第3章 第1項 深層の魔物が消え上層の魔物が下降する異常事態、そして稼げなくなった冒険者たちの困惑と悲鳴
第3章 地上の混乱と転落
第1項 深層の魔物が消え上層の魔物が下降する異常事態、そして稼げなくなった冒険者たちの困惑と悲鳴
アビス・ゲート周辺の城塞都市では、異変が囁かれ始めていた。
「おい、最近ダンジョンの魔物が減ってないか?」
「ああ、特に深層からの『あぶれ者』が全然地上に出てこねぇ。おかげで素材の相場が上がりっぱなしだ」
冒険者ギルドの酒場で、男たちがジョッキを傾けながら愚痴をこぼしていた。
通常、ダンジョンという場所は、内部で増えすぎた魔物が溢れ出し、地上へ侵攻してくる危険地帯だ。だからこそ、冒険者が定期的に間引きを行い、その素材を持ち帰ることで経済が回っている。
だが、ここ一ヶ月ほど、そのサイクルが完全に狂っていた。
深層の強力な魔物が、地上を目指さなくなったのだ。
それどころか、本来なら浅い階層に生息しているはずのゴブリンやオークたちが、まるで何かに吸い寄せられるように、下の階層へと大移動を始めているという報告が相次いでいた。
「俺、見たんだよ。オークの集団が武器を捨てて、なんか楽しそうに下へ降りていくのを」
「はあ? 楽しそうに? お前、飲み過ぎだろ」
「本当なんだって! なんかこう、仕事終わりの親父みたいな顔してたんだよ!」
そんな馬鹿げた目撃談が、笑い話ではなく、不気味な真実として広まりつつあった。
魔物が減れば、素材が手に入らない。素材がなければ、武器も防具もポーションも作れない。
冒険者たちは稼ぎを失い、関連する商人たちも悲鳴を上げ始めていた。
だが、誰もその原因を知る由もなかった。
まさか、ダンジョンの最下層に「魔物たちのオアシス」が誕生し、そこで振る舞われる酒と料理、そして謎の毛玉による究極のヒーリングを求めて、魔物たちが列をなしているなどとは。
地上では、ただ「魔王の復活か」「大災害の前触れか」といった不穏な憶測だけが飛び交い、人々の不安を煽っていた。
そんな中、最も割を食っていたのは、かつて栄光を誇ったSランクパーティー『金獅子の牙』だった。




