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WHITE LIE  作者: うさぎさん⭐︎
エピソード1 過去視(トラウマ)のダーク

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6 白い服の人形

 彼は優しく微笑んで、メモリアの両頼をその手で包んだ。

「さあ、言え、メモリア。『私が死んでも、あなたを生かしたい』──と……。

 メモリア。

 ……《《ケイオス》》」

 メモリアは──いや、ケイオスは目を見開く。

 気づくと、そこは草原。

 メモリアが、封印塚のそばで微笑んでいる。その足元に、ヘヴンが倒れていた。

「ヘヴン⁈ 貴様、ヘヴンに何を⁉︎」

「貴様を呼び戻すと聞かないのでな、まだ腹に霊光を食らわせて気絶させただけだ」

 ヘヴンは逆十字のピアスを握り締めたまま動かない。

「おもしろいな、貴様。この少年の危機を感知して戻ってきたわけか」

 最後の『ケイオス』という声は、ヘヴンのものだった。

「……おまえ、メモリアじゃないな」

 ケイオスはヘヴンを気にしながら、メモリアを睨む。

「ご名答。俺はリィアル」

「……リイアルは封印されたはず」

「そう。俺はバカな風習により殺された。

 だけど、俺の妹のメモリアが、俺の封印を解いてくれた。──中途半端にね」

「……」

「霊体として目覚めた俺は、メモリアがただ一言、体を明け渡してくれるといえば──完全に解放されるはずだった。

 だけど、あのバカ、言わなかったんだ。『お兄さんと一緒じやなきゃ嫌』ときたもんだ。さけんな、善人面しやがって、アイツは俺を解放したかったわけじゃない、俺を利用したかっただけだ」

 リィアルは村を滅ぼし、だけど、生き残ったメモリアにより、再び封印された。……中途半端に。

 リイアルは霊体として、この世にとどまった。

「もう、二百年の前の物語さ」

「二百年間も、何をしていた」

「……捜していたんだ。メモリアの替わりを。俺の器になってくれる人間──」

「それが俺か」

「俺にはもうほとんど力はない。メモリアに力を封印されちまったからな。

 やっとおまえを見つけたときは、世界が天国に思えたね。俺を見れて俺の体になれる──そんな相性のいい奴、なかなかいないんだぜ?」

「それで俺のことを調べた」

「あぁ、おまえはおもしろい奴だ。過去視──人と一体化した過去の幻を見られるんだからな。

 あのままメモリアになったまま、自分が死んでも俺を生かしたいといっていれば」

「俺の体が手に入った」

「そうだ。体の所持者が強くそう想わないことには、俺は体を手に入れられないからな」

「それは残念だったな」

「いやいや、まだまだだよ」

 メモリアは髪を払った。その体がひととき眩しく光り、少女から青年の姿へ変わった。

「実は君だけじゃないんだなぁ、俺はラッキーだぜ? この、ちまっこい小僧でも、器になってくれるときたもんだ」

「ヘヴンになんかしてみろ──殺すぞ」

「はて、どうやってこの俺を殺すつもりだい? それとも、再び封印でもするつもりかい? 無理だね。メモリアが──俺の封印を解いた双子の片割れかいなければ、この状態の俺を封印することは不可能さ。

 メモリアは、二百年も前に俺に半端な打印をするとほぼ同時に──俺が殺してやった。メモリアも村の奴らもあっけなく昇天しちまった。霊体になれてこの世にとどまっていられるのは俺だけさ。

 いや、正確には俺は幽霊とは違う、特殊なマイナスエネルギーの塊だ。よくいわれる霊なんて、この世には存在しない」

「……大して変わらない気もするが」

「だから、簡単に幽霊やなんかになれやしないんだよ! 

 俺は特別だ。だから、おまえのデータだって、ライ・サウンドから調べることができた」

「…………ライ・サウンド?」

「誰も鳴らしていないのに聞こえてくるサウンド。その中からおまえや小僧に関するファイルやフォルダを検索した」

「意味がわからん」

「俺にも理解できないサウンドや、開かないフォルダなんかもも結構あったけどな」

「理解不能だな」

「俺はな、嘘が大嫌いだ。徳善者どもが大嫌いだ。優しい顔した悪魔は、みんなみんな殺してやりたくなる」

 リィアルはヘヴンを見下ろす。

「おまえだって、思ったはずだ。助けてやった弟に信じてもらえず、ナイフを向けられ──思ったんだ。《《死んでしまえ》》」

 ヘヴンは瞳を開かない。

「この少年だって、思ったんだ。何度も何度も。おまえがいなければ、親は死ななかった。おれはもっと普通の暮らしができた」

 リィアルは片頬だけで嗤う。

「おまえは、それで満足か? 弟の代わりの人形を抱いて、そんなんで満足かよ?」

「ヘヴンは人形じゃない」

「人形だろ? ダーク。おまえの大好きな大好きなライトの代わりだ」

「違う!」

「ならばなぜ、おまえは──この人形に、白い服ばかりを買い与える?」

「…………」

「ライトは白い服が好きだった。そうだろう、ダーク?」

「…………」

「認めろよ。コイツは、ヘヴンじゃない。《《ライトだ》》」

「…………、ヘヴンだ」

「嘘つき」

「…………う”っっ」

 ケイオスは突然胸を押さえて膝をつく。


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