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 ナナが電話に出た。とは言っても、ナナによると、ナナの連絡先を携帯電話に入力し、呼び出すと、ナナ本体に接続され、相手の声が頭に響くというので、携帯電話は所持していない。組み込まれているのだから。

 電話なんて、こんな時に誰だと思っていたが相手は明さんらしい。ナナに会話の内容を訊ねると、私達の無事を確認しただけだと返ってきた。

「私に連絡することが可能な状況ということは米山に会ったということですから、ちょっと、いやです。私の連絡先を知っているのは、米山だけですからね」

 ナナは自分も米山だというのに父のことを米山と呼ぶ。流石に誰もナナの過去(こと)を知らないという訳じゃないだろう、とは思ったが、現在ここにいる者で、知っていそうな人は高橋さんだけだった。尚更、僕に話した理由が気になるが、本当のところは深い意味なんてないんだろう。ナナはどこか適当だ。

 ナナは腕を組むと口を開いた。

「あの人が秋山さんとしてここに居るのはあまり意味のないように思えます。どうせ騙せるのは米山くらいなんでしょうし」

「確かにそうだな。相原だって(せんせい)のことはよく知っていた。だがまあ、米山ひとり騙せる程度だってのはあいつもわかってるんじゃないか。ひとり騙せるだけでも大分違うだろう」

 続いて高橋さんも喋り出す。

「まあそうですけど。あの人がね、今から何をしようとしているかなんて考えたくもありませんが、もし、相原がこれを知るようなことがあれば、きっといい見世物だと嘲笑うでしょうし、その時点で私達は相原を楽しませる道具となるんですよ。本当に嫌いだ。不快でしかない。あいつを知らない皆さんは覚悟の程を」

「相原嫌いなんですね……」

「当然です。世間の認知は相原が特に悪者ではないってのが一番腹が立ちます。メディアにすら出ていないので一般人は名すら存じません。法で裁けないんだったら私が裁いてやりたいぐらい」

「逮捕、されていないんですか?!」

「ええ。あいつは逮捕されていませんよ」

 僕はまた、ナナの口に乗せられる。

「誤って逮捕された人間ならひとり居ます。結局は組織の無能を曝しただけになりました。逮捕された人間は、あなたも名前ならよく知っている人間ですよ」

「おいお前」

「秋山さんです」

 誤逮捕された者の正体は秋山彰。中々の衝撃が僕を駆け抜けた。

「アホ臭いったらありゃしない。しかも秋山さんは留置所で自殺。ニュースで流れてたかどうかは存じませんが、相原はこのことをとっくに知っているはずで、むしろ一番よく知っている人物と言っても過言ではないらしく、当時は部屋でひとり大爆笑してたんじゃないですか。傑作だってね。私は事件後すぐ米山に連れられて過去(こちら)へ来ましたので知ったのは本当に最近なのですがね。あ、当然米山はこのことを知らないです。騙される訳ですね」

「お前今日はよく喋るな」

「あら、いけませんでした?」

 ふふ、とはにかむナナの笑顔に高橋さんは溜め息を吐いた。

「あのさあナナちゃん」

「なんでしょう」

「なんで明さんはこんなことしてんの?」

 堀は髪をいじりながら質問する。

「……さあ、秋山さんの真似じゃないですか。当時の彼は相原を止めようとしていましたので」

「なるほどねえ」

 ナナは堀の横に座った。

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