2 不機嫌な少年と、嵐の少女
ケイオスが、また白い服を買ってきた。
ケイオスが買ってくる服は、女の子くさい物が多い。おしゃれなのは確かだけど。
そうして、ケイオスはまた一つ嘘をつく。
「ヘヴンに似合うと思ったんだ」
──ライトに似合うと思ったくせに。
ヘヴンは一人街を歩く。
「オレは、ケイオスが好きだよ。ライトの代わりでも」
いつまで経っても過去から抜け出せない、傷だらけのケイオスだから、好きなんだ。
理屈はいらない。
誰に何を言われようが気にしない。オレはオレだ。ケイオスといるのが楽しいんだ。
オレにキスしてくれたのは、ケイオスだけ……
「きゃあああ~! 助けて助けて助けて~‼︎」
甲高い声に振り返ると、十歳くらいのローブのような薄黄色のワンピースを着た少女が走ってくる。なぜか、カラスや犬の大群に追われている。
白い石畳の公園には、緑が溢れ、陽光が優しく、憩う人々に降り注いでいる。
場違いだった。突然バズーカ持って現れて、マシンガントークかましながら図書館ジャックしてしまいそうなくらい、場違いに彼女はテンション高かった。
……まあ、それはちょっといいすぎか。とにかく彼女はやかましかった。そこらの人間の元気を捨い取って生きているのかもしれないくらいハイに、公園を駆け回っている。
当然、ヘヴンは無視した。
助けてくれといわれて即刻助けてやるのは、物語の中のヒーローくらいだろう。
それも、ず~~っと昔の昔の化石ヒーローだ。今時そんなのハヤらない。
今日の買い物と調理は自分の当番だ。
はて、何を買おうか。やっぱりケイオスの好きなクリームシチューか。いや、カレーもいいかもしれない。それとも、たまには……
ケイオスの顔を思い浮かべながら、微安な店への近道の公園を歩いてゆく。
「や~んっ、来ないでったらぁ」
騒がしい声が近づいてくる。ヘヴンは足早に公園を離脱しようとした。
「いやぁぁぁんっっ‼︎」
「──ウルセェ!」
突然ヘヴンはキレた。なんとなく今日は虫の居所がよろしくなかった。幸いケイオスは見ていない。つーかこの場にいない。
ここぞとばかりに、ヘヴンは大どもめがけてフライングキックや回転アタックをかまし、逃げ送れたカラスどもにアッパーを食らわせ、呆然と見ていた薄黄色い服の少女にコブラツイストを──食らわせようとして、寸前で自制した。
さすがに人間相手にはまずいかもしれない。
「きゃ、あ、ありがとうございます」
少女は目を白黒させ、そこらで、ノビているカラスや犬を見回した。
「でも、な、なんかかわいそう~……」
「おまえが助けろゆーたんやんけ」
少女のせいにして、ヘヴンは晴れ晴れとした顔で公園の出口に向かった。




