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英雄の帰還、孤独の深淵

ルミナ村の入り口。泥と返り血にまみれ、巨大な黒角熊の角を二人掛かりで担いで帰還したユーマとカイルを待っていたのは、割れんばかりの喝采ではなく、凍り付くような沈黙だった。


村人たちは、道を開けながらも、その視線には明確な「拒絶」が混じっている。


「……本当に、あいつらが『主』を仕留めたのか?」

「見たかよ、ユーマのあの目。あんなの、まともな人間の色じゃない。ありゃあ……どこぞの魔物に魅入られて授かった『呪わしき異能』だぞ。」

「カイルまで毒されたんだ。あんな不吉な力に当てられて、村を乗っ取る気じゃないか……?」


助かった安堵よりも、理解不能な力への恐怖を優先する大人たちの声。

カイルが「ユーマがどれだけ……っ!」と激昂して食ってかかろうとするのを、ユーマは感覚の消えかかった冷えた手で制した。


「……いいんだ、カイル。彼らには、僕たちが何をしたかなんて関係ない。ただ、村の脅威が消えた。それで十分だ。」


ユーマは前世を思い出していた。どれほど努力しても、周囲の都合でその価値を塗り替えられる理不尽。この世界もまた、本質は変わらない。

だが、家に戻ったユーマを待っていたのは、そんな虚無感さえ吹き飛ばすほどの凄惨な光景だった。


いつも温かいスープを作って待っていてくれるエレナおばあちゃんが、土間の隅で倒れていたのだ。


「おばあちゃん……っ!?」


慌てて駆け寄り、魔眼を凝らす。

知力28という異常な数値の頭脳が、彼女の枯れ枝のような手首に触れた瞬間、不吉な演算結果を叩き出す。


(過労……それだけじゃない。この村の周囲に漂う瘴気が、おばあちゃんの寿命を内側から削っている。僕がもっと早く、強い薬草を、もっと高い知識を手にしていれば……!)


ユーマの「知力」は、残酷にもエレナの余命がこのままでは一ヶ月も持たないことを告げていた。

村人が「呪わしき異能」と忌み嫌うその瞳だけが、世界で唯一、彼女を救うための絶望的なまでの「不足」を映し出していた。


エレナをベッドに運び、カイルと共に夜通し看病を続けた翌朝。

ユーマは、村の広場に集まった村人たちの前で静かに口を開いた。


「この角は村に置いていく。好きに換金して、冬の蓄えにすればいい。」


驚きに目を見開く村人たち。彼らが恐怖していた「呪わしき力」の成果を、ユーマはあっさりと手放した。


「その代わり、おばあちゃんの家と、当面の食料だけは保証してほしい。……僕は、おばあちゃんの病を治す方法を見つけるために、村を出る。」


村人たちは、厄介払いができるという安堵感を隠そうともせず、二つ返事で承諾した。

その浅ましさを、ユーマはもう恨む気にもなれなかった。


「……おい、俺も行くぜ。テメエ一人じゃ、荷物持ちもできねえだろ。」


カイルが、荷物袋を肩に担いでユーマの隣に立った。父親からも、村の仲間からも見放された彼は、今やユーマの唯一の戦友だった。

二人は眠るエレナの枕元に、彼女が一番好きだった青い花を供え、村の門をくぐった。


「どこへ行くんだ、ユーマ。」

「まずは、一番近い商業都市フェルゼンだ。あそこなら、もっと高度な魔導書や、おばあちゃんの延命に必要な触媒が手に入るはずだ。」


ユーマは歩きながら、改めて己のステータスを展開した。

この理不尽な世界で、唯一裏切らない「数字」をその目に焼き付けるために。


【ステータス:ユーマ】

名前: ユーマ(高橋 悠真)

種族: 人間

ジョブ: なし

LV: 13


【能力値】


HP: 62 / 62(全快)


MP: 18 / 18(全快)


力: 14


敏捷: 16


体力: 15


知力: 28


魔力: 5


運: 5


【スキル】


パッシブスキル:


忍耐 LV2: 精神的・肉体的苦痛への耐性。


精密演算 LV1: 魔法や動作の無駄を排除。


隠密歩行 LV1: 気配を殺して移動する基礎技術。


アクティブスキル:


生活魔法(浄化・点火・水生成): 知力による最適化。


衝撃インパクト: 魔力を爆発させ物理的な衝撃を与える。


魔力の糸: 魔力を糸状に伸ばし、探査や拘束に用いる。


固有スキル:


努力の魔眼 LV3:自分および対象の努力効率を劇的に増幅する。


共鳴シンクロ】: 信頼関係のある他者とステータスを一時的に補正・共有する。


【称号】


限界を越えし者: 成長限界の突破補正。


村の異端児: 特定のコミュニティにおける排斥対象。


恩を忘れない者: 恩義を感じる対象への行動にボーナス。

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