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魔王業・幕間その2-3


 という出来事から数日。あのときの人間は()()人間となり、無事我が眷属である魔族となった。


 痛くも苦しくもないどころではなかったと恨みごとを言われたが、余には体験のないことだし、仕方があるまい。だがなんかすごいつらそうなのは見ていてもわかった。状態異常系は気になる余なれど、これは別に気にならなんだ。


 魔王が〝魔王〟をやめるわけにはいかぬし、〝魔王〟という()()()()を変えることも許されぬゆえ、そういう方向へ思考が働くことは阻害されるようになっておるのやもしれぬなあ。


 ……いや、過ぎた考えだった。


 ともかく、魔族となったあやつをまず事情からなにからベイズに伝え……異空間から戻った瞬間、あやつにベイズが襲いかかり、結局あの一帯軽く更地になってしまったのは、余、悪くない。なぜかリィナに説教をくらったのが余だったのは納得していない。ついでに事情を伝えたといっても、その辺だいぶ端折ったのも、余、悪くない。それに関しては、必要ならあとで本人から詳しく聞けばいいだけのことだしな。

 と、脱線が過ぎたか。ともあれ、だ。約束どおり側近となることになったあやつをベイズに預け、魔族についてやら仕事についてやらを教え込んでもらっている最中、というのが現在だったりする。拾ったのは余なのだからとわけのわからぬ理由で、勇者業に繰り出すことも禁じられた。さらにあやつが慣れるまで教えることのほうを優先するゆえ、本来であればベイズの領分であるはずの仕事も含めたデスクワークが余に回されてきた。


 間違いない。いやがらせだ。


 ちなみに、あやつがもと人間、しかも勇者であったことを気にするものは、すくなくともこの魔王城にはおらぬ。人間であったときの実力は皆も知るところであったし、魔族となったいまもベイズ並の能力を惜しみなく見せつければ、実力主義の魔族がどうこう言うことはほぼなかろう。妬む愚かものがおらぬとは言いきれぬが、魔王城にはおらんかった。もちろん、どちらに関してもきちんと魔族になっておるからにほかならぬが。


 ああ、そうだ。もはや人間とも呼べぬし、あやつと呼び続けるのも不便だしな。なにより、余の眷属だ。名はきちんと聞いておるし、覚えておる。スヴェイというらしい。

 スヴェイはデスクワークで着々とストレスをため続ける余のため……決して見かねたとか呆れたとかではないぞ。そもそもあやつのせいで一時的とはいえ仕事が増やされたのだし。……ごほん。とにかく。もうひとつの約束である、戦闘相手も一度きちんと勤めていた。


 とっても楽しかったのだが、勢い余って城の一部をちょぴっと壊してしまい、熱が冷めてしまったという残念な終わりかたをしてしまったことが悔やまれる。とりあえず広い場所をと思い屋上を選んだのだが、やはりきちんと手を抜かずに異空間に行くべきだった。スヴェイと並んで正座をさせられベイズから長時間説教をくらうのは、もう二度と体験したくない。


 そも正座ってなんだ。先々代め、余計な文化を持ち込みおって。すごくイイ笑顔でそれをベイズに教えるフェイアもフェイアだが。


 なんだかんだとすでに割と魔王城に馴染んできているスヴェイは、どうやらもの覚えもよいらしい。あのベイズが感心しておった。

 これはもう、余のデスクワークが減る日も近かろう。にやにやが止まらぬ。


 ついでにとてもどうでもよい情報と当事者談ではあるが、スヴェイの母国は数十年前になくなっていたらしい。魔族の仕業ではないぞ。物理的な意味ではないからな。


 なんでも、スヴェイにした仕打ちが近隣諸国にバレて、非人道的がどうのという名分から攻め落とされたのだとか。もっと裏やら思惑やらがあるのやもしれぬが、その辺は知らぬ。

 さすがにもう過ぎたことゆえ、細やかな部分まではわからぬので当時スヴェイを嵌めたというもと仲間たちについての詳細まではわからぬが、国が落とされた名分が名分であるから、関係者は軒並み処刑されているのではないかと情報源(フェイア)が言っておった。


 どうでもよいというのは本心らしいスヴェイは、まるで興味なさそうに「ふーん」で終えておったが。


 ともあれ。思いがけず有能な側近も得られたことだし、そろそろ余、勇者業に戻ってもよいと思うのだが。


 そうこころの中で全力で訴えつつ、今日も今日とて机に齧りつく余なのであった。





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