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怪しい妖

 座敷童子とは古い家に住み着くとされる子供の姿をした妖だ。笑い声が聞こえれば、その家には幸運が訪れると言われている。



 だが、もしもその子が家を去れば、その家の繁栄もまた終わる。




 では――望んでもいないのに家を失った座敷童子は、どこへ帰ればいいのだろうか。





 *




「あんのガキ……一体どこに行きやがった!」



 妖が行き交う大通り出た二人は子供の姿がないかと目を皿にして探すが、それらしい姿を見つけることはできていなかった。


 唯一の頼りである篤志との縁も、無理やり繋ぎ直したせいか繋がりが薄く、細かい位置まで追いかけることができなかった。


「縁……家…………あの子供は自分の家を探しているんだよな」

「たしか、そんなこと言ってたな。でも、座敷童子が出て行った家なんて、大抵は没落行きだ。いい末路なんて迎えないぞ」


 家を探していると言ったが、そもそも座敷童子が離れた後の家が無事だとは限らない。


「家って聞けば、現世のどっかの家なんだろうけど……そんな砂漠から小さな砂金を見つけるような真似、今からじゃ到底できないからな」


 篤志の考えを読んだかのように銀が釘を刺す。その言葉に篤志も冗談だ、というように肩を竦める。しかし、今二人の手元にある情報は座敷童子が探している家とかろうじて繋がった篤志との縁だけだった。その時点で、この大勢妖がいる《幽世》で幼子を見つけるのは至難の業と言えた。


 打つ手なしかと思ったその時、視界の端にフードを目深に被った人物が横切る。その人物は篤志たちに気がつくと体を震わせ、篤志もあっと思った。



「ダン!」

「お兄さん!」



 そのフードの人物は篤志が《幽世》で一番最初に出会った妖だった。相変わらず顔はフードで隠されており口元しか表情は窺えず、手には大きな麻袋を背負っている。銀は一瞬、警戒するように瞳孔を細くするが、篤志がダンに近寄っていくのを見て仕方なそうに肩をあげる。


「お兄さん方、こんなところでまた会うなんて奇遇ですな!」

「ダンのほうこそ、こんなところで何してるんだ?」


 篤志が気軽に聞くとダンは豪快に笑って手に持っていた荷物を見せてくれる。そこに色とりどりの綺麗な石が転がっていた。


「すごいな……これ全部一人で集めたのか?」


 感心しながら篤志が尋ねると、ダンは得意げに鼻を鳴らした。ダンは麻袋の中から一際綺麗な琥珀を取り出すと篤志の手に乗せる。


「綺麗でしょ? 俺が少しずつ集めた天然物さ」


 腕を組んで後ろに反り返ったダンを銀は胡散臭そうな瞳で見つめる。どうやらダンの取り扱うものは銀のお眼鏡には敵わなかったようだ。


「天然物って言っても、本当の鉱石じゃないだろ。天然物――つまり、人が使っていたものが流れ着いたもの、だろ?」


「そっちのお兄さんは夢がないなぁ! たとえ、人間様が加工したものであっても、《幽世》から出られない妖からすれば、こんな美しいものは滅多にお目にかかれるものじゃないんですよー」


 同意を求めるようにダンは篤志の肩に手を回す。だが、その手はすぐさま銀によって振り払われ、ダンには「おっかねぇ、お兄さんだこと」と悪態をつかれていた。


「それよりも、お兄さん方はこんなところで何してたんですか?」


 ダンの質問に篤志と銀は顔を見合わせる。ダンに事情を話してもいいのかと一瞬悩むが、銀が小さく頷いたのを見て篤志は口を開く。


「子供を探してるんだ。五歳くらいの、おかっぱで、赤い着物をきた女の子……どこかで見なかったか?」

「座敷童子のガキだから、見かければ妖力の強さで気を引くはずなんだが」


 妖力の強さ。篤志の知らない単語が出てきて首を傾けるが、銀はぺろっと舌を出すだけで説明はしてくれなかった。あくまで、《幽世》との関わりを最小限に留めたいという彼の意思を感じた。


 ある意味で頼られていない様子に篤志は一瞬だけ眉を顰めた。過去のことを覚えていない、ただの人である篤志ではそんなに頼りないのだろうか。



「座敷童子の子供ね……たしかに、それならさっき見かけたっすよ」

「……! 本当か!?」



 考え込んだダンの肩を勢いよく銀が掴みかかる。そして、揺らせば口から何か出ると思っているように、ダンの体をガクガクと揺さぶった。


「や、やめ……やめて、くださいよっ! そ、んなに、揺らさなくてもっ!」


「いいから知ってることなんでも吐け! こっちは急いであのガキを見つけなきゃいけないんだよ!」


 ダンが「やめて」と言っても何度も揺らされる。そんな銀にダンは痺れを切らしたのか、ガッと腕を掴みニコリと笑う。


「やめてくださいってば、狐のお兄さん」


 フードの下に隠れて表情はこちらではわからない。それでも、ギラリと睨まれているような威圧感があった。銀はただものではない気配に言葉を詰まらせながら、「すまない」と言って手を下ろす。銀の体が完全に離れたのを確認すると、ダンはニパっと笑った。



「分かればいいんですよ、狐のお兄さん。分かればね……」



 銀の肩を叩きながらダンが言うと、銀は不服そうに眉を顰めるがそれ以上何かを言うことはなかった。

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