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 ナナは凍り付く。明さんは「知っていたのか」と僕に一言。

「そりゃあ……堀とは」

「綾小路君はずっとひなたと仲良くしてもらってるからね。私のことを知っていても可笑しくはないでしょう」

 言いかけた僕を押し退けて相原は喋った。僕は完全に力が抜けたナナから手を離す。にっこり笑うその顔は堀と共に遊んだ幼少期を彷彿とさせる。

 まさかその十年以上後、その笑顔に恐怖する日が来るとは思わないだろう。

「さてさて、いきなり登場して挨拶もなしに銃口を向けてくるとは、元気でいいねえ? 若人」

 相原は歩いてくるとナナの顔を下から覗き、顔を近づけた。ナナはすかさず再び銃口を顔に近づけた。

「黙っていろ。元はと言えばアンタが私すべて悪いんだ」

「そうかい。なんでも私のせいにする癖は変わっていないね」

「すべてを知る人間に原因を訊ねりゃ全員が口を揃えてお前って答えるよ」

「ああそうかい。そういえばまだ秋山は恨んでいないのか?」

「恨む理由がない」

「理由しかないでしょう。あなたを実験台にしておいて」

 ナナは相原に向けていた銃口を眉間に強く押し込んだ。般若にも近しいほどに、険しい顔つきになる。

「殺すか? 殺すか? やってみるといい」

 相原は銃を持つナナの手を掴むと自分に更に押し込んだ。更にピリピリした空気が僕達を包む。「おいナナ! 何をしている! 手を退けろ! 父の話が聞けないか!」

 米山が叫ぶ。

「まあまあまあまあ」と、明さんが二人の肩に両手の平を当て、引き剥がした。米山はその様子にも腹を立てたらしく「ナナに触るな!」と叫ぶ始末だ。だが誰も彼の言葉に耳を傾けないらしい。

「喧嘩は止さないか、俺はそのために来たんじゃない」

「じゃ何の為に来たんだ」

「お前を止める為以外に何が……」

 明さんが全て言い終わらぬ内に、相原は手を叩いて、腹を抱えて大声で笑った。

「平井、お前、とうとう秋山のコピーだな。ハハ、こりゃ傑作だあ。まあ、劣化版には変わりないが」

 相原は笑い声を絶やさない。

「秋山のふりなんかして、過去(こんなところ)まで来た時点でそうなことは決まっていたか。しかしながら、この米山しか騙せない癖に、どうして、秋山の名を使う……」

 米山が「うるさい!」とまたもや叫ぶが虚しく、相原の相手にはされていなかった。

「いい加減口を閉じろ」

「ところで、直樹は居ないんだね。まあ、彼のことだ。自ら来たくないとでも言ったのでしょう。懸命な判断だ」

 明さんの発言にも聞く耳を持たなかった。

「まあいいよ。私はね、ある程度したら、ひなたともうひとつ、別の世界に行く。ここでやったことなんて、ほんの実験だ。次こそ、私は日本を潰すよ。じゃあ、失礼しよう」

 相原は僕の前を横切ると同時に堀の腕を左手で掴んだ。

「行くよ、ひなた」

「いや、ちょっと……」

 相原と堀は僕達に背を向けた。

 連れていかれそうになる堀の手を握ろうとする。彼女の指先が少し僕に触れたのみだった。

 焦りで頭が回らない。落ち着け、落ち着け、落ち着いていられるかと自問自答を繰り返す。

 堀が頭を後ろに向け、目で助けを訴える。僕はそれに目を奪われる。

 何か音がした。銃声だ。そのとき僕は頭が回らなくてわからなかった。

 相原は掴んでいた手を離し、反対の手で肩を押さえる。

 相原の肩が赤に染まっているのを確認してやっと気がついた。

 ナナが引き金を引いたのだ。

「お前………!」

 憎しみ籠った痛々しいがなり声が相原から聞こえた。

 相原はナナをキツく睨み付ける。

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