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WHITE LIE  作者: うさぎさん⭐︎
エピソード1 過去視(トラウマ)のダーク

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5/15

5 産み落とされた双子

「……今、なんていったの? 母さん……」

 水色の髪を揺らして、少女が笑う。

「兄さん──私には、お兄さんがいるの?」


「……ここか」

 背負っていたリュックサックを下ろし、ケイオスは溜め息をつく。

 ここまで来るのに二週間もかかってしまった。結構な長旅だった。

 辺り一面、草野原その中に立つ、一つの塚。

「ここです。ここに、兄が……。リィアル兄さんが、封印されているんです」

 ヘヴンは油断なくメモリアを睨んでいる。

「ここには、私たちの住む村があった。だけど──今はもう何もないわ。

 私が、兄さんの封印を……解いたから。中途半端に覚醒した兄さんは、村を滅ぼし、そして、再び封印された。

 だけど、それは……私が間違った方法を取ってしまったからなの。あるはずなの、兄さんを完全に復活させ──、兄が人として生きることのできるすべが。

 お願いします、兄を、兄の封印を点々完全に解いて、兄を解放してください」

 ケイオスは無言で塚に歩み寄ると、手をかざし──

 その手が掴まれる。

「ケイオス」

 今にも泣きそうな瞳をしたヘヴンが、ケイオスの手を握りしめる。

「……次は、左目じゃ済まないかもしれないよ?」

 ケイオスは頷く。ヘヴンの手を優しくほどき、再び塚に手を翳す。

 そこで、ふと彼は手を引くと、左耳の逆十字のピアスを外し、ヘヴンに手渡す。

「持ってろ、お守りだ」

 塚に手を翳す。

「すぐに、戻る」


 目を開く。

 目の前に姿見。

 水色の髪、水色の瞳。薄水色の服。

 ケイオスはメモリアになっていた。

 メモリアは髪を梳かし直し、階下に向かう。

 ずっと、思っていた。兄弟とは、どんなものなんだろう。一人っ子の自分にはよくわからない。ずっと、憧れていた。もし、自分に兄弟がいたら……どんな感じなんだろう。

「……母さん?」

 母の悲鳴が聞こえた。父の悲鳴も。

「父さん……⁈」

 リビングに、悪魔がいた。

 父と母は血を流して倒れている。悪魔は自分に気づくと嗤い、窓から消えていった。

 悪魔……違う、たぶん、強盗か何か。あれは人間。心のどこかではわかっているのに、心のこちら側では理解できていない。

「メ、メモリア……」

「母さん?」

 メモリアは母親のそばに膝をつく。

「メモリア……リィアルだ、リィアルが復讐に来たんだ……」

「リィアル? 何を言っているの? 母さん」

 どうして、父さんも母さんも、真っ赤な服を着ているの? 二人とも、赤い服なんて、めったに着ないのに……

 違う、それは服じゃない。あれは血だ。

「おまえには……兄がいるんだ……」

「え?」

 おかしいの。二人とも、こんな所で寝ちゃって。風邪ひいちゃうよ?

「……今、なんていったの? 母さん……。

 兄さん──私には、お兄さんがいるの?」


 メモリアは母の部屋で日記帳を探す。

 おにいさん。おにいさん。リィアルおにいさん。ママとパパはもうねむっちゃったから、ママのにつきちょうをよませてもらおう。

『私は悪魔の子を産んでしまった。産まれてきた子供は、災いを呼ぶとされる双子。私は兄のほうだけを殺し、封印塚に埋めた。だって、私はとてもとても女の子が欲しかったのだ。

 産婆や何やらは金で言いくるめた。夫にもばれていない。封印塚は、昔から双子を埋めてきた墓だ。私は、産婆に夜中にこっそり、リィアルを埋めさせた。そう──名前だけはつけてあげた。リィアル、ごめんね。でもね、双子なんかに産まれてきたあなたがいけないのよ?』

 むずかしくって、よくわかんないよ。どうすれば、おにいさんとあそべるの?

『封印塚には伝説がある。双子の片割れのみが埋められていた場合、もう片方が祈りを棒げれば、埋められていた者の封印が解け、その者は生者となれる。だが、祈りを捧げた片割れは──』

 う、うーんと。つまり、メモリアがいのれば、リィアルおにいさんはおきるってこと?

 日記帳を閉じ、メモリアは笑う。


 封印塚は、村のはずれにあった。

 やった。ここだ。これで、おにいさんとあそべる。なにしよう?

 なにしてあそぼう?

 おにいさん。おにいさん。どうしてずっとそばにいてくれなかったの? おにいさんがずっとおうちにいてくれたら、メモリアすごいうれしい。おにいさんは、どんなふうに──

 兄がもし、最初からあの家で普通に暮らしていたら……彼はどんなことをしただろう。

 どんな男の子に育っただろう。

「リィアル兄さん。お願い、目覚めて!」

 もう、メモリアには、お兄さんしかいないの……


 封印塚が白く光って、メモリアの目の前に、メモリアにそっくりな青年が現れる。

「……お兄さん?」


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