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 一番安全なのは、殺人機械に見つかるまでとはいえ、やはり今僕達が居る地下だ。東京以外のことは全くわからないが、少なくとも東京で比較的安全と言える場所はここだ。

「とりあえず、今安全なのは地下(ここ)にかわりないわ」

 実果さんも僕と同じことを考えているらしい。

「とりあえず、ここに居る殺人機械の動作を完全に停止させることが最優先事項。それが出来るのは私とナナで、地上と地下でわかれるとすると、ナナは戦闘向きじゃないから、私が地上でナナが地下ね」

 ナナがコクンと(うなず)く。

「地上か地下か、どっちに行く? もちろん、安全なのは地下」

 実果さんがここに居る全員に問いかける。僕は地上に行く意味が見当たらないが、選択肢として出すということは、何か地上で出来ることがあるのだろう。きっと到底僕には出来ないことだ。

「ここから地上に行くのは間違い無く危ねえよな」

 高橋さんが髭を撫でながら考える。発言から察するに地上へ行くのか。

「いえ、一番近い通路から出た先は、既に人が大量に殺されており、機械も別の区間に移動するなど、逆に安全と言えるでしょう。ここと同じです」

 ナナの言葉は、地上が人類の墓場と化していることを容易に想像させた。ここも墓場だ。想像したくなくても出来てしまう。

「じゃあ一番危険なところは?」

「ここから約三百米の場所ですかね」

「そこまで案内出来るか?」

「かしこまりました」

 ナナは方向転換し「敵を見つけ次第動作を停止させます」と歩き出す。

 今更だが、人の亡骸を(また)いで歩くのは気持ちいいものではない。どこへ行けばいいのかさ迷う血が道の脇にもどかしいぐらいに遅く流れていく。まだ流れていく。

 僕達の足音がうるさいぐらいに反響した。体格差のある大男でも殺されている。何故僕が今まで無傷だったか不思議だ。なんで生き残っているんだ。

 そうやって鬱な気持ちに浸っているとナナが「ここです」と階段の前で足を止めた。当然、階段にも死体は寝そべっている。

 地上から聞こえる(おびただ)しい人々の悲鳴は金輪際聞きたくない音だ。

「じゃあ、行ってくる」

 高橋さんと実果さんと堀、つまり僕とナナ以外の全員が地上へ出ることを決意したようだ。僕には無理だ。

 高橋さん等は「ナナは、殺人機械の処理を頼む」と言うとすぐさま地上へ行ってしまった。ナナは「承知しております」と礼をし、見送る。

「さて、如何しましょう」

 無機質な声が僕の耳に届く。

「如何って、何を」

「地上へは行かないのでしょう? なら、地下の殺戮機械達を一刻も早く処分しなければなりません。ここで待っておくか、一緒に探すか、如何しましょう」

「あー」

 ここで待っているもいいが、その時、殺戮機械に見つかってしまっては元も子もない。それに悲鳴だって聞きたくない。

「当然、ついていくよ」

「承知しました。ではこちらへ」

 ナナは先頭に立ち今来た道とは反対の道を歩いた。僕はその後ろをついて歩く。

 少し歩くが殺人機械は見当たらなかった。いいのやら悪いのやら。

「綾小路さん」

 ナナは口を開く。

「はい」

「退屈ですか?」

「そう、ですね」

 何もすることが無いという意味ではそうかもしれない。

「では、少し昔話をしましょうか」

 ナナはゆっくりこちらを向く。「実はですね……」と、数秒溜めた。

「私、元は人間なのですよ」

 ナナは人差し指を唇に当て、微妙に口角をあげて笑った。

今更ですがナナちゃんの声はアクエストークをイメージしていただければ。

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