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曲がり角の向こうに君が居てくれた  作者: 湖灯


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修学旅行⑧

 バスが到着したのは小樽。


 今日は班別自由行動の日で、俺たちはオルゴール製作体験をしてから運河沿いをプラプラと散歩して暇を潰していた。


 なるほど旅番組などで頻繁に紹介されるだけあって、ただの細い川というのとは違って趣がある。


 いま俺の横を通り過ぎようとしている緑色のボート。


 そのボートに乗っている女性など、まるで有名な絵画から抜け出してきたように美しいではないか。


 景色に溶け込むように運河を走る緑色のボート。


 ボートが俺たちを追い越して行く。


 綺麗な絵から抜け出してきたように美しい女性。


 でも、あの娘どこかで見たような……テレビ?


 もしかして欅坂か乃木坂?AKB……。


「秋月穂香!」


 緑色のボートに乗っているのは秋月穂香だった。


 まだ少しだけ冷たさの残る北国の風にほのかにラベンダーの香りが運ばれてきて、そしてその香りは秋月穂香の香りだと感じた。


 ポニーテールに纏められた少し茶色がかった長い髪が薄紫色の風にたなびく。


 そして、ボートはスルスルと俺の横を滑るように追い越していく。


 秋月穂香の横顔が、やがて斜め後ろ向きになり、それから後ろ髪しか見えなくなっていく。


 まるで大きな木の葉が妖精を運んでいるかのような幻想にとらわれて、暫くその光景を立ち止って見ていた。


 俺は、急に彼女がこのままオホーツク海の冷たい海に消えてしまうのではないかと不安になり、遠退いて行くボートを慌てて追いかけた。

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