、温かな光だけ。

「さあ、夜はこれからだ。飲むぞ、相棒!」

『応ッ!』

 笑い声が重なる。

 深淵の底、世界で一番深い場所にある楽園。

 そこには、四苦八苦から解き放たれ、ただ純粋な快楽として存在する一人の元人間と、一匹の元魔王がいた。

 彼らの宴は終わらない。

 永遠に、幸せに。

 これぞ、ハッピーエンド(解脱)である。


 ――完――

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