空
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「はい、昇。あーん」
「あー」
結花が箸で掴んだトンカツを差し出してきたので、俺は食べた。
「ふぁふぁふふぁいな」
「何を言ってるか、聞こえないよ」
奴が自分の口に手をあてて、クスクスと笑った。
そんなにおかしかったのだろうか。
「……まあまあうまいな」
「うん、ありがと」
俺達は授業を終えた後、屋上に来て弁当を食べていた。
結花が前もって用意してくれていて、晴れ渡る空の下のんびり過ごしていた。
「これで全部だな。ごちそうさま」
「うん、ごちそうさま」
柔らかい芝生の上で、俺は体を広げて寝た。
「本当にいい天気だな」
「そうだね。……実は私、この空が大好きなんだ」
青く深い空を見つめて、結花は何か考えているように見えた。
その様子を見て俺はふと、が思い浮かんだことを聞いてみた。
「この空のどういうところが好きなんだ?」
「やっぱり雲に重みがあるところかな。私は小さい頃宮城県に住んでいたんだけど、遠くの空を見ながら色々考えるのが好きだったんだ」
「そうか」
「なんで青いんだろう、そして雲が出来るんだろう。昔の人たちもこうやって見上げていたんだろうか。今でも世界中の人たちも見上げているのかな……とかさ」
「……」
そういった奴の顔は、いつもより達観して不思議な雰囲気を出していた。
「なんか、この空をみると世界中がつながっている気がしてさ。はるか昔でも、同じ空だったのかな……とかさ」
「昔の空……か」
確かに俺が子供の時にみた空も、こんな感じだったなと思った。重みがある雲に何処までも続いていそうな空……俺も大好きだった。
「ごめん、なんか変なこといって」
「いや……いいんじゃないか」
俺は寝ころんだまま、自分の右手を空に伸ばしに広げてみた。
「いいよな、空って」
「うん」
そんなことを話したりして、二人で昼をのんびり過ごした。
あいつがくれた弁当も美味しかったし、天気も最高に良くて、まるで天国にいるようだった。
少し眠くなった俺は、両手を頭に乗っけて昼寝でもすることにした。
「……ッ」
その時、頭に鋭い痛みが走った。
「どうしたの?」
「……頭に何かできてるみたいだ」
後頭部をさすってみると、なかなか大きいたんこぶが出来ていた。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
「保健室で湿布でももらってくるか…な」
「……うん、そうだね……私も一緒にいくよ」
俺は立ち上がろうとした。
「ああ、頼む……っぅ」
そこで
「君の名前は?」
「寺井昇、寺に井戸の井、昇格の昇だ」
「寺井くん、よろしくね」
頭の中にふとよぎった
「寺井、バスケうまいね」
「中学の時にやってたんだ」
「ダンクできる?」
「できないよ!」
「なんだ、つまんない」
「おいおい」
痛い……
「授業真面目に受けなさい」
「腹減って死にそうなんだ。見逃してくれ」
「今食べたら夕方大変でしょ」
「先のことより今が大事だ」
「やれやれ…」
目の前が……
「どうしたんだ、屋上に呼び出したりして……」
「はい、お弁当」
「え、まさかお前が作ったのか」
「買い食いは体によくないでしょ。食べるんだったら、栄養考えないと……」
「お、凄くうまそう」
「こら、人の話を」
「トンカツうまいな、ありがとな」
「……うん」
暗くなって
「俺、この空大好きなんだ」
……私も
苦しい
「……もう二度と私に話しかけないで」
苦しい、苦しい
「ねえ、大丈夫。昇?」
なんであんなことになったんだろう……
「昇! しっかりして昇!!」
激しい痛みの中、俺の意識が完全になくなった




