5 怪談Ⅰ
I子は、親友として過ごしてきたMを殺してしまった。
好きだった人を取られ、わだかまりを圧し殺して笑顔で付き合ってきたが、 さらにずっと隠して生きてきたことを彼女に知られてしまったのだ。
二人は廃墟巡りの趣味があり、今まで色々な場所を巡ってきた。
廃村、廃ホテル、廃美術館。
様々な理由で人がいなくなった見捨てられて朽ちた場所をよく二人でぶらついた。
ケンカしてぎすぎすした時も、そういう気持ちは周囲の廃墟の朽ちた時間が吸いだしてくれるようで、付き合いはずっと続いてきた。
だけど、知られた秘密はいつ人生を壊されるかわからないものだ。
見捨てられた風景に置いてきて忘れられるものではない。
いつも一緒に出掛けて来たように、廃村に呼び出して殺して埋めた。
口に詰め物をしてぐるぐる巻きにした、決して喋らないように。
縛めが自分で解かれないように手も足も切り離した、指までも。
廃神社にお参りした。
このままこの事を隠しておいて下さい、と。
しばらくは平穏に時間が過ぎた。
神様はわたしの味方なんだ、とI子はパワースポット巡りや御守り集めも趣味にするようになった。
だが、奇妙なニュースが出た。
女性のバラバラ死体が次々と見つかるようになったのだ。
しかも、自分の覚えのある場所ばかりで。
行ったことのあるIC。幹線道路脇。線路沿い。会社に通う通勤路の途上にある公園の花壇。
足首。肘。左腕。肩。
ニュースの発見現場の地図で気づいた。
あの廃村から、こっちに近づいてきているように見える。
はじめは気のせいかもしれないと、思いこもうとした。自分がやった以上に細かくなっている。が、とうとう自分の住むアパートの茂みで発見者として指を見つけたときMだ、とおもった。
二人でお揃いにしたネイルだった。
わたしを見つけに来たんだ、と。
神様が隠しておいてくれると思ったのに。
遺体がどうなっているのか状態を確認した方がいいのか迷いながら調べると、Mを殺して埋めた廃村は工場用の再開発地域となっていた。
(ひょっとして隠しきれなくなったもので、神様がわたしに少しずつ送り返しているのかしら)
I子は思った。
Mなのか、神様なのか。
わからぬまま彼女は用心して極力外に出なくなった。
ピンポーン。
その日玄関前には誰もいないまま、宅配便が置き配で届いていた。
触れもしないのに、汚れた破れそうな段ボールから中身が転がり出る。
土と共に出てきたのは、道具選びを失敗したせいで解体に苦労したMの首だった。
口の縛めはほどけていた。
自分の秘密を喋り出すのではないかと、I子はMの半ば開いた口元を誰かが通報するまで見つめ続けた。
Mが喋ったような気がした。
自分の秘密でなく、別の言葉を。
I子は警察に連れて行かれたが、そのまま帰された。
箱と土だけは残っていたが、警察が来たとき首はどこにも見当たらなかったのだ。
何かが転がっていったような跡は残っていたが。
悪質な悪戯の被害者とされた。
彼女はもう廃墟巡りをすることはないが、パワースポット巡りは今でも趣味にしているそうだ。
時々、Mを殺さずに済んだのではないかと後悔している。




