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安心なんて出来たもんじゃなかった。
ここは戦場か? ここは日本だぞ?
全く可笑しい。
それより、どこが燃えている?
スマホを持った僕は慎重に扉へ近づき、ゆっくりと開ける。銃を構えた奴はもう居ないようだ。
ここからは、どこが燃えているかは確認出来ないが、すぐ近くのはずだ。
早く逃げなければならないのは確かだが、スマホに出てきた警告から察するに、今この日本には、絶対安全な場所なんて存在しないのだろう。
よって、どこへ逃げても危険だ。
当然、家の中も危険だろう。それは玄関扉に空いた穴が証明している。
誰か連絡の着く者は居ないだろうかとスマホの画面を何度もいじってみてはいるが、警告の画面からひとつも動かせない。
もちろん、電源も落としてみたがダメだった。溜め息をひとつ吐く。
とにかく、どこへ逃げるとしても最低限必要なものはある。部屋に戻って準備をすることにした。
と言っても、準備をするものは水と財布ぐらいなのだが。
鞄に数本五百ミリリットルのペットボトルに入った水を詰めていると誰かから電話が掛かってきた。
この状況で電話を掛けられるやつなんて居たのかと、着信を見ると堀だった。
数少ない友達が一人生きていたことにほっとする。僕は通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし綾小路君?! 今どこ?!」
堀は息を切らしながら喋る。
「え、あ、家、だけど」
「わかったすぐ行く!」
堀はそう言うとすぐに電話を切った。
堀が今、どこにいるのかわからないが、一人で来るのは危ないんじゃないだろうか。
そんな心配はよそに、インターホンが鳴った。
扉を開けると息を切らした堀が居た。
「堀、生きてたんだな」
僕はそう言いたかったが、堀が先に「ごめんなさい!」と謝ってきた。
「ちょっと、堀?」
「ごめんなさい、これ、私にも責任があるの、ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
状況が理解出来ない。
「な、何のこと?」
「さっきAIが来なかった? 腕が銃になってる」
AI? 人工知能か。そんなもの、来た覚えは……
「来た」
ある。あれだ。玄関扉に穴を空けた、アイツだ。アイツが堀の言うAIなんじゃないか?
根拠は機械の様な声を出したことと、僕の全く聞いたことのない気持ち悪い音を放出したことだ。それだけだ。
「やっぱり……。ちょっと上がらせて」
堀は僕の家に上がり、急いでテレビをつけた。
「現在も、ロボット達は殺戮を繰り返しており! 携帯の、この画面も消えないままです! 皆さん、早く逃げてくださ」
現場と中継を結んでいたアナウンサーが例のロボットにより殺された。
確かに、いくらなんでもこんなところを中継に結ぶ必要はないし、あまりに危険だとは思ったが、まさか本当に死んでしまうとは思わなかった。
「こういうこと、理解した?」
堀は冷静に僕に訊く。理解出来ない。
「これね、この事件ね、私のお父さんとお母さんが関わっているの」
そのときの堀の顔は沈んでいた。
「お父さんとお母さんはね、止めたんだけど、それでも、無理で……」
「もういい、わかった。堀のせいじゃない」
そんな泣きそうな顔になるんだったら説明なんて要らない。
「……ありがとう。あのさ、明さんか、相原さん? 高橋さん? と連絡取れる?」
「取れない」
「そっか……。でもいいや、行こう、逃げなきゃ」
僕は堀に腕を捕まれ、家を出た。そして五十メートル走の新記録を更新しそうなぐらい早く走った。
どこへ行くかはわからない。とにかく今は堀に従う。
そのとき横目に見た街の景色は地獄そのものだった。僕の居る場所だけが、被害が小さく、助かっていたのだ。
着いたのは、最も被害が大きいであろう街の中心部だ。
「こっち」
堀は地下通路の方へ走る。そして地下へ通ずる階段を降りた。
「実はね……」と堀は話し出す。




